被爆教師石田明さんが被爆時に乗っていた電車-古本まつり巡りから
紙屋町シャレオ中央広場で、第24回目となる「古本まつり」が、開催されています。今年2回目の開催で、県内外から9店舗が参加し、最終日は31日です。
初日の25日、会場に行って見ました。初日だったのでしょうか、私の予想以上に多くの人が、並べられた平台、棚で本を探していました。
会場には、小説、文庫本、美術展覧会のカタログなど多様な書籍が出品されていますが、私の目当ては、郷土史、特に原爆関係の古い本ですので、それらが並ぶ棚を探します。2か所の棚にわかれています。一カ所は私が日ごろからよく行くアカディミー書店の棚ですので、とりあえずそこをパスしてもう一カ所の棚に急ぎました。
一冊一冊丁寧にみていきました。欲しいなと思う本もいくつかありましたが、結局購入したのは「原爆被爆前後 広島市内電車運転の推移」の1冊だけでした。
この本を購入したのは、本の最初の方に「絵葉書に見る広島の市内電車」というタイトルで、戦前の電車が走る町の絵ハガキ6枚が掲載されていたからです。その最初の1枚には「本線の軌道が左官町~堺町~土橋を通っていたころの境町一丁目付近を進行する電車」の説明文がついています。この絵ハガキは、9月2日のブログ「明教寺(中区猫屋町)訪問記: 新・ヒロシマの心を世界に (cocolog-nifty.com)」で紹介した明教寺前を通っていた当時の電車道を写したもので、以前から探していた写真です。
「原爆被爆前後 広島市内電車運転の推移」より
ですので、すぐ購入することにしました。
この写真が目的で購入を決めた本でしたが、帰宅してページを繰ってみると貴重な資料が見つかりました。それは、1945年8月6日、原爆が投下された時の電車の運行状況が路線地図上で示されているからです。
この地図が気になったのは、八丁堀付近の電車の中で被爆された広島県原水禁代表委員だった石田明さんのことがすぐ頭に浮かんだからです。
被爆教師石田明さんの著書「ヒロシマの母の遺産」には、被爆当時のことが次のように記載されています。
「母のつくってくれたにぎりめしを持って、兄と私は七時前、狩留家駅を出発しました。七時四〇分ごろ広島駅につきました。そして己斐行きの市内電車に乗りました。真夏の太陽の高い日でした。満員電車で、そのまんなかに兄とわたしは入り、すしづめの中で身動きもできず、電車が揺れるにまかせていました。女子運転手の運転する電車です。的場町、稲荷町、山口町、流川、そして八丁堀。左手に“将軍”姿の仁丹の広告塔を、乗客の肩越しに見ました。八丁堀の停留所に停車する寸前、“ピカッ!”青い閃光が光りました。一瞬意識を失いました。」(原文のまま)
この石田さんの記述に当てはまる電車は、己斐方面(西)に向かい八丁堀付近で被爆した車両です。一両あります。400形式の車番421号の電車です。
「原爆被爆前後 広島市内電車運転の推移」より
さらに同誌には、8月6日に被爆した電車の被害状況一覧もありますが、421号は、八丁堀で全焼したことが書かれています。八丁堀付近の己斐方面行きは、この一両しか走っていなかったようですから、石田明さんが乗車していた車両この421号だったことが分かりました。こんなことが分かるとは思ってもいませんでした。
400型の電車は、当時30両中、29両が被爆し、5両が全焼、8両が大破、無被災は1両だけでした。
「原爆被爆前後 広島市内電車運転の推移」より
石田さんの被爆体験が、また少し身近になった気がします。それにしても、被爆当日の電車の運行状況をここまで解明された著者長船友則さんの努力には頭が下がります。
爆心地から約750メートルの近距離で電車の車中で被爆した石田明さんは、坪井直さんと同じように、お母さんの献身的な看護により、九死に一生を得、生涯を反核運動に捧げられました。
石田明さんが国を訴えた石田原爆訴訟は、昨年10月27日「石田原爆訴訟の「最終準備書面」を読む: 新・ヒロシマの心を世界に (cocolog-nifty.com)」28日「「ヒロシマ」を訴えた石田原爆訴訟: 新・ヒロシマの心を世界に (cocolog-nifty.com)」のブログで紹介しています。
それにしても、坪井直さんが亡くなられたことを知らされたその日に、石田明さんのことを調べていたことに何が不思議なものを感じます。
「古本まつり」では、もう一冊気になる本がありましたが、その本の紹介は、別の機会にします。
いのちとうとし
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