島根原発2号機の「再稼働」を止めるために
2013年12月25日クリスマス、中国電力は原子力規制委員会(規制委)に対し、島根原発2号機の規制基準適合審査(再稼働)申請を行いました。この時点から規制委の審査開始とされますが、中電はその前月の11月には島根原発から30キロ圏内の自治体に対し、申請することの事前了解を得るため説明行脚を行いました。
安全協定上は松江市と島根県からは「了解」を得なければなりませんが、その他の出雲・安来・雲南・米子・境港・鳥取県への説明は「サービス」でしかありません。中電に対しこれらの市・県からは、中電が松江市や島根県との間で締結しているのと同一の安全協定の締結を迫られました。しかし、中電は最後まで頑なに同一の安全協定を拒み今に至っています。
中電申請の2日後の12月27日には、東北電力が宮城県女川2号機の申請を行い、福島原発事故後は遠慮していた「B(沸騰水)型」が相次いで申請を始めていくことになります。
女川の方が、島根より早く「合格」が出ましたが、まだ再稼働にはなっていません。女川は被災原発ということで、「まさか」という気持ちを持っていましたが、翌年には南海トラフの巨大地震が想定される中部電力浜岡原発4号機が、再稼働申請するなどまさに恥も外聞もない状況となりました。
福島原発事故後に実際に再稼働した原発は、すべて「P(加圧水)型」です。福島原発がBだったので、Bのどこが再稼働の先頭になるかが、この業界の大きな関心事となっています。
島根の申請から約7年半、改めて島根の問題点を考えてみました。原発には共通する問題点がたくさんありますが、あえてその事はここでは書かないことにします。
まず一つには、地震の問題です。島根原発の南側約2キロにある宍道断層の長さです。島根原発1号機が建設された当初は、宍道断層は無いとされていましたが、最終的には39キロに改められました。地震の危険性が高くなると、原発の「安全対策」は強化されなければなりません。その尺度となるのが「基準地震動」で、申請時の600ガルから820ガルに上がり、当然対策費用も上昇していきました。
この宍道断層、その東側にある鳥取県沖西部断層と繋がっているという懸念が付きまといます。また規制委が先月4月21日に見直した、新たな地震評価、断層などの痕跡が地表に現れない「未知の震源」による地震について、その評価手法を加えています。この問題について島根原発の規制委判断はどうなったのか、その点に疑問があります。
次に自治体同意の問題です。最初にも書きましたが、安全協定上、中電は松江市と島根県からの了承を得れば再稼働は可能となります。しかし他の30キロ圏内の自治体の了承を得ることなく、再稼働に踏み切るような強引なことはしないでしょうし、させてはなりません。
そしてなんといっても、いわゆる避難計画です。避難元自治体~島根県・鳥取県~広島県・岡山県~避難先自治体という複雑な県間防災協定の中、これが実効性のある形で運用できるかという問題です。規制委にいわせれば、避難計画は審査対象ではないと逃げるでしょう。そう言うだろうということを知った上で、この3月に原水禁エネルギー政策提言作成委員会が発表した、「第3次原水禁エネルギー政策の提言」が明らかにしている、「原子力防災制度の実効性を審査する第三者委員会制度の創設」を求めるとともに、現状の問題点を避難元にも避難先にも問題提起することだと思います。コロナ禍の中、相反する感染防止対策と原発避難対策の矛盾を明らかにしていくことも重要です。避難者を受け入れることになる、岡山・広島両県の同意も必要だと思います。
もちろん火山や津波の問題もあります。
以前、「ケンカの仕方」という雑文を書いたことがありますが、勝つために一番大切なことは、「勝つのだ」という気持ちになることだとしました。これは「最後の総会屋」と呼ばれた、広島市生まれの小川薫の言葉です。彼が出席した最後の株主総会は、中国電力でした。凄まじい威力のある人でしたが、ミーハーの僕は総会が終わった時、軽くあいさつを交わしたのを今でも鮮明に覚えています。目標が定まらないケンカは、ストレスになるばかりです。
木原省治
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