「高暮ダム朝鮮人犠牲者追悼碑」前―高暮平和の集い
8月30日、庄原市高暮(旧高野町)に建立されている「高暮ダム朝鮮人犠牲者追悼碑」前で、今年で24回目となる「高暮平和の集い」が開催されました。
地元高暮の草谷末広さんの司会で始まった集いは、最初に参加者全員による1分間の黙祷。今年の黙祷は、高暮ダム工事で犠牲となった人たちとともに、今年3月に90歳で亡くなられた李実根さんの冥福を祈る黙祷となりました。
地元町内会代表のあいさつに続いて、広島県朝鮮人被爆者協議会金鎮湖理事長が「李さんが願っていた朝鮮半島の統一はいまも実現していません。李さんは、朝鮮人被爆者の権利拡大のため、5000回にも上る証言活動によって訴え続けてこられました。このことは決して忘れず、引き継がなければなりません。安倍首相の辞任表明がありましたが、安倍政権ほど朝鮮民族にとって悪い政治はありませんでした。」とあいさつ。
続いて、朝鮮式儀礼・チュサ(祭祀)が行われました。何人かが、このチュサの儀礼を行いましたが、その中に李実根さんの妻朴玉順さんの姿があります。
朴さんは、李さんが健在なころには何度もこの平和の集いに参加されたそうですが、「李実根が亡くなった今年は、ぜひ参加したいと思い、久しぶりに参加することができました」と話されていました。
チュサが終わると、若者による平和の誓いです。最初は、広島朝鮮高等学校1年生の二人。「植民地政策の犠牲になった同朋に日本政府は、補償どころか謝罪もしてこなかった。在日朝鮮人に対する蔑視と差別はいまも続いている。誰もが平和で幸せに社会を日本のみなさんと力を合わせて作りたい」とハングルと日本語で誓いました。続いて、広島地区高社協・広島高校生平和ゼミナールの代表が「本当の歴史を学ぶことが大切」と平和の誓いを述べました。例年は、多くの朝鮮人、日本人の高校生が参加しますが、今年はコロナの影響で朝鮮高校からは5名、高校生平和ゼミナールから代表1名の参加となりました。
ここからは、吉川徹忍さんの読経の中、参加者全員による献花です。
お花は、地元にみなさんに準備していただいた「ムクゲ」です。ムクゲは、朝鮮半島で最も大切にされている花の一つです。
全員の献花が終わると、最後に「アリラン」を合唱して、碑前での集いは終了しました。
その後、参加者はダムの堰堤に移動し、四車ユキ子さんのお話を聞きました。
中学校の教師時代から「高暮ダムの歴史」の掘り起こしに参加されてきた四車さんは、例年は、この場で参加者に高暮ダムの歴史について詳しく話されますが、今年は猛暑ということもあり、短めの話となりました。しかし、「朝鮮学校の生徒がこの堰堤に立つとき、『私の祖父がこの堰堤の底に眠っているかもしれない』と靴を脱いだことを紹介したところ日本人の子どもが靴を脱ぐかどうか迷った時に父が『靴は脱がんでもいいが、心の靴は脱いで渡れよ』と言った」という「心の靴を脱いで」と題した話は、今年もされました。
「高暮ダム朝鮮人犠牲者追悼碑」前での行事は、すべて終了し、旧高暮小学校を活用した「ふるさと村高暮」に全員が移動し、ここで「追悼碑」建立のために尽力された旧高野町長田中五郎さんのお話を聞き、全ての行事は終了しました。
李実根さんが、初めてこの高暮の地に足を踏み入れたのは、1975年9月5日。それ以来、地元の人たちとも協力して、高暮ダム建設における朝鮮人強制労働の実態が掘り起こされ、その後多くの人たちの努力によって1995年5月に高暮ダムの堰堤が間近に見下ろせるこの地に「高暮ダム朝鮮人犠牲者追悼碑」が建立されました。李さんの努力なしには、実現しなかったことです。
最後に碑の裏面に刻まれた文章の一部を紹介します。
「われわれは、過去の日本が行ってきた朝鮮半島の植民地支配が、このような悲劇を生んだことを反省するとともに、日本とアジアの平和を守る決意を新たにし、日本と朝鮮の両民族の変わらぬ友好を誓うものである。」
碑が建立されて35年が過ぎましたが、果たしてこの誓いはどれだけ実現しているでしょうか。そのことを改めて反省させられることになった今年の「高暮ダム朝鮮人犠牲者追悼碑」前「高暮平和の集い」でした。
いのちとうとし
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