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2020年10月28日 (水)

「ヒロシマ」を訴えた石田原爆訴訟

広教組には、「石田原爆訴訟資料」の第一集から第五集、そして「判決」の六分冊が揃っています。ここには、石田原爆訴訟の公判記録の全てが収集されています。第二集から第四集には、第6回口頭弁論から第15回口頭弁論で行われた「証人尋問」の全発言が記録されています。このことが確認できましたので、この3冊をすぐに購入しました。

この3冊は、全て被爆者、医者、厚生省の役人、科学者などなど多彩な証人による陳述と尋問です。その人数は、13人です。現在の裁判ではとても考えられないほど多くの証人尋問が行われたこと、そして十分な時間をかけて、ていねいに行われたことがわかります。いま裁判は、全てと言ってよいほど「準備書面」という文書のやり取りで進行します。例えば石田原爆訴訟では4人の被爆者が証言台に立っていますが、文章だけでなく、その人の声の抑揚、表情と向き合うことなくして被爆者の真の声を受け止めることはできなかったでしょう。

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石田原爆訴訟の勝訴を喜ぶ被爆者・支援者(中国新聞社刊「ヒロシマの記録」より)

石田先生は、1998年に発刊された自著「ヒロシマを生きて」の中で、この時のことをこう振り返っています。「富永初子さんの法廷での姿は忘れられません。富永さんは当時64歳という年齢だったのに体はすっかり弱り、両眼も原爆白内障のため失明寸前でした。それにもかかわらず杖にすがり、介添人に支えられながら法廷に足を運んでくれたのです。」と。

裁判進行の話が長くなりました。この裁判での石田先生の陳述に戻ります。石田先生は、原告の最終弁論で次のように述べています。ここでも自作の詩から始まります。

「お前の目は/ お前の目は/ にんげんの あすへ/ ヒロシマを語る目/ もとの目に/ すみきった目に/ 返してもらえ/ お前の目を/ お前の目を/ 黒くこがしたのは だれ/ そのだれかを/ とらえてもらえ/ にんげんが 生きるために/ 平和と真実を徹す  その目で」

石田先生が最後に改めて訴えたことは、五つのことですが、そのうち三つを紹介します。

「第二には、ヒロシマ、そして、被爆者が明日の世界と歴史に向けて、今なお、訴え続けていることはなんであるかくみ取ってください。被爆者の生きることの意味を。

第三は、本訴訟の判決を通して、いのちの尊厳性の内実を明らかに教示してください。

第五は、ヒロシマをくり返させないためにこそ、わが国の原爆被爆者行政の真のあり方は、どうあらねばならないか、その姿勢内容を明らかにしてください。」そして最後に「わたしの目に、生涯にわたる光を、ヒロシマを原点として、人間の未来に生きる光を与えてください。そして、生きることによって、また、生き残った人間のつとめである『ヒロシマをくり返すな』と証言台に立ち続けっせて下さい。ヒロシマをくり返さぬ人類と世界史のあしたへ。」と訴えて陳述が終わりました。

この陳述を読みながら、改めて石田先生がカタカナの「ヒロシマ」にこだわり続けた思いを認識することができました。そして、この「ヒロシマ」から学び、それを人間の普遍の原理にと願って生まれた言葉が「ヒロシマの心」です。石田先生は、「『ヒロシマの心』それは、生命の尊厳と平和を求める心です。人間の未来が平和で、豊かで、夢多きものであることを願う心です。ヒロシマはその心を人間不変のものとするために、原爆地獄の苦悩と憎しみを乗り越えて訴えてきました。」と「ヒロシマを生きて」の中で短く解説されています。

国の戦争責任、原爆被害の特殊性を認め、「原爆医療法は、国家補償法の側面を持つ」とし「認定申請を却下した処分はこれを取り消す」。三年間にわたった石田原爆訴訟は全面勝利で決着しました。この勝訴判決は多くの被爆者を勇気づけるものとなりました。しかし今もなお、石田原爆訴訟の判決を無視する被爆行政が続いている現実があることも忘れてはならないことです。

「石田原爆訴訟」関連の資料を入手することができたこれを機会に、改めて「被爆教師」や「ヒロシマを生きて」を読み直し、石田先生が訴え続けてこられた「ヒロシマの心」を学び直したいと思っています。

いのちとうとし

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