ベルリン・ミッテ地区の「少女像」撤去問題―ドイツ国内では
昨日の中国新聞6面(国際ニュース)の中央部やや下段に、「少女像設置『当面認める』 撤去要求のベルリン・ミッテ地区」の見出しが書かれた写真入りの囲み記事が掲載されました。
詳しくはこの記事を読んでほしいのですが、ドイツのベルリン市ミッテ地区の公有地に設置された旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する「平和の少女像」を、「14日まで」とした撤去期限を前に「当面は認める」と区長が方針を変更したことを伝えています。ミッテ地区は、国会議事堂はじめ連邦政府、ほぼすべての大使館などが立地するベルリン市の中央に位置する場所です。
ミッテ区長による「撤去命令」が出されて以降、私の受信メールにも何通も「日本国内でも署名を集める」ことへの協力を求めるメールや情報が届いていました。気になりましたので、「ドイツ国内での関心はどんな様子だろうか」と、いつものように、ドイツ・ベルリン在住の福本まさおさんに情報提供をお願いしていました。新聞記事とタブらないように、福本さんからの情報を紹介したいと思います。
第1報は、10月12日です。
「今回平和の少女像が設置できたのも、その趣旨に区長(緑の党)が賛同したからでもあると思っています。ただ平和の少女像設置で、韓国と日本に見解の違いあることがわかって、そういういざこざに巻き込まれたくないというのが区長が撤去を求めた背景だと思われます。・・・日本政府が、慰安婦問題を戦争における女性問題としてではなく、単に第二次世界大戦における日本と韓国の見解の相違の問題だけだとして説明したのだろうと想像できますがね。
ただドイツの市民ではどうかというと、左派系の新聞は取り上げていますが、その他ではニュースにもなっていません。慰安婦問題では、以前ベルリ在住だった矢島さんの写真展等があれば、政治誌などで取り上げられてきたわりには、今回関心がないように感じます。」「緑の党本部も、この件で反応していないと思います。この問題では、日本人女の会も積極的なのですが、賛同署名を求めるメールもきてませんね。なぜなのかわかりませんが。聞いてみようとは思っていますが。」
この時点では、市民の関心はあまり広がっていなかったようです。このメールに対し、「マスコミはどうですか」と問い合わせたところ翌日(10月13日)次のメールが届きました。
「一般紙でもこの問題取り上げられるようになってきましたね。地元紙の一つは、撤去命令を撤回すべきと論調しています。ベルリンの芸術家の団体も抗議しています。少女像のある地域の市民団体も、抗議の公開書簡に賛同しています。ちょうど公園のある角にあって、市民の憩いの場になりつつあるようです。区長は緑の党ですが、党内でも問題になってきたようです。」
次に送ったメールは「ドイツ政府はどう考えているのですか」の問いです。その返事がすぐに返ってきました。
「ドイツ政府はなにもいってません。日本政府からの要請をベルリン市に伝え、ベルリン市が少女像のあるミッテ区に伝えた感じですね。・・・ドイツ政府もベルリン市も、日本政府の要請を管轄の自治体に伝えましたよということで、やることはやった、でも実際にどうするかは、われわれは知りませんということにするのだろうと、小生は想定しています。・・・昨日のデモには、平日の昼でしたが、300人くらい集まりましたかね。韓国人が中心でしたが、ドイツ人も集まっていました。」
福本さんの見解が続きます。
「小生も、コリア協議会は少女像を撤去すべきではなく、そのまま放っておいたほうがいいと思っていました。それでも、区は強制撤去しないだろうと。もし強制撤去したら、問題がさらに大きくなります。それで日本政府がまた横槍を入れてきたら、ドイツ社会で日本政府の醜態ぶりがより明らかになるだけです。また、慰安婦問題がよりドイツ社会で知れ渡ることにもなります。そのほうがより効果的ですがね。でも、少女像はそのまま残ると思います。今回の日本政府の対応は、ドイツ社会に慰安婦問題をより広め、日本が戦後処理していないことをよりはっきりさせただけではないですか。」さらに「裁判所も撤去せよとはいわないので、像の保全を求めるのではないかと想定しています。民主国家では、言論の自由は守られます。それを国家権力で押しつぶしてはなりませんよね。それと、日本政府の横槍は内政干渉といわれても、おかしくありません。ドイツ政府が慰安婦問題で独自の見解をもってもいいわけです。」
福本さんの情報によって、徐々にベルリン市民の関心が高まったことが分かります。そして「当面認める」方針になったようです。
調べてみると、ベルリンの像は、ドイツで3番目、公共の場所では最初です。2017年にドイツ国内バイエル州に設置された「少女像」は、私立公園「ネパール・ヒマラヤ・パヴィリオン」内の一角に設置されたのですが、この時も日本領事館が、公園所有者に面会し直接「像の撤去を要求した」ようです。しかし、公園所有者から「像の撤去に応じる考えがない」と表明されてしまったそうです。
事の発端は、日本政府による横やりです。改めて私たち自身の課題として問いかけられている問題として考えなければならないと思います。
いのちとうとし
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