予期せぬ再会
コロナ禍でさまざまなことが変わりました。組合は集まり顔をあわせ運動をすることを基本にしてきたので、ジレンマを感じます。現状の中でなにがやれるか考え、Web併用あるいは完全Webでの会議や学習会等も行っています。生活にも変化がありました。帰宅後はテレビのかわりに「Choose Life Project」等をオンラインで観ることが日課となりました。講演会等に参加することも好きでしたが対面開催がほぼなくなったので、これもオンラインで興味のあるものを見つけてぽつぽつと参加するようになりました。
あるとき、「アウシュヴィッツ強制収容所をめぐり考える、ポーランド ピーススタディツアー」というオンラインイベントを見つけました。「案内人」のところに、見知った名前を見つけました。アンナ・チャスカさんです。2018年8月に「世界人権宣言70周年企画」の旅に参加したときのガイドさんでした。思ってもみなかった再会を楽しみに、オンラインイベントに申し込みました。
(慰霊碑の前で話をするアンナさん 2018)
オンラインイベントは、アウシュヴィッツ強制収容所のバーチャルツアーに加え、現地の社会科教員インタビュー、現地の高校生インタビューもあり、ポーランド人の加害にも踏み込む、思っていた以上に深い内容でした。とりわけ印象に残ったのが、戦後75周年記念イベントでの元収容者スピーチです。https://newsfrompoland.info/historia/marian-turski-speech/今の日本に重なり仕方ありませんでした。
以下、このスピーチのポイントです。
1930年代初頭のベルリンにいると想像しましょう。ある日、「ユダヤ人はこのベンチに座るな」と張り紙がされます。あなたは「良いことではないが、別の場所に座ればいい」と言うかもしれません。「このプールに入るな」、「この声楽隊に入るな」、「ドイツ人の子どもと遊ぶな」、「ユダヤ人には午後5時以降しかパンを売るな」――誰かを排除することに、被害者・加害者そして傍観者の全員が、少しずつ慣れていきます。政府は、人々がゆっくりと麻痺し、悪に反応しなくなり、無関心になっていく様子を見ています。そして、気がつくとユダヤ人は隔離され、収容所ができ、殺害されます。
アウシュヴィッツは、突然、空から降ってきたのではありません。
この場所で起こったことは、起こり得るということです。起こり得るということは、地球上のどこでも起こり得るということです。憲法、人権、民主的な秩序、少数派の権利を守ることができるなら、それに打ち勝つことができます。
無関心であってはいけません。
歴史に関する嘘を見たとき無関心にならないでください。少数派が差別されているとき無関心にならないでください。民主主義とは、多数決と同時に少数派の権利が守られなければなりません。権力を握る政府の行動に無関心にならないでください。
もし、無関心であるならば、私たちの上に、私たちの子どもの上に、アウシュヴィッツが急に降ってくることに気がつきもしないでしょう。
2018年の旅は、過去ではなく、「現在・未来を考える旅」でした。世の中にあふれる差別・排外主義・優生思想、権力の教育やメディアへの介入、政治の強行運営、分裂支配、歴史修正、憲法改悪の動き・・・。そのとき感じた「今、日本は同じ道をたどっているのではないか」という思いは、2年後、コロナ禍により確信となりました。
信用できないデータに「大本営発表」を、正当な要求をする者が叩かれる状況に「非国民」を、人員も物資も足りないまま必死に対応にあたる医療現場に「野戦病院」を重ねずにはいられません。国はちぐはぐで無責任な対応をし続け、課題は自助努力と精神論に丸投げです。失敗を認めず総括もせず、大義(五輪)にむかって突き進む姿は「インパール作戦」に重なります。私たちの生きる「今」は「戦後」なのか?という問いが頭の中をぐるぐるします。
今を「戦後」にしていく。そのために、おかしなことに引っかかり続けたい、一人の主権者として声を上げ続けたい、改めてそう感じる再会となりました。
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