もう化けの皮が剥がれました ――専門家としての責任とは――
もう化けの皮が剥がれました
――専門家としての責任とは――
オリンピックとコロナに焦点を合わせて、これまで、まずはIOCの関係者による、日本という独立国家の主権侵害について異議を唱え、続いて、「このようなパンデミックという状況でオリンピックを開くなどということは、普通はあり得ない」という趣旨の尾身発言を取り上げました。特に、田村厚労相の「自主的研究」が、時代錯誤であることも指摘しました。
続いて、マスコミが「真理・科学を守る尾身会長」のようなイメージで尾身氏を持ち上げ、科学の側に立つマスコミという雰囲気づくりに走ってきました。あたかも現代のガリレオ・ガリレイでもあるかのように。実は、それも眉唾だと指摘したのですが、この最後の点については十分には論じていませんでした。
Justus Sustermans, Public domain, via Wikimedia Commons
しかし、これ以上の説明が不必要になってしまいました。6月18日の専門家有志による「提言」で主要なポイントとして挙げられたのが、「観客を入れるのなら、カクカクシカジカ」になってしまったからです。
それと、6月2日に同じ尾身氏が国会答弁で述べた、「何のために開催するのか明確なストーリーとリスクの最小化をパッケージで示さないと、一般の人は協力しようとしない」を比べると、「何のために開催するのか説明せよ」という主張は捨て去られ、「開催するなら」そして「観客を入れるのなら」という前提での発言になってしまっています。
18日の東京新聞電子版は、「尾身氏は、当初の提言には、五輪の「開催の有無を含めて検討して下さい」といった文言が含まれていたと明かした。しかし、菅義偉首相がG7で国際的に五輪開催を表明したことで、「意味がなくなった」として、内容を削ったという。」と報じています。
となると、既に観客ありで動いている政府の立場は認めざるを得ないことになりますから、記者会見での質問、「政府が観客あり、という前提で事を進めているときに無観客という提言は虚しく聞こえるが--」という疑問が生じます。
に対して、「自分たち専門家の役割はリスクを評価することで、それを政府に伝えることは我々プロフェッショナルとしての責任だ。それを採用するかどうかは政府や主催者の責任だ」と述べています。
でも、その立場からは、6月2日の「ふつうは開催しない」とか「なぜ開催するのかを国民に説明しなくてはならない」という主張は出てこないではありませんか。これは、自分たちのリスク評価を採用した上で、政府がその評価に基づいた行動を取れという主張なのですから。そして、6月2日に多くの人が尾身会長の発言を評価したのは、この部分があったからなのではないでしょうか。
さらに、リスクの評価の表現として、「開催というリスクは何としても避けなくてはならない」、つまり「開催すべきではない」があってもおかしくはありません。リスクの程度を表現する上で最大級の言葉ですし、それを採用するかどうかは政府が決めることになるからです。
さらに、「無観客」も「次善の策」も、政府や組織委員会がどのような行動を取るのかについてがその内容です。「開催しない」と同列にあるのです。その一方が「リスクの評価」で、もう一方が「評価の採用」であるという区別は付けられないのです。
論理的に考えると矛盾するおかしな表現なのですが、それでも「専門家」のレトリックに惑わされている人もいるようです。
目を覚ますために必要なのは、11日のこのブログで再度取り上げた、昨年の全国一斉休校の「正当化」のプロセスを振り返ることです。そこで「専門家」がしたことは、単純化すれば次の二つです。
- 政府、または総理大臣の発言を前提として受け入れる。
- 「専門家」として、その発言にお墨付きを与える。
今回の二度にわたる尾身発言もこれに沿って行われています。それは、次のように要約できます。
- オリンピックは開催する、観客は入れるという政府と総理大臣の発言は受け入れる。
- 「専門家」として「次善の策」を提案することで、①の政府と総理大臣の発言にお墨付きを与えている。
歴史的に、安部・菅内閣のやり方を見るだけでお分りだと思いますが、「次善の策」を提案すれば、自分たちのしたいことを「次善の策」だと断定するか、「次々善の策」を打ち出すための口実に使うという結果になるのは火を見るよりも明らかです。
そして、「私たちは『専門家』の意見に従ったのだ」と開き直るでしょう。このシナリオが確定してしまったのは、「開催の有無を含めて検討して下さい」が捨て去られたときなのですが、私見では、そのときとは昨年の3月2日なのです。
[2021/6/11 イライザ]
« ベトナムの歴史(その4) | トップページ | 6月の「19の日行動」―三原地区と府中地区 »
「ニュース」カテゴリの記事
- 加藤友三郎像(2024.09.07)
- ヒロシマとベトナム(その61) ~南シナ海をめぐる動向-5~ (2024.09.05)
- 中国新聞の二つの記事―その1(2024.09.03)
- 久しぶりの参加です。「VIGIL FOR GAZA(ビジルフォーガザ)」(2024.09.02)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- ヒロシマとベトナム(その62) ~南シナ海をめぐる動向-6~ (2024.10.05)
- 就職差別の撤廃を!(2024.10.01)
- 中国電力は、12月に島根原発2号機を再稼働するとしているが?(2024.09.25)
- ベトナムの歴史(その32) ― ベトナム Now Ⅱ ― (2024.09.20)
「コロナウイルス」カテゴリの記事
- 新型コロナ感染者急拡大と4回目のワクチン接種(2022.07.18)
- ドイツからの便り―その1(2022.01.07)
- 本当に怖いのは・・・(2021.12.13)
- ワクチン接種を決断 因果関係を明確に(2021.09.24)
- 8月6日には、オリンピックの会場で全員黙祷を! ――change.orgでの署名運動経過報告―― (2021.07.21)
「言葉」カテゴリの記事
- 憲法98条「最高法規」を読み直す ――『数学書として憲法を読む』の補足です―― (2022.05.11)
- 核廃絶運動のこれから (3) ―――Wish Listを作ってみよう!――― (2022.01.11)
- 核廃絶運動のこれから (2) ―――転換期を迎えているのではないか?――― (2022.01.06)
- 坪井直さんの遺志を継ぐために ―――広島・長崎講座のすすめ――― (2021.12.26)
- 「最高法規」の意味 (4) ----憲法の持つ深みと矛盾が共存しています--- (2021.12.21)
「6.23東京都庁包囲」五輪反対世界同時デモ
6.23水18時都庁第一庁舎正面玄関前集合
19時デモ出発→アルタ前解散
⇑西口から東口へ⇒これだけで十分に「都庁(新宿区)の完全包囲」
なんてシンプルでゴージャスなデモ。
新宿なら近いし駆けつけるところですが、
最近とみにヘタヨロのため(樋口恵子さんはヨタヘロと)、
残念ながらスルー😢
盛大であってほしい🙌
投稿: 硬い心 | 2021年6月21日 (月) 17時28分
「硬い心」様
コメント有り難う御座いました。
具体的にはどのようにすれば良いのか思い付かないのが致命傷なのですが、誰か「オンライン・デモ」、できれば大規模なものを提案してくれませんかね。
投稿: イライザ | 2021年6月22日 (火) 20時05分