広島市議会・政策立案検討会議傍聴記―その2 「原則」のため、次々と葬られる市民の意見
昨日、「原則に従って」の言葉で、前文に「核兵器禁止条約の発効」が挿入されないことになったことを紹介しました。15日の政策立案検討会議では、何度もこの言葉が飛び出しました。「原則」と言われても傍聴している人たちには、何を意味しているのかすぐには理解できなかったのですが、実は、昨年12月の政策検討会議で重要なことが確認されていました。「原案を全会一致でつくったのだから、今後修正にあたっても全会一致で行う」ということです。
今回の政策立案検討会議では、この「原則」が原因で、午前中の検討作業は50分ほどで休憩せざるを得ない事態に至ったのです。この「原則」なるものがあったため議論が紛糾し、ついに委員の一人が「大事なことが修正されないのなら、もうこんな会議に参加する意味はない、私が委員を辞退する」と発言し退席したため、午前中の協議が進まなくなったのです。そこに至る経緯を簡単に紹介します。
意見の対立は、一番初めの検討事項から始まったのです。それは、前文の冒頭にある「昭和20年8月6日」という表現に「西暦の1945年を併記してほしい」という市民の声に対する検討の時に起りました。賛成意見が多数だったにもかかわらず、反対の理由は違いますが3人の委員が強行に反対したため「併記しない」ことになってしまいました。その余韻が残ったまま、3項目の「広島市の都市像である『国際平和文化都市』を記述すべきだ」という声の検討に入ったのです。一人の委員から「広島市の基本なのに、なぜこの言葉が入れられないのか」と繰り返し厳しく意見が開陳されたのですが、結論は「意見が違うので原案のまま」と市民の声を取り上げようとする意見は取り入れられませんでした。ここで怒りが沸点に達し、前述のような事態になったのです。私もこのやり取りを聞いていて、「こんなことも修正できない検討会議って、何のために開かれているのだろう」と強く思いました。
それでも何とか午後1時から再開されましたが、当該委員は欠席との扱いでスタートしました。段落ごとの検討が始まりました。中には、私も「入れる必要はないな」と思わざるを得ない意見もありましたが、ただ一項除いて、いずれも「記入しない」「そのまま」の結論ばかりです。私も何時になく熱心にメモを取ったのですが、余りにもあきれる検討会議の論議でしたので、項目ごとの論議内容の紹介は省略します。唯一の修正は、第6段落の最初の文言「しかしながら、被爆75周年を迎え」という表現を「被爆75周年が過ぎ」に変更したことです。これは変更というより、時系列を考えれば、市民の声が無くても原案提示の時点で直しておくべきか所ですから、修正と言えるものではありません。しかし、この声に対しても、最初は反対意見があったことをぜひ紹介しておきます。
結局、前文に対し28項目を超え、多岐にわたって市民の意見が寄せられたのですが、その声は全く無視されてしまったということです。この「原則」がある限り、市民の声は取り上げられることは無理だろうと予測していましたが、残念ながらその通りの事態が進行してしまいました。議会にとって一番大事な「可能な限り市民の意見を尊重し、取り入れる努力をする」という姿勢が全く感じられないということです。
なぜ「修正しない」という結論が次々と出るのかです。その原因は、もちろん考え方の問題もありますが、私は、次回からの条文ごとの検討が念頭にあるからだと思っています。市民からの意見に対し賛成する委員がどんなに多数でも「原案の修正を認めるような妥協は絶対しない。譲らない」という姿勢を貫くことで、今後予想される検討事項の中でも、たとえ多数の賛同があったとしても、「全会一致が無い限り修正させることが出来ない」ということを実績として残した置く必要があったからに違いありません。次回の政策立案会議でそのことが証明されると思っています。
今回の検討状況を見る限り、残念ながら「原案が修正されることはほぼない」ことが予測できますが、県原水禁の意見がどのように扱われるかを見届けなければなりませんので、次回もきちんと傍聴しようと思っています。
いのちとうとし
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