池袋暴走事件 (4) ――「電子制御装置には欠陥がない」への反論もあるのです――
「池袋暴走事件 (4)
――「電子制御装置には欠陥がない」への反論もあるのです――
前回は、池袋事件の真相を論理的に見極めるためには、二つの命題を検証す必要のあることを確認し、その内の一つについては、100%の確実さで正しいとは言えないことを示す事例をネットから引用しました。
まず、二つの命題の復習です。
(A) ブレーキペダルを踏むと、どのような例外もなく必ずブレーキが掛かる。
(B) ブレーキペダルを踏むと、実際にブレーキが利いているか否かにかかわらず、一つの例外もなく、必ずブレーキライトは点灯する。(ブレーキライトの電球が切れていないとして)
前回、報告したとおり、(A)については、ブレーキを踏んでもブレーキが利かなかったという事例がありますので、池袋でもそれと同じことが起ったという可能性は否定できません。つまり、ブレーキを踏んでいても減速しなかったり、逆に加速する可能性があることになります。
ですから、飯塚被告の主張が正しいかどうかは、命題(B)の内、(ブレーキペダルを踏んでいてもブレーキが利かない状態で)、なおブレーキライトは必ず点灯するのか、という一点に絞られます。(ここで改めて、仮定として認めているのは、事故車の後ろから事故を目撃した三人の証言は真実を述べているということです。つまりブレーキライトは点いていなかったと仮定しています。)
「常識」としては、こんなに当たり前のことを検証しなくてはならないのか、という思いが生じるはずです。でも、私たちは日常的に、前の車が減速していてもブレーキライトが点かないケースを見ているはずです。それは、ブレーキライトの電球切れがほとんどだという経験も皆さんお持ちでしょう。この経験を絶対視すれば、「ブレーキは踏んでいなかった」、という結論になります。
でも、もう少し幅を広げて考えてみましょう。車ではなく、家で電気が点かなくなった経験も多くの方はお持ちだと思います。ほとんどの場合、「電球が切れた」からなのですが、停電だったり、スイッチが壊れた経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に昔は、そんなケースもかなりありました。アメリカに住んでいる頃、古い家だったので、スイッチが壊れて電気が点かなくなることもありました。
もっと多いのは、昔ならフューズが飛んだ、今なら分電盤(カタカナでは、ブレーキと同じ語源のブレーカーです)かもしれません。この中にも簡単な電子装置が入っていますが、家にある電灯のスイッチと電気の分電盤が、車で言えば電子制御装置です。単なるスイッチや分電盤とは比べ物にならないくらい複雑ですが、イメージとしてはお分り頂けたのではないかと思います。
家の中で、電球に問題はなくても、スイッチや分電盤が原因で、電気が点かなくなるのと同じように、車でもブレーキライトそのものには問題がなくても、ブレーキライトが点灯しない可能性のあることはお分り頂けたと思います。
となると、問題は車を制御している電子制御装置に問題はなかったのか、ということになります。
それが、このシリーズの第二回で取り上げた、アメリカにおける訴訟の主なテーマだったのですが、ウイキペディアの結論部分を再度引用しておきましょう。ウイキの解説も是非お読み下さい。
「アメリカ合衆国でトヨタ車を運転中に発生した急加速事故について、事故の原因がトヨタ車にあると主張された。これらの事故と原因に関する主張などについて米国で大々的に報道された。この騒動を受けて、トヨタは大規模リコールを実施した。
トヨタはビラー弁護士の訴訟をはじめ、138件の集団訴訟、事故の遺族など96件の民事訴訟の他に、カリフォルニア州オレンジ郡検事局からも起訴され、トヨタ社は米国議会での公聴会での情報提供を要請された。事故の原因調査はアメリカ合衆国運輸省が主導した。このような一連の騒動は、「トヨタ・バッシング」、「トヨタ戦争」とも呼ばれた。
2011年2月8日、急加速問題の原因調査をしていた米運輸省・米運輸省高速道路交通安全局(英語版) (NHTSA)・NASAによる最終報告で、トヨタ車に器械的な不具合はあったものの、電子制御装置に欠陥はなく、急発進事故のほとんどが運転手のミスとして発表された。」
さらに、電子制御装置には全く問題がなかったという報告書が出されたこともウイキには記載されています。
米運輸省・NHTSA・NASAによる最終報告
2011年2月8日、急加速問題の原因調査をしていた米運輸省はトヨタ車の電子制御装置に欠陥はなかったとの調査結果を発表[102]。ラフード米運輸長官の発表では米高速道路交通安全局 (NHTSA) と米航空宇宙局(NASA)による10ヶ月の調査結果で、電子制御装置ではいかなる問題点も見つからなかったとし、NASAエンジニアによれば急発進が発生した自動車9台について電子制御装置に異常現象は見られず、NHTSAの調査でも加速ペダルと運転席フロアマットの欠陥による問題は確認されたものの、急発進事故の殆どが運転手のミスと確認された[103]。
しかしながら、この結論には異論があるのです。
長くなりますので、今回はここまでにします。次回は、異論とその根拠そして、問題提起をする積りです。
[21/7/11 イライザ]
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40年以上前の話ですが、アップルコンピュータのサービスマニュアルの1ページには、1インチ持ち上げて手を離せば故障の多くは直る、と書いてありました。昔のテレビの調子が悪いと叩いていたのと同じです。
現代の多くの電子機器の不具合はリセット=電源の入れ直しで直るものが大半です。いずれも再現性の難しい不具合で、様々な要因が重なって起きることです。コンピュータにはログと呼ばれる記録が残りますが、それも100%ではありませんが、役に立つことも多いです。私が乗っていたプリウスにも詳細な記録があるが、あくまで技術的な検証のためで、事故など原因究明のためではないとも聞きました。
今後AIが設計するようになると、人間より遥かに間違いのないものを作る一方で、人間では検証不可能なものになるのではないかと思ったりします。
投稿: 工場長 | 2021年7月16日 (金) 21時37分
「工場長」様
コメント有り難う御座いました。
御指摘のように、ルーターの不具合など、電源を入れ直すことで解消する問題はいくつも経験してきました。それと、メールの送受信の不具合も、アカウントの設定をし直すだけで解消することも多いですが、なぜ、不具合が起きるのかが分っていれば当然、その原因を取り除くための対応をしているでしょうから、「原因が分っていない」だろうと考えるのが自然です。
あるいは、対応方法は分っていても、コストが掛かり過ぎるので放っておくという可能性もありますがーー。
「車載電子装置なら問題はない」と過信するのは大問題ですね。
投稿: イライザ | 2021年7月17日 (土) 11時42分