10月31日には最高裁裁判官の国民審査もあります ――信じられないくらい不公平な投票方法です――
10月31日には最高裁裁判官の国民審査もあります
――信じられないくらい不公平な投票方法です――
異例ずくめの総選挙は1月31日に行われることになりましたが、同時に最高裁判所の裁判官の国民審査も行われます。憲法の79条の規定によるものですが、前回、2017年の国民審査については、2017年10月19日の「ヒロシマの心を世界に」で取り上げました。こちらも是非御覧下さい。
日本国最高裁判所裁判官国民審査 投票用紙 記入例(×だけを書くことができる。○などを書くとすべて無効票になる
(Hisi21, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons)
4年前、正確には2017年10月22日の国民審査の対象になったのは、小池裕、戸倉三郎、山口厚、菅野博之、大谷直人、木沢克之、林景一の7氏でしたが、林氏は憲法の規定「任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際」に該当し、その他の6名は、「その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際」に該当していました。
今回の国民審査では、11名が対象になります。深山卓也、三浦守、草野耕一、宇賀克也、林道晴、岡村和美、長嶺安政、安浪亮介、渡邉恵理子、岡正晶、堺徹の皆さんですが、全員、「任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際」に該当します。
これからが、今回の問題提起になりますが、まず、今回対象になる11人の裁判官が誰なのかを調べるのに手間が掛かりました。グーグルの検索ですぐ出てはこないのです。ウイキペディアでもようやく数行の記事があり、そのなかでこの11人が対象になることを「断定」はしていないのです。
前回、4年前には、私は選挙の候補者だったのですが、それでもネットの情報を参照しつつ、国民審査についての問題提起ができました。江川紹子さんはじめ、問題意識を共有していた人たちのサイトが沢山あって、元気が出ました。特に江川さんの解説と問題提起はとても役に立ちました。今回もまずそのサイトを御覧頂きたいと思います。投票日すぐ前の10月17日付のYahoo!ニュースJapanに載っています。中でも感心したのが、対象となっている裁判官一人ひとりについてのそれまでの仕事振りを短くしかも分り易く解説してくれていたことです。その他にも、結論は少し違っていましたが、対象となる裁判官たちの評価をするサイトが複数ありましたので、比較しながらの「俄か勉強」も可能でした。
今回は、これからこのような情報が出てくるのかもしれませんが、対象となる裁判官についての情報さえ探すのが難しいくらいですから、個々の裁判官についての評価を公表しているサイトは、10月15日時点では見付けられませんでした。それ以上に問題なのは、最高裁判所のホームページにも、「国民審査」についての説明や対象となる裁判官のリストも掲載されていないことです。この点については、江川さんも4年前に問題提起をしていますので、その点も注目して下さい。
でも、それが背景にあったとしても、今回、Webから国民審査についての積極的発言が消えてしまったのは何故かという答にはなりません。そのヒントは、江川さんが、前回の国民審査の「結果」について分り易く分析してくれている10月24日の記事にありました。
前回対象となった7名の内、誰が一番罰点を多く貰ったのか、そして誰が一番少なかったのかを見ることで、国民の意思を大雑把であっても推測できるのではないかという問題提起をしているからです。そして「罷免すべき」という意思表示をした人の率、つまり「✖」を付けた人の率が一番少なかったのは、林景一さんだったのです。
その理由として江川さんは次のように述べています。
「彼は、審査対象の裁判官の中で唯1人、昨年の参院選「一票の格差」を合憲とすることに疑問を呈し、「投票価値の平等…の追求は、民主主義の国際標準であり、国際的潮流である」とする意見を書いている。これをプラスに評価して、他の裁判官には×をつけたが、林裁判官には意識的に×をつけなかった(=信任した)という人たちが、一定数いたと考えるのが自然だろう。彼は今年4月に任命されたばかりで判断材料は少なく、ほかには林裁判官のみを「信任」する材料が見当たらない。」
以下は私の推測ですが、この結果に、「国民審査」の価値をほとんど認めてこなかった安倍政権も最高裁判所も危機感を持ったのではないでしょうか。森・加計・桜という腐敗を隠ぺい、改竄・証拠の隠滅、マスコミ操作、警察への介入等々の手段で、闇に葬ってきた権力が、「国民審査」をそれまでと同じように、「国民のほとんどは関心を持たない」状態に保っておくことには大きな意味があるではありません。そうすれば、善意に解釈すると、圧倒的多数の国民は、投票所でも「✖」を画くだけの知識がないままに「空白」にし続けることになります。それが圧倒的多数の国民からの「信任」だと「捏造的」に解釈されてきた状態を保つことで、「形式的」には憲法を守ることにもなっているのですから。
江川さんは、そんな圧力には屈しないでしょうから、これから彼女の解説記事がどこかに載るのかもしれません。しかし、彼女も多忙ですし、それ以上に個人の善意や献身だけに依存していたのでは民主主義を守ることなど不可能です。少なくとも最高裁判所が、国民審査の対象となる裁判官の仕事振りについて分り易いリストを作るくらいの努力をするのは国民への義務だと考えよと、私たち主権者が声を挙げて行きましょう。
[21/10/16 イライザ]
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