エネルギー基本計画が閣議決定された
10月22日、第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました。今月末から英国グラスゴーで開催される、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)までには決定するとされていました。
まずこのエネルギー基本計画を議論した、経済産業省総合資源エネルギー調査会基本政策分科会について話さなければなりません。24名の委員で構成されていましたが、原発に批判的な人は2名?だけでした。各委員は数分の制限時間内に自らの主張を言うだけの意見表明の場で、議論を交わすこともなく、結論は事務局の経済産業省の官僚が原案を作成し、最終的には会長に修正を一任するという形でまとめられました。これが議論といえるのでしょうかね。「今さら」というように受け止められるかも知れませんが、まさに原発推進の大合唱という感じでした。
全文128ページというもので、まだ全文はじっくりとは読んではいませんが、ざっと目を通した直感のような思いは、新聞の見出しにもなっていますが「玉虫色」でした。僕なりに追加すると「優柔不断」、「責任回避」、「岸田文雄的」という感じです。そしてこの度も原発増設の意図がミエミエという内容ですが、強引にそれを打ち出せないという印象で、その大きな理由は「原発は要らない」という私たちの声だと思います。
エネルギー基本計画は2030年の計画だということを、基礎的な知識として捉えた上で皆さんに読んでいただきたいと思います。
温室効果ガスを減らすために、再生可能エネルギーの割合を発電量全体の「36~38%」に引き上げたこと、前回のエネルギー基本計画では22~24%でしたから新聞は「再エネ倍増」と書いています。しかしすでに現時点で水力発電を含めて再エネ比率は約20%ですから、36~38は決して驚くような数字ではありませんし、むしろ少ない数字です。再エネを増やすことを拒んでいる政策がこの国の姿勢だと思います。
昨年10月、菅義偉首相は所信表明で「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。すなわち2050年カーボンニュートラル脱炭素社会の実現を目指す」と表明しました。
50年カーボンニュートラルの目標を立てるのなら、30年の再エネ比率はせめて46%に、さらに50%を目指すことを求めるべきであると思っていました。だから36~38は少な過ぎるのです。石炭火力についても、現状の32%からたったの6%引いただけの26%、これではCOP26会議での世界からの疑問の声が出されるでしょう。
世界の平均気温上昇を抑えるには、温室効果ガスを13年比で30年に60%減、50年に100%減にするという世界的な約束を目指して、50年のエネルギーの枠組みを考え、そのために30年はどうするかということを決めることです。「二酸化炭素を出さない原発を」という主張は論外で、世界からの笑いものにされるだけです。
さて原発問題、この度も「可能な限り原発依存度を低減する」と書いています。しかし新増設については何もありません。一方で基本的な立ち位置として、原発比率を20~22%とするという表現を残し、「ベースロード電源」としたことは、市民の声を聞こうとしない態度であり、現状が6%という中で、実現が不可能な数値を言い続けるのは、まさにペテンです。そして福島原発事故の教訓から、「40年運転ルール」にしたのですが、これも実質的な骨抜きとなった感じです。
国際連携を活用して高速炉開発の着実な推進、小型モジュール原発、核融合の研究開発に取り組むとしていることも、まさに危険な動きといえます。
今回のエネルギー基本計画議論で良かったことをあえて言うなら、パブリックコメント(意見公募)が約6,400件あったということです。前回の2018年は1,700件でしたから、3.7倍増加したこと。その中身は明らかにされていませんし、もちろん原発推進の意見もあることでしょうが、関心の大きさを示していると思います。
※以下のページに掲載されています。
https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005.html
木原省治
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