広島市、被爆遺構の現地説明会を実施へ―戦跡も貴重な文化財
サッカースタジアム予定地での埋蔵文化財調査で発掘された旧軍隊の遺構、被爆遺構については、このブログでも6月18日、19日そして27日と3回にわたって紹介してきました。
27日の24日の行動―座込みと緊急要望書の提出: 新・ヒロシマの心を世界に (cocolog-nifty.com)で紹介した広島市への緊急要望について、昨日「現地説明会を24日の午前中に2回に分けて実施します」と電話回答がありました。
27日のブログを見ていただければわかりますが、24日の広島県原水禁の緊急要望は、「1、市民への現地説明会を早急に実施すること。2、発掘された旧陸軍施設の被爆遺構について、早急に専門家の検討会を実施すること。その結論によって、保存を含めた継承方法を検討すること。3、その評価が確定するまで、現状を保存すること。」の3項目でした。
広島市への申し入れでは、主に1の市民への現地説明会の開催について強く要望してきましたので、実施が確定したことを喜びたいと思います。
広島市への申し入れの際、もう一つ強調したのは2の「専門家による検討」です。
私たちが、専門家による検討を求めるのは大きな理由があります。それは、1996年12月7日に実現した原爆ドーム世界遺産登録への過程の中での体験があるからです。原爆ドームを世界遺産登録させることの大きな壁となっていたのは、昭和26年(1951年)に定められた「文化財史跡指定基準」でした。当時は「概ね100年を経過したものでないと文化財指定はしない」と言われていましたので、被爆から50年に満たない原爆ドームを文化財登録することは、この基準がある限り、ほぼ不可能でした。それは世界遺産登録を実現させるには、ユネスコ世界遺産条約が求める「国内法による保護」が必要だったからです。
詳しい経過は省略しますが、「国内法による保護」という大きな壁を壊したのは、「原爆ドームの世界遺産登録」を求める165万の署名でした。集まった署名の力が政治を動かし、「文化財史跡指定基準」の2項に「戦跡その他政治に関する遺跡」を追加させ、その年1995年5月、原爆ドームが史跡指定され、世界遺産登録への道が開かれたのです。
私が、ここで指摘したいのは、「文化財史跡指定基準」の変更によって、戦争遺跡、原爆遺構も重要な文化財として扱われることになったということです。
ですから、今回の発掘で明らかになった被爆遺構は、「文化財史跡指定基準」の「戦跡」にあたるのですから、きちんとその価値を評価することが、絶対に必要なことなのです。そして貴重なものであれば、文化財として史跡指定しなければならないのです。
しかし、広島市の対応を見ると、発掘業者(奈良文化財研究所の「全国遺跡報告総覧」によれば、この事業団が行った発掘調査のほとんどは、城郭に関わるものや古代遺跡に関わるもので、戦争遺構は見当たりません)の選択一つをとってみても、江戸期の遺構に重点が置かれ「戦跡の評価」がおろそかにされているとしか思えません。
さらに広島市は、6月25日に開催したマスコミへの現地説明会の中で「重要なものは切り取りも含め保存も検討します」と言っていましたが、本当にそうであれば、現状の中で、「どの部分が一番大切か」をきちんと評価する作業が絶対に必要なはずです。だからこそ、専門家による評価を求めているのです。
広島市が、「戦跡」について関心がないと思わされたことは、もう一つあります。6月15日に最初に現地を見た時感じたことです。
仮に、さらに下の城下町時代の遺構の調査に進もうとすれば、被爆遺構の部分を取り除くしかありません。問題は、その時の対応です。当然、後から復元すること考えておれば、石などの遺構を動かす時には、番号を付けるなどして元に戻すことが可能なようにするのは、絶対にやっておかなければならない手順のはずです。しかし、私が、現場で作業をしている二人に訊ねた限りでは、異口同音に人に「広島市からそんな指示はありません」との答えでした。
この経過を見ると、広島市の対応の中には、「軍事遺構」「被爆遺構」も文化財としての価値を評価しなければならないという姿勢は、当初なかったとか思えないのです。昨日の電話では「切り取り保存するにしても検討しなければならないので、作業を一時中断することにしました」と説明がありましたので、ようやく私たちの思いが受け止められて、真剣に検討することになったようです。
広島市には、市民の意見をしっかりと受け止め、悔いが残ることのないような対応が改めて求められています。
いのちとうとし
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