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2021年4月 7日 (水)

ヒロシマとベトナム(その23-2) 日本の姿勢が問われる「出入国管理及び難民認定法」改正-その2

― 極端に少ない難民認定 ―

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

申請数

1,202

1,867

2,545

3,260

5,000

7,586

10,901

19,628

10,493

10,375

認定数

39

21

18

11

27

28

20

42

44

認定率

3.24

1.74

0.71

0.18

0.22

0.36

0.26

0.10

0.40

0.42

(出典:出入国在留管理庁の統計を基に作成)

上表は2010~2019年まで難民申請数と認定数の推移です。10年間に申請者は7倍余り増えているにもかかわらず、認定率は10分の1に低下しています。

下図は主要先進国7カ国のうち、イギリスとイタリアを除く5カ国の2019年の難民認定数と認定率です。トランプ政権下で「移民排斥政策」が進められたアメリカですら296%ですから、日本の0.42%という低さは異様に映ります。

 

― 長期化する収容による人権侵害 ―

在留資格期限が切れて残留しているオーバースティや不法入国や不法上陸による不法滞在など在留資格がない人を、出入国管理庁(入管庁)の行政権限で全国の施設に収容しています。下表は入管庁の資料を基に作成した収容者数とそのうち6ヶ月を超える収容者数の推移です。6ヶ月以上の長期収容者が占める率は上昇傾向にあり、この数年は4割を超え、2019年には3年以上収監されている人も63名いました。

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

収容者数

1,028

914

932

1,003

1,133

1,351

1,494

1,054

6ヶ月以上の長期

353

263

290

290

313

576

706

462

6ヶ月以上の率

34.3

28.8

31.1

28.9

27.6

42.6

47.3

43.8

人身の自由を奪う収容行為は本来、裁判所の令状が必要ですが、入管の収容手続きは行政権限で行われています。いわば、警察官・検察官・裁判官・刑務官の役割を入管庁の行政職員が行っており、チェック機能が働かない上に入管職員の裁量に委ねられてしまっています。

長期収容されている人たちの中には、家族と一緒に長く日本で暮らしている人や、母国に帰国すると迫害や弾圧の恐れがあったり、生命が危険に晒されるなど、帰国したくともできない理由がある人たちが多いと言われています。いつ釈放されるか分からない不安など過度なストレスから健康を害したり、不幸にして亡くなるケースも後を絶ちません。

こうした扱いに抗議するハンガーストライキが各地で起こり、20196月には長崎の収容所でナイジェリア人男性が餓死しました。

Photo_20210403172101

(出典:朝日新聞DIGTAL、2019年8月21日)

2020年8月、国連人権委員会「恣意的拘禁に関する作業部会」は、日本政府に対し、こうした入管施設への収容という「身体の自由の剥奪は世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)に違反し、恣意的なもの」であり、「遅滞なく是正し、国際的規範に適合させるために必要な措置を講ずる」とともに、「出入国管理及び難民認定法を見直すよう」求めました。

※作業部会意見書(日本語訳)は下記からご覧になれます。https://migrants.jp/user/media/ijuuren/page/news/pdf/WGAD_Opinion_JPN_final.pdf

しかし、収容環境は一向に改善されず、今年36日にも名古屋の施設に収容されていた30歳代のスリランカ人女性が、体調変調にもかかわらず適切な医療措置を受けられず死亡するという「事件」が起きています。

 

― 政府「改正案」のひとつ、「監理措置」 ―

改正案の主な内容を見てゆきたいと思います。

一つには、「監理措置」の新設です。「送還時まで収容すること」を原則とする現行制度を維持しつつ、収容に代わる「監理措置」を新設するというものです。逃亡や証拠隠滅の恐れが低いことや「その他の事情」の条件を満たせば、300万円以下の保釈金で収容所を出て監理人(弁護士、支援者、家族など)の下で生活することが認められるというものです。

しかし、その対象者の範囲は曖昧なうえ、在留外国人にとって相当な金額である300万円が果たして準備できるのか疑問です。条件を満たすことは極めて困難と言わざるを得ません。こうした条件が満たされなければ、入管庁という一行政機関が、裁判を経ずして個人の身体的な自由を制限し続けることができる仕組みは、以前と何ら変わりありません。さらに、就労はできず健康保険にも加入できないなど、人権が保障されていません。

野党共同案では、退去強制令書による収容は、あくまでも送還の準備のために認められるものであり、送還の予定が立っていない外国人や、送還が法律上禁止されている難民申請者を収容することは、本来の日的外の収容であり、明確に違法であるとの立場から、「退去強制事由に該当すると思料される外国人の収容は、明らかに該当する場合であって、逃亡の恐れのあるときに限って、裁判官のあらかじめ発する収容許可状により、行うことができること」とされています。

そして、「収容許可状による収容期間は、10日以内とする。ただし入国審査官の請求があった場合、裁判官はやむを得ない事由があると認めたときは、10日を限り延長することができる」とされています。

こうした日本の入管制度(収容)に対し、国連人権委員会が是正勧告を出したことは前回述べました。加えて、憲法第1 8条が禁止する「意に反する苦役」や、拷間等禁止条約第1条第1項が禁止する「拷間」に該当するものであって、 この点からも明確に違法です。

次回(5月5日)も引き続き、「出入国管理及び難民認定法」改正について見てゆきたいと思います。

(2021年4月7日、あかたつ)

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コメント

田中角栄さんだと、どうなのでしょうか・。・ないものねだりですね、これは。

「匿名希望さん コメントありがとうございます。
ひょっとして違うかもしれませんが、こうした問題を前進させるためには、そうですね、少し強い指導力のあり、責任を持って進める人が必要な気がします。」

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