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2021年11月11日 (木)

天皇の憲法遵守義務 ――『数学書として憲法を読む』に沿っての講演・その3――

天皇の憲法遵守義務

――『数学書として憲法を読む』に沿っての講演・その3――

  前回は、憲法99条の「義務」が、文字通り法的義務以外の何物でもあり得ないし、あってはならない点を確認しました。

  今回は、その義務を明示的に負わされている天皇と憲法遵守義務との関係をもう少し詳しく見て行きましょう。最重要なのは、天皇の「憲法遵守義務」は、内閣・国会・裁判所等の公務員の「憲法遵種義務」とは独立した形での「義務」であるという点です。その根拠は、①内閣・国会・裁判所の正当性の根拠は「相対的多数」にあるのに対して、②天皇の地位の根拠は絶対性を持つ「国民の総意」であり、③「絶対的多数」が「相対的多数」の判断に縛られる必要はない、という三段論法にあります。

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  これを、99条の三つの系として表しておきましょう。

1  内閣が憲法違反を犯すとき、天皇はその内閣の助言に従わなくても良い。またその判断は内閣の承認を必要としない。

2  内閣、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員が、重大な憲法違反を犯しているとき、3条あるいは7条の規定があっても、天皇または摂政は、内閣の意に反して、憲法を尊重し擁護する義務を負う。

3  内閣、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員が、重大な憲法違反を犯していないときであっても、天皇または摂政が、内閣の助言と承認とは独立して憲法を遵守することは妨げられない。

  ここでは分り易く「内閣が憲法違反を犯すとき」あるいは「内閣、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員が、重大な憲法違反を犯しているとき」と記述していますが、これはあくまでも「国民の総意」が判断するという前提があります。現実の存在としての天皇が判断する立場にはないからです。

  つまり、天皇は「国民の総意」によってその地位を与えられているのですが、それは、「天皇」 = 「国民の総意」だという意味ではないのですから。事実、現実の憲法では、天皇は国政に関しての権能を持ちません (第4条)。より具体的には、天皇が「内閣、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員が、重大な憲法違反を犯している」という判断を行う「権能」は与えられていないのです。

  その「権能」がないのですから、この三つの系の内、現実の世界で効力のあるのは、系3だけだという結論になります。つまり、内閣・国会・裁判所という三権のどこかあるいは全てが憲法を遵守していても遵守していなくても、そのこととは独立して天皇そして摂政は憲法を遵守しなくてはならないのです。

  前述したように、仮に三権が違憲行為をしたとして、その事実認定を天皇が自ら行うという権限は与えられていません。仮にその認定が何らかの手段で行われたとしても、違反に対抗する形での「遵守」の具体的な内容の決定の方法が憲法上には規定されていないことから、実はこの系3が重要になります。その点を説明しましょう。

  仮に国会や内閣、裁判所等の公務員が憲法違反を犯したとしましょう。「憲法違反」であると天皇が認めるに当って、どのような基準で、さらにどのような手続きでその認定を行うのかは憲法内には規定がありません。それ以前の問題として、このような判断を天皇が行えるという「権能」は与えられていないのです。

  仮に、その認定が行えたとして、では「憲法違反」を目の前にして、天皇が何らかの警告を出すのか、不快感を表すのか、「制裁」を下すのか等の可能性を考えた場合、国政についての「権能」はないのですから、「制裁」はできませんし、「警告」も難しいでしょう。せめて「不快感」くらいですが、ではそれはどう表したら良いのでしょうか。もうそこで壁に突き当ってしまいます。

  これらの問題を解決できる唯一の存在は「国民の総意」なのですが、それは憲法内では実体があっても現実の社会の中の存在ではありません。

  しかし幸いなことに、「国民の総意」を文書として明確に表現しており、さらに憲法の遵守についてもきちんとした方針を示しているものがあります。憲法自体が正にそれなのです。従って、天皇が憲法そのものを読むだけではなく、憲法の理想を確認しその「ありのまま」の姿を描写し、憲法を遵守することの意味を表現することは許されていると考えられます。

  これこそ、この章でいくつかの疑問として提示してきた具体的な行動レベルについての未解決な手順についての解決策なのです。

  まず大切なのは、これは、内閣、その他の公務員が憲法違反を犯していても犯していなくてもできるということです。憲法遵守という目的から考えると、日常的なレベルでの「教育的」な意味の大きさも大切です。系2と系3に大きな意味があるのは、内閣等の行為が違憲であるかどうかの判断はしなくても、天皇が憲法遵守義務を履行できることを保障している点なのです。

  今回も長くなってしまいました。次回に続きます。

 [21/11/11 イライザ]

 

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