改正されても問題が残る国民投票法
昨日5月11日、衆議院本会議において「憲法改正手続きに関する国民投票法改正案」(以下「国民投票法改正案」という)が一部修正されて可決し、参議院に送付されました。マスコミは、これによって国民投票法改正案は、今国会中に成立することが確実になったと報道しています。
今回の改正内容は、主に公職選挙法に合わせるもので、①駅や商業施設でも投票できる「共通投票所」の設置②期日前投票時間の弾力化③投票所に同伴できる子どもの範囲の拡大など7項目となっています。
今回の改正案採択にあたって、立憲民主党が提案した「政党のスポットCMやインターネット広告の規制、運動資金の規制」など「法制上の措置が必要なものは3年以内に法改正する」という付則を盛り込むことが受け入れられました。スポットCMやインターネット広告の問題は、国民投票法が成立した時(2007年)から「問題がある」と言われてきたことですので、自民党が「3年以内に法改正をする」ことを約束したのですから、一定の成果だとも言えます。ただ「約束した」と言っても、今後の検討のあり方がどうなるのかは予断を許しませんので、しっかりと監視する必要があります。
今日私が問題にしたいことは、成立以来一度も実施されたことのない国民投票であるにもかかわらず、なぜ修正しなければならないのか(今回が2度目)です。
5月6日、衆議院憲法審査会で採決
国民投票法が成立した2007年は、第1次安倍内閣の時代です。法案が採決される時から、多くの問題点が指摘をされていました。それを端的に表しているのが、参議院で法案に18項目もの付帯決議がついてようやく採択されたことです。その付帯決議の中には、今回修正案採決で付則として加えられた「広告」の問題も、「13 テレビ・ラジオの有料広告規制については、公平性を確保するためのメディア関係者の自主 的な努力を尊重するとともに、本法施行までに必要な検討を加えること。」ときちんと入っているのです。
私は、当時(2007年)から「すぐに憲法改正のための国民投票が実施される状況でもないのに、18項目もの付帯決議をつけなければならないほど問題のある法案の採決はすべきでない。もっと時間をかけて慎重に論議して、法案にきちんと盛り込むべきだ」と指摘しました。決して「国民投票法が成立しなければ、憲法改正ができない」という理由からではありません。国の基本である憲法を改正のための手続きを定める国民投票法ですから、当然国民が平等の立場で意思表示できるような中身を持った法案でなければならないと考えているからです。
当時は与党第1党だった自民党はもちろんですが、野党第1党だった民主党も賛成に回って18もの付帯決議が付けられた欠陥があるとわかっていた国民投票法の採決が、なぜか強行されてしまったのです。大事なことは、「『憲法改正ありき』の姿勢で、問題を残したまま採決を急いだ」誤りをきちんと反省することです。その反省抜きに憲法審査会の論議が進むとしたら、再び誤りが繰り返されることになると危惧せざるを得ません。
国民投票法に残る問題点は、決してCM問題だけではありません。例えば、当時の付帯決議の第6項には「低投票率により憲法改正の正当性に疑義が生じないよう、憲法審査会において本法施行まで に最低投票率制度の意義・是非について検討を加えること。」となっているにもかかわらず、この最低投票率制度について論議が深められてということを聞いたことがありません。
この他にも日本弁護士会が今でも指摘しているように「①原則として各項ごと(場合によっては条文ごと)の個別投票方式とすること②公務員・教育者に対する運動規制は削除されるべきであること③発議後国民投票までの期間は最低でも1年間は必要であること」などなど、検討すべき事項の多くが残っています。
改憲を目指す勢力は、今回の国民投票法改正案が成立すれば、次は具体的な「憲法改正案に基づく論議を始めるべきだ」と言っていますが、とんでもないことです。どうしても「憲法改正」がしたいのであれば、「国民投票法」の残された課題を全てきちんと正すことを先に行うべきです。
いのちとうとし
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