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2021年3月11日 (木)

「広島市平和の推進に関する条例(仮称)」が残念な理由 ――国内他都市の条例と比較しても問題あり――

「広島市平和の推進に関する条例(仮称)」が残念な理由

――国内他都市の条例と比較しても問題あり――

 

広島市議会が検討している「広島市平和の推進に関する条例(仮称)」について、216日、217日、221日と取り上げましたが、その続きです。まず、条例の素案を読めるサイトはここです

 221日には、世界という舞台で「広島市平和の推進に関する条例(仮称)」がどんな役割を果すのか、特に世界からどのような期待を持たれているのかという視点からこの条例素案を取り上げました。今回は、日本国内の他の都市が、平和について、また核兵器の廃絶についてどのような条例を作っているのかを見てみましょう。スペースに限りがありますので、北から、苫小牧市、藤沢市、宝塚市と三市の条例をまず、読んでみて下さい。

Photo_20210310232101   

苫小牧市非核平和都市条例(平成14年4月1日公布)

 わたしたち苫小牧市民は、安全で健やかに心ゆたかに生きられるように、平和を愛するすべての国の人々と共に、日本国憲法の基本理念である恒久平和の実現に努めるとともに、国是である非核三原則の趣旨を踏まえ核兵器のない平和の実現に努力していくことを決意し、この条例を制定する。

 目的

1条 この条例は、本市の平和行政に関する基本的事項を定め、市民が安全で健やかに心ゆたかに生活できる環境を確保し、もって市民生活の向上に資することを目的とする。

 恒久平和の意義等の普及

2条 市は、日本国憲法に規定する恒久平和の意義及び国是である非核三原則の趣旨について、広く市民に普及するように努めるものとする。

 平和に関する交流の推進

3条 市は、他の都市との平和に関する交流を推進するように努めるものとする。

 その他平和に関する事業の推進

4条 市は、前2条に定めるもののほか、平和の推進に資すると認める事業を行うように努めるものとする。

 平和の維持に係る協議等

5条 市長は、本市において、国是である非核三原則の趣旨が損なわれるおそれがあると認める事由が生じた場合は、関係機関に対し協議を求めるとともに、必要と認めるときは、適切な措置を講じるよう要請するものとする。

 核兵器の実験等に対する反対の表明

6条 市長は、核兵器の実験等が行われた場合は、関係機関に対し、当該実験等に対する反対の旨の意見を表明するものとする。

 委任

7条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。

 附則

この条例は、公布の日から施行する。

  Photo_20210310232301

次に、藤沢市です。

○藤沢市核兵器廃絶平和推進の基本に関する条例

平成7330日条例第47

 (目的)

第1条 この条例は,藤沢市核兵器廃絶平和都市宣言(昭和57年藤沢市告示第29号)に基づき,核兵器廃絶を目指す国是としての非核三原則の厳守及び日本国憲法の基本理念である恒久平和の実現に関する基本原則を定め,もつて市民の平和で安全な生活の維持向上に資することを目的とする。

 (定義)

第2条 この条例において「核兵器」とは,核分裂,核融合又はそれらを組み合わせた爆発的原子核反応によつて放出される原子核エネルギーを用いて人間を殺傷し,又は器物,建造物若しくは自然環境を破壊するものをいう。

 (基本原則)

第3条 市は,第1条の目的を達成するため,不断の努力をするとともに,市民の協力を得て平和行政を推進する。

2 市は,市内での核兵器の製造,保有,持込み及び使用に協力しない。

3 市は,核兵器廃絶の実現に向けて国内又は国外の都市等との連携を深める。

4 市長は,3に定める事項の推進に努めなければならない。

5 市民は,1の目的を達成するため,自主的に平和に関する活動を行うとともに,第1項から第3項までに定める事項に関して積極的に協力するものとする。

(平和事業)

第4条 市は,前条の基本原則に基づき,次に掲げる事業を行う。

(1) 核兵器廃絶及び平和の意義の普及

(2) 核兵器廃絶及び平和に関する情報の収集及び提供

(3) 核兵器廃絶の実現に向けて他の都市等との平和に関する交流

(4) 前3号に掲げるもののほか,市長が必要と認める事業

2 市は,前項の事業の計画に当たつては,その基本的事項について市民の意見を聴くものとする。

 (委任)

第5条 この条例の施行について必要な事項は,市長が別に定める。

附 則

(施行期日)

1 この条例は,公布の日から施行する。

(藤沢市平和基金条例の一部改正)

2 藤沢市平和基金条例(平成元年藤沢市条例第23号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう略〕

