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2021年7月 6日 (火)

池袋暴走事件 (3) ――「電子制御装置には欠陥がない」では説明の付かない事例報告――

池袋暴走事件 (3)

――「電子制御装置には欠陥がない」では説明の付かない事例報告――

 

これまでは、私たちの「記憶」は余りあてにならない、従って「記憶」だけに頼るのではなく「事実」を元にした検証が大切であることを確認しました。

2009_toyota_prius_02

マスコミ報道やネット上の様々な考察を簡単にまとめると、次のようになります。

 

① ブレーキライトが点いていなかったことは3人の目撃者の証言で明らかである。

② ブレーキを掛けたときに道路に付くはずのタイヤ痕もなかった。

③ ブレーキが掛かれば車は減速するはずなのに、減速していなかった。

④ 電子的制御装置に不具合があったとしても、油圧式のブレーキが代替するようになっているので、ブレーキは掛かる。

⑤ だから、「ブレーキを踏んだ」という飯塚被告の記憶は間違っている。

 

論理的な厳密さも犠牲にしないで、飯塚被告がブレーキを踏んでいなかったことを証明するためにこれらの命題を整理すると、次の二つのことを「事実」として確認する必要があります。

 

(A) ブレーキペダルを踏むと、どのような例外もなく必ずブレーキが掛かる。

(B) ブレーキペダルを踏むと、実際にブレーキが利いているか否かにかかわらず、一つの例外もなく、必ずブレーキライトは点灯する。(ブレーキライトの電球が切れていないとして)

 

ここでは、車が加速したかどうかは問題にしていません。それは、(踏み違いの場合も含めて)、何らかの不具合があった結果だからです。加速があってもなくても、ブレーキを踏んだかどうかという一点こそ、飯塚被告の行動の真実の反映だからです。

つまり、論理的には、①の三人の証言は真実を述べていると仮定して考えることにしますし、④については、(A)という形に厳密化しましたが、これが第一に検証しなくてはならない点です。そして、ブレーキを踏んでも、実際にはブレーキが掛からなかったという報告が複数あることが分ったのです。つまり、命題(A)には、例外が存在したのです。

まず、プリウスに乗っていて、突然ブレーキが利かなくなったという体験を百武太一郎さんという方が、YouTubeにアップしています。周りには車がそれほど多くなく、側道に坂のあることを思い出して、上り坂の途中で車を止めることができたそうです。

 

百武さんの体験が事実そのものだという前提を置くと、命題(A)は、成り立ちません。これか立派な「例外」だからです。

ブレーキが利かなくなった事例は他にもあります。Yahoo!ニュースJapan

の2020年10月16日の記事として、作家・ジャーナリストの柳原三佳さんが、「アクセルの踏み間違い、それとも車の異常? 池袋暴走事故裁判から、筆者が思い返す24年前のある死傷事故」と題する報告を寄稿しています。

1996年5月9日午後9時35分頃、熊本県菊池郡のT字路で発生した事故で、タクシーの運転手だったOさんが、T字路の赤信号で止まろうとしたところ、ブレーキが利かず、一人が亡くなりOさんの他に二人が怪我を負うことになりました。事故の様子をOさんは次のように言っています。

「私は下り坂に差し掛かったとき、いつものようにセカンドギアに入れ、エンジンブレーキとフットブレーキを使いながら停止線で止まるつもりでした。ところがそのとき、一瞬、ブレーキペダルから足を滑らせてしまいました。私はすぐにブレーキペダルを2度、力いっぱい踏みました。しかし、瞬時にスーッと抵抗力がなくなり、下りで加速したまま交差点内に進入してしまったのです。その直後、『ドドーン』『バッシャーン』『ガッシャーン』と3度のショックを受け、首に激痛が走りました」

柳原さんのコメントは、

タクシー常務歴16年。長年、無事故で安全運転を続けてきたOさんにとっては、信じられない出来事でした。

ぜひこの記事を読んで頂きたいのですが、柳原さんの許には、アメリカで起きたブレーキの不具合についての情報も届いていました。34年間ロスアンゼルスに住んでいたJun Jim Tsuzukiさん(63)からのメールです。こちらの記事はYahoo!ニュースですが、タイトルは「アメリカで起きたレクサス暴走死亡事故 緊迫の通話記録と「制御不能」の恐怖」です。こちらの記事も、分り易くいくつもの重要な指摘をしていますので、是非お読み下さい。

ここでは、ほんの一部を抜粋しておきます。まず、アメリカでの状況が良く分るTsuzukiさんの言葉です。

「実は、米国では約20年前に、SUA(Sudden Unintended Acceleration=突然の予想外の加速)という単語が作られたほど、速度制御不能による事故が続いていました。特に1999年から2010年までの10年間でみると、トヨタ車だけで815事例、341重軽症、19死亡が報告されています。ドライバーの年齢層は30~40代がもっとも多く、『アイドル状態からの急加速』『ブレーキを踏んでいるのに加速が始まった』『高速道路を通常の運転中に加速した』など、さまざまな事故が発生していたのです」

特に衝撃的なのは、2009年8月に、ハイウエイ・パトロール方面本部副部長だったセーラー氏が、妻と娘、そして義弟を乗せて運転していたトヨタ・レクサスES350が、突然制御不能になり、加速し続け190kmにまで達して、一般道路と交差した地点で道路を飛び越えて転倒炎上し全員が亡くなったという痛ましい事件です。

この事故では、制御不能になってすぐ、義弟が警察に電話を入れ、事故の様子が52秒間にわたって公的に記録されていました。

その他にも、制御不能になった車から警察に入った緊急電話の模様や、社内の様子を撮影した動画等が公開されてるとのことでした。

以上の事例からはっきりしたのは、命題(A)は、偽命題だということです。つまりこの主張を行うことは、論理的にはできないのです。

そして、ブレーキが利かなくなる原因、さらに命題(B)のブレーキライトの点灯に関連のあるのが、電子制御装置の問題です。

これについては、柳原さんの問題提起が的を射ていますので、最後に引用させて頂きます。

また、多くの方が、車に搭載された電子制御システムについて「バグ/ Bug」(英語で「虫」の意味=コンピュータプログラムの誤りや欠陥、瑕疵)という言葉を使い、この事故に限らず「バグで制御不能になった場合、事故後に事故車を調査しても正確な結果が残らないことがある」ということを指摘されていたのが印象的でした。

 ときとして発生する、不可解な自動車事故。

 アメリカで起こった数々の事実、そしてその記録に目を向けるとき、事故直後から即、「ドライバーの不法行為が原因だ」と決めつけて捜査したり、報道したりすることが、いかに危ういことかを痛感します。

 事故の真実を明らかにするためには、車の側にも何か不具合は発生していなかったか? 第三者を交え、さらなる慎重な捜査、調査が必要でしょう。

次回は、電子制御装置のバグについて、取り上げます。

 [2021/7/6 イライザ]

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コメント

調べました。2009年8月の事故。NHTSAの安全調査報告で、結果が、出ています・ アメリカ    トヨタ自動車の大規模リコール・2009年ー2010年   Wikipedia    。自分は、読んでも、まだ、理解できていません。読み込み中、です。

「匿名希望」様

コメント有り難う御座いました。

事故の原因がアクセルとブレーキの踏み違い、という結論にも、「ほとんどの場合」という但し書きが付いています。それ以外の場合の検証をすることがカギになると言っているようにも読めるのですが---。

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