国民投票法を改めて考える
昨日、参議院本会議において「憲法改正手続きに関する改正国民投票法」(以下「国民投票法」)が、採決され賛成多数で可決され、成立しました。しかし、何時部修正されたとはいえ、まだまだ問題が残る法律だということは、5月12日のブログ「改正されても問題が残る国民投票法: 新・ヒロシマの心を世界に (cocolog-nifty.com)」で指摘した通りです。
今日は、そもそも「国民投票法」とは何かを考えたいと思います。この法律は、「憲法改正手続きに関する改正国民投票法」という法律名が示す通り、憲法改正に必要な国民投票法の手続きを定めたものだということは、改めて強調する事でないほど、周知の事実です。
ところが、国会の論議を見ていると、この当たり前のことが理解されているのだろうかと危惧せざるを得ないのです。
まずはっきりさせておきたいことは、「憲法改正」ができるのは誰かということです。いうもでもないことですが、どれだけ多くの国会議員(憲法上は、衆議院も参議院も議員の三分の二以上が必要)が、「憲法改正案」に賛成したとしても憲法を改正することはできません。国会議員にできることは「憲法改正案を発議する」ことしかできないのです。重ねて言いますが、国会議員に許されているのは「憲法改正案を発議する」ことだけです。
法律を作る手続きとは全く違い、「憲法改正」を決めることが出来るのは、有権者だということを忘れてはいけません。
参議院本会議場
最近行われた学習会で、「なんでこんな欠陥だらけの国民投票法が、当時の民主党も一緒になって賛成し、成立したのですか」との問いに対する講師の答えはこうです。「当時の民主党は、『環境権などを憲法に加えたい』との考えがあり、それを実現するため、国民投票法の成立を急いだのではないかと思う」。
私も、当時の民主党の国会対応には、そうした思惑が強くあったことは想像していましたが、その時から強い疑問を持っていました。講師の答えを聞いながら、そのことを思い出しました。
疑問を持った理由の一つは、今までにも指摘してきたことですし、今でも問題になっているように欠陥だらけの法律の成立をなぜそんなに急いだのかということです。
もし、仮に私や講師が想像しているとおりの理由で、当時の民主党が国会対応をしていたとすれば、「党利党略」によって成立を急いだといわれても仕方ないことです。私が疑問だ、大問題だと考えるのは、国の基本法を変える憲法改正が、こうした党利党略が優先されて、実施されてはならないと考えているからです。決して憲法改正に反対だから言っていることではありません。
もちろん、私は民主党だけを責めるつもりはありません。当時の国会で多数を占めていたのは、自民党であり、その総裁は安倍晋三だったのですから、採決を急がせたのは自民党の改憲勢力であったことは間違いない事実として、忘れてはなりません。
元に戻りますが、憲法を改正できるのは、国民だけです。
そして国の最高法規である憲法を改正するための手続き法である「国民投票法」は、主権者である国民が納得し、瑕疵のない手続きが定められることは、ごくごく当たり前のことです。
しかし、私には、この基本ともいえる考え方が、最近の「国民投票法改正」を巡る論議の中では、後景に押しやられているように思えて仕方がありません。こう思うのは、私だけでしょうか。
ですから、憲法条文の改正論議を進める事よりも先にやるべきことは、欠陥法である「国民投票法」がきちんとした内容となるよう改正させることです。その法律改正の権限を持っているのは、今度は国会議員だけです。国会議員の責任は重いといわざるを得ません。
もちろん、改憲を進めようとする勢力によって「国民投票法が改正されたのだから」として、強引に憲法改正論議に進めようとする危険性があることを私も十分承知していますし、多くの人が危惧していることです。
しかし、だからといって「国民投票法」の改正は進める必要がないということにはならないというのが、私の考えです。
いのちとうとし
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