市民の声を無視して、サッカースタジアム建設予定地地下遺構切取り作業を開始―被爆石も一般ごみとして処分します。
サッカースタジアム建設予定地発掘調査によって明らかとなった旧軍輜重隊跡の遺構の一部切り取り作業は、雨のため一日延期となりましたが、先週土曜日(4日)の午前9時から始まりました。
事前のマスコミへの連絡では、「取材間は、午前9時30分から」となっていましたので、その時間に現地を訪れると、すでに作業は開始されていました。
今回の発掘調査で明らかとなった「旧軍輜重隊跡の遺構」については、大変貴重なものだとして、保存を求める声が上がりました。私たち県原水禁も、何度かこのブログで紹介しましたが、「現地見学会」の実施をはじめ、「専門家の意見を聴いて評価し、保存を含めた検討をすべきだ」などの要望を広島市に行ってきました。
その経過の中で、当初「実施しない」と言い続けていた現地見学会の開催、全て取り壊すとしてきた遺構の「一部切り取り保存」など、一部ではありますが、前進させることはできました。
しかし、私たちが一番強調した「内部だけでなく外部の専門家の意見を聴いて、この遺構をきちんと評価し、保存方法を検討すべきだ」という要望は、結局受け入れられることはありませんでした。
それどころか、日本考古学会の「当該地点における、近代の軍事施設に対する前例のない規模での発掘調査により、溝や通路によって整然と区画された敷地に厩舎や兵舎、浴場に関わる建物が配置された、陸軍中国軍管区輜重兵補充隊関連施設の状況が明らかとなりました。軍事関連施設については不明な点が多いなか、今回の発掘調査成果は貴重な歴史資料となるものです。」とし「平和都市広島市として、陸軍中国軍管区輜重兵補充隊関連遺跡の重要性と価値を十分に検討し、事業計画の見直し・現地保存を含めた遺跡の保護策を講じること。」とする要望も、充分に検討することなく「一部切り取り保存」のための作業を開始しました。
さらに、広島市文化財審議会のただ一人の考古学専門分野選出の野島永(ひさし)委員の「この遺構は、国史跡級のもの」だという意見も全く無視されました。
私が、繰り返し要望したことは「専門家の意見を聴き、きちんと市民に説明できるようにすべきだ」ということでしたので、拙速な「遺構の一部切取り作業開始」は、どうしても納得できません。
4日の現地見学では、さらにびっくりする広島市の方針を知ることになりました。この日は、マスコミ取材があるということで現場には、広島市の担当部長の姿がありました。気になっていましたので「切り取り保存される以外の被爆石などは、貴重なものだと思いますが、どうされるのですか?」と聞きました。質問が理解できなかったのか、首をかしげながら「一般ごみと同じように、廃棄処分します。」ちょっとびっくりする答です。
「ちょっと待ってください。それはないですよね。」と強く言いましたが、答えが変わることはありませんでした。
この遺構は、軍事施設の遺構であるとともに被爆遺構でもあります。広島市にとって、被爆石は貴重なもののはずです。その他にも被爆したと思われる鉄カブトなども出土していますから、あわせてどう保存、活用するのかを考えるのは、広島市の役割のはずです。
担当部長の話を聞く限り、「取り除いた被爆石などをどうするのか」について、十分に検討されたとは思われません。
サッカースタジアム周辺の敷石の一部として使う、学校教育の現場で活用するなどなど活用する道はいくらでもあります。
発掘調査を急ぐあまり、十分に検討することもなく「被爆石も一般ごみと一緒に廃棄する」では、「遺構の保存」を求めた市民の理解を得ることはできません。再考を強く求めたいと思います。
いのちとうとし
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