ヒロシマとベトナム(その22-1)
なぜ、技能実習生は多額の借金?
―技能実習を希望する多くの若者―
2020年6月末時点、日本に暮らす外国籍の人は288万5,904人です。そのうち技能実習生は13.9%、40万2,422人です。ベトナム人技能実習生は21万9,501人と、半数以上を占めています。2015年の技能実習生数は18万1,436人でしたので、僅か5年間に2.2倍も増えたことになります。その中でもベトナム人技能実習生は4万5,144人から約22万人へと4.8倍と激増です。こうした傾向は、当分の間続くと思います。
同時点、広島県には5万6,229人の外国人が暮らし、技能実習生は1万6,912人、30%を占めています。広島県の技能実習生数は愛知県の4万923人、大阪の1万8,790人、千葉の1万8,790に次ぎ4番目に多い県です。ちなみに在住外国人に対する技能実習生の比率で見ると、広島県が30.1%で愛知県(14.8%)を大きく引き離し全国トップです。
ベトナムは近年高い経済成長(注1)を遂げているとはいえ、地方都市や農村部ではまだまだ働く場は少なく、賃金も高くありません(注2)。
そうした中で、「日本でお金を稼ぎ、家族を養う」「兄弟姉妹に学費を送る」、「お金を貯めて帰国したら家を建てる」「なにか事業を始める」、「日本語を身に付けて、帰国後、日系企業で働く」・・・・と、技能実習を希望する数多くの若者が多くいます。
(注1)20年余り7%前後の成長を続けているベトナム。「コロナ対策の優等生」と言われ、「コロナ禍」の2020年でも3%近くの成長を遂げています。
(注2)ベトナム労働総連盟が行った2018年の月平均賃金の調査結果では553万ドン(≒2万5,991円)です。
下表は在越日系企業178社を対象にしたベトナム人従業員の給与動向に関するアンケートです。数値はベトナム人の役職毎の給与額(中央値)ドンの推移、単位はKVND(×1,000)。日系企業に働く行員の2018年の月給(中央値)は5,838×1,000ドン=583万8千ドン≒2万7,437円です。
日本での技能実習を目指す場合、ベトナムにある送出機関(送出し業者)に登録し、その送出機関(送出し業者)の研修施設で日本語や日本の文化、マナーなどの入国前研修を6ヶ月間受けます。その間に技能実習生を受け入れる企業や仲介の管理団体の面接を受け、実習(就労)先の企業が決まります。そして、来日です。実習生は来日後すぐに技能実習(就労)先である企業に入るのでなく、日本語や生活に関する学習、日本に在留するための法律的な研修などを一ヶ月間受けます。その後、各企業での技能実習(就労)が始まります。
―ほとんどの実習生が100万円前後の借金を抱え来日-
その技能実習生のほとんどが、100万円前後の借金を負って日本に来ています。
日本語学習などの入国前の研修費用や渡航費から入国後1ヶ月間の研修費用など技能実習生の受け入れに係る費用は、すべて技能実習生を受け入れる企業が支払うことになっています。では、なぜ、技能実習生は多額の借金を負ってしまうのでしょうか。
―実習生の支払う手数料は3,600US㌦が上限―
日本で技能実習生の失踪や自殺などが大きく取り上げられ始めた2015年頃、ベトナムでは悪質な送出し機関(送出し業者)の摘発をはじめ是正が取り組まれました。2016年4月16日、所管の労働・傷病兵・社会省が、「日本へのベトナム人技能実習生送出し業務の運営是正策実施の継続について、派遣契約によりベトナム人労働者を海外に送り出す業務を実施する機関」宛てに次の様な通達を発出しています。
「技能実習生から徴収することができる費用」として、「3年契約の場合には3,600US㌦以下、1年契約の場合には1,200usドル以下により定められている手数料。送出し機関は実習生との契約を締結し、日本が在留資格認定証明書を発給した後にのみ、技能実習生から徴収できる。在留資格認定証明書が発給される前に、技能実習生から費用の徴収を行うことは、いかなる形においても厳禁とする。」と明記されています。
にもかかわらず、借金を負ってしまう構造的な問題は次回(3月7日)に述べたいと思います。
(2021年3月5日、あかたつ)
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