緑の伝言プロジェクト「被爆樹木めぐり」その3
最終目的地の広島城跡です。
広島城跡では、大菊花展が10月23日から開催されていましたが、7日は最終日でした。
左手テントの後ろに大きく育った被爆ユーカリの木が、映っています。
このユーカリの木は、被爆直後の写真が残っています。
この写真では、ユーカリは真っすぐ伸びています。写真の撮影者は佐々木雄一郎さんで、撮影時期は1945年末頃となっていますが、すでに葉をつけています。堀口さんによれば「ユーカリの原産地オーストラリアは山火事が多いのですが、ユーカリは火災に強い性質を持ち、葉が焼けてなくなっても、すぐに芽を出す木」だということですので、わずか4か月後に葉をつけていることが納得ができました。
現在は、くねくねと曲がったおり、とても同じ木とは思えませんが、1971年に台風で根本から2.5mのところで幹が折れるまでは、真っすぐに伸びていたようです。台風で折れた時には、「もうだめだ」と思われていましたが、しばらくすると北側の根元からひこばえが出てき、育ちました。その後も何度か台風で幹がおれたようですが、ひこばえからの新しい芽が育ち、今の大きさになっています。その後、元気に枝に支えを付けて保護されていますが、掘り側に延びた枝は、支えをすることができず、堀口さんの指導で、木全体を保護するため枝が切り落とされました。
ユーカリの木は、本来真っすぐに伸びる木で、国によっては、建材として使われていますが、被爆したこのユーカリは、曲がりくねっています。それは、放射能の影響と考えられます。
次は、すぐ近くのマルバヤナギです。
この木には、堀口さんの養生によって、今に元気な姿をとどめています。説明に使われている写真は、養生前のマルバヤナギですが、その時一番に危惧されたのは、幹の中心に空洞ができ、左側に大きく伸びた枝の重みによって幹が、裂けることでした。
幹が裂けないようにするため、現在は、幹を棕櫚縄で何重にも巻いて、これ以上裂けめが広がらないようにしてあります。
空洞となった幹の部分には、腐ることを防ぐためピートモスが入れられています。「こうすることで、幹から芽吹き沢山の枝が出ることで、木の命を続けることができます」と堀口さんは願いを込めて話されました。
この木の治療を始めるときもうひとつ危惧されたのは、根元周りが石などで固まっていたことです。作業中の写真です。
この対策は、根元周りの土を掘り起こし、周囲にあった石をすべて撤去することで、根が伸びやすいように土を改良されました。こうした樹木医堀口さんの丁寧な養生があって、現在元気に葉を繁らせています。
最後は、広島城本丸跡にある大本営跡周辺の被爆クロガネモチです。ここには、3本の被爆クロガネモチの木があります。その内の2本は、旧大本営の車寄せの前庭築山にあります。
クロガネモチは、オスの木とメスの木があります。どの木も赤い実をつけると思っていましたが、実をつけるのはメスの木だけだそうですから、この2本には、実がびっしりとついていますので、メスの木ということになります。
この木の幹をよく見ると、被爆樹木のいくつか特徴的なことを見ることができます。
一つは、赤丸で囲ったところ、やや白く見えるこぶがあります。写真では見にくいのですが、他にもいくつかこぶができています。
もう一つは、これも見にくいかもしれませんが、木肌が荒れていることです。この木には、被爆樹木にしかない特徴がはっきりと表れています。
もう1本は、大本営跡の東側にあります。
この木は、しっかりと枝がはっています。堀口さんによれば、「この木は、被爆直後の写真などから判断すると樹齢120年から130年ぐらい」ということです。
堀口さんが、説明に使われた写真は、被爆数年後に写されたものと思われますが、そこには、枝が切り落とされたと思われる跡が、はっきりと写っています。
今もこの跡が残っています。
プレートの左右が出っ張っているのがわかると思います。これからも、同じ木だということがわかります。この木には、もう一つ特徴があります。それは根の張り方です。爆心地側の根の張り方は少なく、反対側は、根が多く出て土も盛り上がっています。原因は、はっきりしていません。
広島城の本丸跡には、クロガネモチ以外にもケヤキの木など被爆樹木だと思われ木が何本かあるようですが、被爆したことを確認することができる資料がないため被爆樹木としては認定されていません。
この木が、今回巡る最後の被爆樹木でしたが、ここで堀口さんからは、まとめ的な話がありましたが、そのことは次回に紹介します。
いのちとうとし
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