サカスタ用地に被爆遺構―どうするの広島市?
「サカスタ用地に被爆遺構」 6月15日の中国新聞一面のトップ記事の見出しです。31面にも関連記事が書かれています。
第一印象は、「すごいものが出て来たな」ということです。この場所には、何度が足を運んでいましたので、サッカースタジアム建設の前に埋蔵文化財の調査のための掘り起こしが進められていることは知っていました。その時は「広島藩時代の以降はどんなものが出るだろうか」ということで、残念ながら被爆遺構のことは頭に浮かびませんでした。
その日のある人のメールに「いのちとうとしさんはお分かりでしょう。あそこを掘れば出てくるのは分かっていたことですが」と書かれていましたので、穴に入りたい思いでした。さらにそのメールには「一昨年だったか、発掘調査が始まった時、○○さんが、あそこを掘れば色々でるはずだが城下町の遺構のことしか言わない。何か取り組む気はないですかと投げかけられていました」とも。
早くから、あの場所を掘り返せば、被爆遺構が出てくることを当然のことと思っていた人がいたのです。
とにかく現場を見なければと、その日の午後現地に行ってきました。が、その前に広島市の対応について書いておきたいと思います。
新聞記事に「市民への現地説明会を開く検討をしていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に見送った」と書かれていましたので、事情を聴こうと広島市役所に電話を入れました。担当は、文化財振興課文化財担当です。
私:「非常に貴重な被爆遺構が出て来たようですが、現地での説明見学会を行っていただけませんか」
広島市:「一度予定していたのですが、コロナ禍で実施できませんでした。いずれ何らかの形で、説明会はしたいと思っていますが、作業日程もあるので、現地説明会は難しいと思います」
私:「現地で現物を見ながら説明を受けるということが、大切だと思います。ぜひ市民の公開してほしいのですが。20日までの緊急事態宣言は、解除される予定のようですから、その後ぜひ計画してください。密にならないようにということだったら、人数を制限するとかすればできるのではないですか。全て終わった後、記録を取られた写真などを使っての説明会では、意味がないとは言いませんが、不十分ですよ」
広島市:「今のところ現地での市民への説明会は、考えていません。コロナの問題があり、イベントなども中止になっていますから。マスコミには公開しなければと思っています。それと時間が限られていますので(サッカースタジアム建設の日程のこと)」
私:「もし緊急事態宣言が解除されたら、資料館などでも人数を制限しながらかもしれませんが、当然入館を認めることになりますよね。だから、緊急事態宣言が解除されたら見学会を実施してください。20日に緊急事態宣言が解除になったらもう一度電話を入れます」
ちょっと長くなったのですが、これが広島市とのやり取りです。このやり取りで私が感じたことです。広島市には、この遺構が市民の共有の財産だという認識が乏しく、「とにかく発掘調査をしなければならないので、調査はするが出来るだけ早く終了し、出来れ遺被爆遺構をあまり多くの人に見させずに、サッカースタジアムの工事をはじめたい。『被爆遺構を保存しろ』などといわれると大変だ」と考えているのではないかということです。
被爆遺構の発掘現場に行って、そのことを確認できました。作業を監督されている人を姿が見えましたので、こう問いかけました。「広島城時代の以降までたどり着こうと思えば、被爆遺構を動かさなければならないと思いますが、復元のためには、移動させるとき敷石などに番号を振っておく必要がありますよね。そうなっていますか」
ちょっとためらう形でしたが「広島市からはそんな指示が出ていませんので、今のところ何もしていません」との答えです。
私は現地に15日、17日の二度訪れ、別々の人にその度に同じ質問をしたのですが、答えは同じでした。これで理解できると思います。
広島市は、調査はするがどんな遺構が出ても保存する気はなかったのです。15日の夕方のテレビ各局の報道番組で、一斉にこのニュースが流れ、広島市は慌てているともいわれています。
当たり前のことですが、埋蔵文化財の調査では、調査する前には、予測はできたとしても何が出るかは、はっきりしません。しかし、調査によって貴重なものが出てくれば、立ち止まって「保存が必要か、保存するための計画変更できない」などを慎重に検討することが、当然のことだと思います。貴重なものが八来るされたため、計画が変更されたという例は、全国を見ればいくらでもあります。
今回の場合、被爆遺構ですからなおさらです。松井市長は最近「平和文化」という言葉をよく使われますが、「平和文化」というなら、被爆遺構を保存する事こそ、大切な「平和文化」ではないのかと私は思います。
今日も長くなりましたので、肝心な「サカスタ用地に被爆遺構」の現地報告は、明日になってしまいました。
いのちとうとし
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