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2021年2月 4日 (木)

ヒロシマとベトナム(その21-1)

「妊娠禁止規定」は違法、日本人と同様に法律で保護されている技能実習生

2013年7月の富山地裁による「妊娠禁止規定」違法判決後も、なぜ、多くの技能実習生が「妊娠したら帰国させられる」という恐怖に縛られ、妊娠・出産に関わる「事件」が後を絶たないのでしょうか。前回(16日)にも書きましたが、技能実習の「契約書」や「同意書」に「妊娠禁止」を記載することはもちろん、妊娠を理由に技能実習を打ち切り(解雇)、本国に帰国させるなどは違法行為です。

来日後に妊娠が明らかになった場合でも、日本人と同様に労働基準法など労働関係法や男女雇用機会均等法によって保護されています。したがって、技能実習は継続でき、妊娠中は残業しないことや深夜・休日には働かないことを求めることができます。受入企業は、妊娠した技能実習生が重い物を持ったり、危険な作業に就かせることを禁じられ、産前産後の休暇や育児休暇の保障、有給休暇ではなく勤務時間中の妊婦健診を保障し、通勤ラッシュを避けるための時差出勤も認めなければなりません。

また、住んでいる自治体(市町村)から母子手帳の交付を受け、妊婦健診への補助、健康保険から出産費用を賄うための出産育児一時金(42万円)の支給、産前産後休暇中の賃金代わりとなる手当金も受けられます。

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ベトナム人技能実習生が迫られる辛い選択、日本の女性にも通じる映画『海辺の彼女たち』の場面。今春、各地で上映予定。

「法令等の周知義務」不履行と「法令遵守」の欠如

ではなぜ、技能実習生による妊娠・出産に関わる「事件」が後を絶たず、増えているのでしょうか。

それは、多くの技能実習生、いや殆どの技能実習生が「知らない」から、いや「知らされていない」からです。

労働基準法第106条には、労働者の権利及び義務をあらかじめ労働者に周知し、適正な労務管理と紛争の防止のため、法令の要旨、就業規則、各種労使協定などを掲示、備え付け、書面の交付などによって周知しなければならないという「法令等の周知義務」が明記されています。

政府には受入企業や管理団体が法律を正しく理解・遵守し、技能実習生に不利益な扱いを行わないよう指導・監督する責任があります。そして、受入企業や管理団体は、法令を遵守し技能実習生保護に努める責任があります。

ところが、政府が実習実施者(受入企業)や管理団体に対し「妊娠等を理由とした技能実習生に対する不利益取扱いについて」という「注意喚起」を発したのは、20137月に富山地裁が出した「妊娠禁止規定」違法判決から実に5年半後の2019311日です。それは、前回紹介しました立憲民主党・阿部知子衆議院議員の「外国人技能実習生に対する妊娠禁止規定は民法違反とした判決があること等に関する質問主意書」に対する「答弁書」が出された28日の直後のことでした。

こうした日本政府の認識の欠如と緩慢な対応、法令を遵守せず人権を無視した就労を強いる受入事業者の存在が、技能実習生の妊娠・出産に関わる「事件」の増加につながっているのです。

遅れている行政サービスや市民的権利の情報提供

では、技能実習生が居住し、実習職場がある自治体の対応はどうなのでしょうか。

技能実習生は日本に入国後、一定の研修期間を終えた後に受入企業(実習実施者)のある市町村に転入届けを出し、当該自治体の市民になります。国民健康保険(もしくは実習実施機関の健康保険)に加入し、2年目からは住民税も納めます。毎月の賃金から源泉徴収もされます。そして、先に述べたような母子手帳の交付や妊婦健診、出産育児一時金などの行政サービスを受ける市民的権利を持ちます。

ところで、文化・生活習慣が異なり、立ちはだかる「言語の壁」の下で、こうした市民的権利に関する行政情報に技能実習生はアクセスできるのでしょうか。近年、道路標示や様々な案内板の多言語化、「やさしい日本語」による情報提供や翻訳ソフト活用などの改善は進められていますが、技能実習生にとって重要度の高い労働者保護や市民的権利に関する情報提供は非常に遅れているのが実態です。

その大きな原因は技能実習制度の主体が国にあるために市町村では受入企業が把握されておらず、適宜必要な情報を提供したり、健康や生命、人権などに関わる重要な行政サービスを提供することも困難な状況にあることです。

今から新型コロナ感染を防ぐためのワクチン接種が始まりますが、各市町村は外国籍市民を含め全住民へのワクチンに関する情報とともに予備検診、接種日時・場所の周知、クーポン券の送付などの準備を進めなければなりません。特に他の在留資格の外国籍市民と比べて、日本での生活に馴染みが薄く、「言葉の壁」を含め情報へのアクセス力が著しく弱い技能実習生の場合、住民基本台帳に基づく送付だけでは、正確な理解と対応は難しいと思われます。

技能実習先である受入企業や管理団体との密接な連携があってはじめて安心で安全なワクチン接種が行われるのであり、各自治体は様々な工夫を凝らして正確な情報の提供とホロー体制を急ぐ必要があると思います。

(2021年2月4日、あかたつ)

<編集後記>あかたつさんから、2回分の原稿を送っていただきましたので、今日と明日連載します。

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