市民の声が無視された「広島市平和推進条例」(案)の検討
4月18日(広島市議会・政策立案検討会議傍聴記―その1 入れられなかった「核兵器禁止条約の発効」-広島市平和の推進に関する条例 : 新・ヒロシマの心を世界に (cocolog-nifty.com)と19日(広島市議会・政策立案検討会議傍聴記―その2 「原則」のため、次々と葬られる市民の意見 : 新・ヒロシマの心を世界に (cocolog-nifty.com))に紹介した「広島市議会・政策立案検討会議」は、あと1,2回開催されるようですが、昨日で前文とすべての条文に対する市民意見の検討は、一応終了しました。
市民意見の検討の会議は、計7回に開催されましたが、結局私が4月19日のブログで危惧「今回の検討状況を見る限り、残念ながら『原案が修正されることはほぼない』ことが予測できますが」した通り、市民の意見が取り上げられることは全くありませんでした。
修正されたのは、4月19日のブログでも紹介した「前文の第6段落の最初の文言『しかしながら、被爆75周年を迎え』という表現を『被爆75周年が過ぎ』に変更したことです。これは変更というより、時系列を考えれば、市民の声が無くても原案提示の時点で直しておくべきか所ですから、修正と言えるものではありません。しかし、この声に対しても、最初は反対意見があったことをぜひ紹介しておきます。」だけでした。
7回すべての検討会議を傍聴して改めて感じたことは、次のことです。
会議の運営をどう進めるのかは、その会議の構成メンバーで決めることですから「全会一致でなければ修正しない」ということも、一つの方法だと思います。しかし、市民意見を公募したのですから、寄せられた市民意見を大切にして、可能なものはできるだけ取り入れ、市民とともにより良い条例をつくるという姿勢が、基本的な考え方として、必要だったはずです。残念なことですが、この会議ではそうした姿勢を見ることはできませんでした。
各委員が、自分の考え方を主張するだけに終始して、「意見が一致しないから修正しない」ということで市民の意見は切り捨てられてしまいました。当然のことですが、市民の意見を全て、又そのまま取り上げるべきだというつもりはありません。しかし、もし少しでも市民の声を取り上げようという姿勢があったなら、「こう言う文章ではどうだろうか」などの意見を出しあい、「全員が一致」するように努力するのが当然だと思いますが、そのような前向きの姿勢を見ることはなく、深まった議論に進展することはありませんでした。
その典型が、5月19日の行われた「第5条(市民の役割) 市民は、本市の平和推進に関する施策に協力するとともに、平和の推進に関する活動を主体的に行うよう努めるものとする」での結論です。この条文に対しては、「市民の協力義務を負わせることは、市民の思想・良心の自由や表現の自由を侵害することになるので削除すべきだ」などの意見が寄せられていました。広島県原水禁の申し入れの中でも強調した点です。この検討では、ある委員から「文章を『市民は、平和の推進に関する活動を行うよう努めるようにする』としたらどうか。」と提案があり、9人の委員中8名が「市の施策に協力する」という文言を削除することに賛同したのですが、一人の委員が「原案で良い」と主張したため、結局、ここでも市民の意見は取り入れられないことになりました。
憲法違反の疑念がある「協力義務を課す」内容を修正するための努力がなぜされないのか、当然の疑問です。4月19日のブログで紹介した「前文に『核兵器禁止条約の発効』が入れられなかった」ことと合わせ、会議が、「全委員一致でなければ修正しない」という合意事項の画一的な適用による運営されたことによる問題点が、はっきりとします。
結果、繰り返すようですが、「市民の意見は何一つ取り入れられなかった」ということになったのです。
もう一つ紹介したいのは、市民の意見が一番多く寄せられた第6条(平和記念日)の2項です。ここでは、「平和祈念式典は、市民の理解と協力の下で、厳粛に行うもの」となっていますが、これに対し「表現の自由を制約する恐れがあるから削除をと危惧する声が多く寄せられました。これに対し「これは広島市に対し課したものだから、市民の活動を制約するものではない」「議会ですでにこの内容を含んで決議を行っているので、それを入れただけだ」として、一人の委員を除き、原案が修正されることはありませんでした。委員の意見を聞いていても疑問が残ります。①決議と条例では、全く拘束力が違う②「市に責任を課す」としていますが、第5条で「市民は市の平和行政に協力する」ことが義務付けられているのですから、両条文を合せれば、市民に「厳粛に行うための協力」を強制することが出来ることになることを強調しておきたいと思います。
結局、昨日までの傍聴では「広島市平和の推進に関する条例(仮称)素案」を作った自負を持つ政策立案検討会議の委員にこれ以上期待することはできない」との思いを強くしました。しかし最終的には、この条例は、市議会が作ることになりますから、あとは「これだけ多くの市民の声を無視した条例をそのまま採択してよいのか」という市議会議員一人ひとりの良識に期待するしかないと思っています。
いのちとうとし
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