  Photo_20210310232401

そして、最後に宝塚市です。

○宝塚市核兵器廃絶平和推進基本条例

平成15919日条例第35

 宝塚市は平成元年37日に「非核平和都市宣言」を行いました。「青くすみきった空、清らかな武庫川の流れ、緑あふれる六甲・長尾の山々……。この素晴らしい自然と明るくおだやかな暮らしは宝塚市民すべての願いです。このような私たちの願いに反し、世界では依然として、人類同士の悲しむべき争いが絶えず、しかも地球上の全生命を滅ぼすことのできる核兵器が蓄積されてきました。しかし、人類の平和への切実な願いが全世界に高まり、大きなうねりとなって、ようやく戦略核兵器の縮小や、各地域の紛争解決への明るい兆しが見えようとしています。私たちは、このようなときにこそ、戦争を、そして核兵器をなくし、世界の恒久平和を強く願わずにはいられません。ここに、宝塚市は憲法の平和精神に基づき、恐るべき核兵器の廃絶を願い、永遠の平和社会を築くことを誓い、「非核平和都市」とすることを宣言します。」と世界にむけて非核平和の決意を明らかにしました。

 このような認識の下に、市民と市が非核平和の基本原則を共有し協働して、市民の平和で安全な生活の維持向上に努めるため、この条例を制定します。

 (目的)

第1条 この条例は、本市の非核平和都市宣言(平成元年3月7日宣言)に基づき、市民と市が協働して平和で安全なまちづくりを進めるための基本的な原則を定め、もって市民の平和で安全な生活の維持向上に資することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「核兵器」とは、核分裂、核融合又はそれらを組み合わせた爆発的原子核分裂によって放出される原子核エネルギーを用いて人間を殺傷し、又は器物、建造物若しくは自然環境を破壊するものをいう。

 (基本原則)

第3条 市は、第1条の目的を達成するため、不断の努力をするとともに、市民と市が協働して平和事業を推進する。

2 市は、核兵器廃絶の実現に向けて国内及び国外の都市等との連携を深める。

3 市長は、2に定める事項の推進に努めなければならない。

4 市長は、核兵器の実験等が行われた場合は、当該実験等に対する反対の旨の意見を表明するものとする。

5 市民は、1の目的を達成するため、自主的に平和に関する活動を行うとともに、第1項から第2項までに定める事項に関して積極的に協力するものとする。

(平和事業)

第4条 市は、前条の基本原則に基づき、次に掲げる事業を行う。

(1) 核兵器廃絶及び平和の意義の普及

(2) 核兵器廃絶及び平和に関する情報の収集及び提供

(3) 核兵器廃絶の実現に向けて他の都市等との平和に関する交流

(4) 前3号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事業

2 市は、前項の事業の計画に当たっては、その基本的事項について市民の意見を聴くものとする。

(委任)

第5条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

附 則

この条例は、公布の日から施行する。

 

以下、コメントですが、もうかなり長くなりましたので、詳しくは次回にも続きます。

 まず、三つの条例とも似た形をしています。これは、平和推進条例だけに限ったことではなく、国が法律を作ったり、何かを推進しようとするときには、地方自治体に「ひな形」を示します。多くの自治体は、固有名詞だけを自分たちの自治体名にすればそのまま条例になるような「ひな形」を前に、ほとんどの場合、その通りのことをしています。とても「親切」ですね。とは言え、これでは「地方自治」ではなく、中央集権国家による自治体の「支配」なのですが、この点についてはまた別の機会に取り上げましょう。

 もっとも、平和推進条例の場合は、長い間の日本政府の方針とはちょっと違っていますので、これは国の方針として「ひな形」を作ったのではなく、全国的に「非核宣言都市」や「平和推進条例」が注目されていたときに、平和活動家や専門家が作ったものかもしれません。

 それはともかくとして、三つの条例に共通している事柄で、「広島市平和の推進に関する条例(仮称)」にはないものがいくつかあります。

 一つは、「憲法」という言葉、あるいは「非核三原則」という言葉です。条例が国のレベルでのどの法律に依拠しているのかを示すことは、条例の意味を明確にする上でとても重要です。それは、憲法94条があるからです。

 94条  地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

 そして、三つの条例のうち、苫小牧の場合には第5条で、「国是である非核三原則の趣旨が損なわれるおそれがあると認める事由が生じた場合は、関係機関に対し協議を求めるとともに、必要と認めるときは、適切な措置を講じるよう要請するものとする」とまで踏み込んで、仮に国が非核三原則に反する行為を取った場合には、「文句」を言うとまでは書いてありませんが、抗議の意思を示すと謳っています。

 藤沢市でも、第3条の2で、「市は,市内での核兵器の製造,保有,持込み及び使用に協力しない」と、非核三原則の遵守を国に求めています。

 それは、憲法99条の公務員の憲法遵守義務に従うという意思表示なのですが、地方公務員だけではなく、国家公務員、それも国会議員や総理大臣等にも同じ遵守義務があるという事実を国に対して突き付けていることでもあるのです。

 では、広島市の場合はどうなのか、スペースの都合で次回に回しますが、一言で広島市の条例をバッサリ切れば、憲法に関しては、国への「忖度」としか言いようがありません。

 [2021/3/11 イライザ]

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