広島高裁、朝鮮学校広島無償化裁判で不当判決
昨日午後3時、広島高裁302号法廷で、朝鮮学校無償化裁判の控訴審判決が言い渡されました。判決は、広島地裁での原審を支持する「控訴人側敗訴」とする不当判決でした。
午後1時15分、広島弁護士会館に集合した弁護団、原告、保護者、支援者など約150名が、横断幕を掲げ、法廷入りをしました。裁判所前には、多くのマスコミ関係者が待機し、法廷入りをカメラや写真に収めていました。
コロナ下の裁判ということで、広島高裁では最も大きな法廷が使われましたが、用意された傍聴席はわずかに16席しかありません。傍聴券を求める人は、196名に達し、長蛇の列となりました。
抽選の結果、私は入廷することができず、他の支援者と共に裁判所入り口で、判決を知らせる旗だしを待ちます。開廷後しばらくすると、2名の弁護士が旗をもって出てきました。しかし、出された旗には「不当判決」「子どもたちを司法がみすてた」の文字が書かれています。見守っていた支援者から、厳しい声が飛びます。涙を流す人の姿もあります。「不当判決は許さない」「われわれは戦うぞ」のシュプレヒコールの声が上がります。
午後4時から弁護士会館で、弁護団による記者会見です。最初に平田弁護士が判決の要旨を紹介し「弁護団の主張がすべて退けられ、原判決を容認するばかりでなく、原判決では曖昧あった部分をさらに穴埋めして、強化するという不当極まりない判決。全く本質を見ていない」と厳しく指摘。
続いて足立弁護団長が「極めて残念な判決。9回の口頭弁論、その中では地裁審理で認められなかった原告、証人尋問が行うなどの訴訟指揮は、われわれに期待を持たせたが、見事に裏切られた。」と報告。朝鮮学校の前校長で現理事長の金さんは「怒り、憤り、悔しさ、残念との思いが募る。原告・証人尋問も原審でやっていないからやったというだけなのか。3年間は無駄な時間を過ごしただけ。司法も行政も同じ判断しかできなくなっている。少数者の意見を無視してもよいとなっていのではないか。しかし、決して下を向きません。」と怒りと共にこれからも戦い抜く力強い決意の表明。
保護者の原告代表の朴さん。「またか、と空しさを覚える。この10年間で、朝鮮学校は138名も生徒が減少しています。そのほとんどが経済的な問題です。74年の歴史を誇る朝鮮学校を存続させることができるのかと不安な状態が続いています。朝鮮学校・ウリハッキョをつぶそうとする動きに他なりません。朝鮮学校だけを公的助成から排除することは、民族教育の権利を否定するばかりでなく、在日朝鮮人は差別されてもしかるべき存在であり、ひいては国の意に沿わない者は差別してもよいという悪しき風潮を国が煽ることに他なりません。」厳しい言葉での挨拶です。そして「日本に暮す朝鮮人として堂々として胸をはり、日本と朝鮮の架け橋となる人材を育てる広島朝鮮初中高級学校のサポーターとして、この闘いに勝利し、子どもたちの未来が明るく輝き楽しく学校生活が普通に遅れる、その日を引き寄せるために一致団結して闘います。」と決意を述べました。
午後6時30分からは、朝鮮学校の講堂に場所を移し、「報告集会」が開催され200名を超える人たちが、全国から応援に駆け付けた人たちとともに、改めて決意を固めあいました。
私がこの判決を聞いて思ったことはただ一つです。「裁判所も差別者となってしまった」ということです。2017年7月19日の広島地裁での不当判決後、3年間毎月続けられた19日行動。私も何度か参加しました。一人ひとりの生徒たちが、マイクを握り声の限り市民に訴えった姿を私は忘れることができません。
この裁判で問われたことは、高校無償化法の法律の解釈の問題ではありません。その本質は、朝鮮学校に通う子どもたちだけが、どうして差別されなければならないのか、差別が許されてよいのかを問うものだったはずです。差別が厳しく問われる今、この厳然として、政治によって、大人によって平然と行われた差別が許されるのかどうかが問われた裁判だったはずです。しかし、今回の広島高裁の判決は、その問いに答えるものとはとても言えません。この明らかな差別と向き合わないということは、司法自身が差別者となったことを意味するのです。
「行政の側にのみ目を向ける」司法判断が続いている現実がありますが、昨日の判決は、法解釈を捻じ曲げた不当判決に留まらない許すことのできない差別者の、差別を助長する判決だったと私は声を大にして訴えたいと思います。
いのちとうとし
〈訂正〉保護者の原告代表の朴さんの発言を「記者会見の場」としていますが、正しくは「報告集会」でした。読者からの指摘をいただきました。ありがとうございます。
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