「原爆被爆二世国家賠償請求訴訟」が8カ月ぶりに開廷
昨日、広島、長崎の被爆二世が2017年に、日本政府が「被爆二世」対策を全く置き去りにしていることに対し「損害賠償」を求めて提訴して始まった「被爆二世裁判」の第11回口頭弁論が、8カ月ぶりに広島地裁で開廷しました。
昨日の公判は、裁判官の交代後初めてとなったため、「弁論更新」の手続きが取られ、原告側から原告1名、弁護士1名が意見陳述を行いました。
原告代表の角田拓さんの意見陳述は次のような内容でした。
「2018年、ジュネーブで行われたNPT再検討会議準備委員会からの帰りに列車の中に届いた妹のメールで『姉が肺腺ガンで全身に転移しており、ステージ4、余命五ヶ月の宣告を受けた』ということを知った。」そして告知から一年以上たった7月にお姉さんが亡くなるまでの間、被爆者であるお母さんにどう伝えるのか苦悩した時のことが、時に声を詰まらせながら陳述されました。この経緯は聞く者の胸を打たずにはいられません。そして角田さんは訴えます。
「私には一生忘れることはできない、私は死ぬまで抱え込んでいかなければならない。
病気と闘った姉の不安、苦しさ、体のつらさ。子どもを自分より早くなくした、しかも被爆者であるが故の母の、これからも続く苦しみ。母や姉のことを思いながら迷い続け、そうした中ふと湧き上がる自分の体への不安。
被爆二世として私は自分自身の健康不安は言うに及ばず、兄弟や両親のことも向き合いながら生きていかなければならない。この苦しみはすべてあの日広島に落とされた一発の原子爆弾に始まる。」「 私たち被爆二世は紛れもなく原爆による被害者です。その影響から一生逃れられないのです。」と。
報告集会の弁護団
次に在間秀和弁護士の意見陳述です。
在間弁護士は、「被爆者援護法1条の『被爆者』の定義の3号では、『原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情にあった者と規定』されている」ことを強調し、「原爆の放射線被害を受けたことが証明された者が被爆者として定義されているのではない」ことを主張。特に、今年7月29日広島地裁の「黒い雨訴訟の判決」を引用しながら、そのことを補充しました。続けて「原爆症認定訴訟、在外被爆者訴訟、被爆体験者訴訟、黒い雨訴訟などなど、被爆関連訴訟で国が相次いで敗訴してきた」ことを強調し、「それにもかかわらず従前の姿勢を改めようとしない」国の対応を批判しました。最後に「国の立法不作為」を指摘するとともに「裁判所においては、原告ら被爆二世が、これまで放射線被害の恐怖を覚えながらどのような状況に置かれてきたのか、そして何故訴訟に踏み切らざるを得なかったのか、真摯に事実に向き合ってほしい」と訴え、意見陳述が終わりました。
この間原告側は、自らの主張を述べた2通の準備書面を提出しました。
「原告ら準備書面7」は、被爆二世である原告25人一人ひとりが、それぞれ置かれている立場を述べた「意見陳述書」を要約したものです。
「原告ら準備書面8」は、これまでの被爆二世問題の歴史「被爆二世に対する援護措置の要求の経緯と国側の対応」について、詳細に記述したものです。加えた、国が被爆二世対策を置き去りにする中で、地方自治体が独自に取り組んでいる被爆二世対策の実情が詳しく述べられています。この「準備書面8」を作成するための資料は、全て原告自身の手によって作成されました。これは意見書として裁判所に提出されています。
裁判官から、「準備署名書面に対する反論」を求められた国の代理人弁護士の答えは、驚くことに「反証はしません」との一言でした。一人ひとりの原告が、それぞれの生き様を訴えるため苦悩しながら作り上げた意見書に対し、全く向き合おうとせず、無視する姿勢には、改めて強い怒りを覚えました。
公判終了後は、弁護士会館での報告集会。今回は小さな法廷ということで、傍聴できなかった人も多く出ましたので、熱心な意見交換が行われました。
次回の公判は、来年1月19日午後1時30分から開廷することに決まりましたが、原告弁護団は、12月下旬までに「放射線被害の遺伝的影響」を立証する準備署名を提出することになりました。
いのちとうとし
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