第6次エネルギー基本計画の議論が始まった
7月1日、経済産業省で「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」が開催され、第6次エネルギー基本計画の改訂に向けての議論が始まりました。来年のたぶん夏頃の閣議決定に向けて、この年末から本格的な議論が始まります。
これまでこの分科会の会長をしていたのは、東レ会長を務めながら日本経済団体連合会(経団連)の榊原定征(さかきばら さだゆき)会長でした。しかしいくら何でも、このたびあの不正事件を犯した関西電力の会長に就任したばかりの人物で、引き続きは世論が許されないだろうと、白石隆(しらいし たかし)熊本県立大学理事長に交代しました。分科会委員は20名、委員の顔ぶれは榊原前会長で想像できるように、言い回しに多少の違いがあるものの原発推進です。
7月1日の会合は、オンラインによる参加者を含め開催されました。
オンラインで参加する杉本達治福井県知事(福井県ホームページより)
この度のエネルギー基本計画については最初の会合ということで、資源エネルギー庁職員の概要説明の後、新委員の自己紹介、その後各委員から自由な発言が行われました。その発言の内容から、この度のエネルギー基本計画で議論の焦点になるだろうと思われる事を考えてみました。様ざまな視点から原発の再稼働、新増設、リプレースの必要性が発言されています。
順不同で書くと次のようなものです
・原発規制のあり様が厳しすぎる。見直しが必要だ。
・電源三法交付金について、原発の廃止措置期間中も廃炉前の水準にするな どの措置が必要。
・国民理解を得るためにも、立地や廃炉について見える化に取り組む必要がある。地域社会との連携が重要。
・パリ協定目標達成に向けて原発の活用は不可欠。二酸化炭素を出さない原発は必要だ。
・原発技術の技術基盤を維持していくには、人材育成が重要。
・再稼働・安全投資へのインセンチィブ作りが必要。新設炉の原発審査体制構築が急務。
・リプレース、核燃料サイクルを含めて正面から議論を行う必要がある。
・アフターコロナについて、居住地選択の多様化が進むと考える。自己完結型エネルギー需給構造が求められるところもあり、大規模集中型と小規模分散型の両立が今後の課題。
という具合です。
一番多かった発言は、日本への脱炭素化という世界的な要請の中で、原発が必要だというのが目につきした。議事録をじっくりと読んでいると、俳優の石坂浩二が使われている電気事業連合会の“「環境にやさしいエネルギー」といえば、何を思い浮かべますか。 発電時にCO₂を出さないのは、「再生可能エネルギー」と「原子力」です”の新聞広告が目に浮かびました。
想定される審議の最大の焦点は●新増設(原発比率)だと思います。
その他には
• 40年超の原発運転。
• 「原子力産業イノベーション」の実現。
・安全性向上の技術開発・導入促進、革新的原子力技術開発の推進
・原子力産業の維持・強化・革新。
• 持続的なバックエンドシステムの確立。
・中間貯蔵、再処理、プルトニウム利用。
・放射性廃棄物の最終処分に向けた取り組み。
私は、その他に次の課題についても議論される必要性があると思っています。
- 電力システム改革が完了したことによる、その後の改善課題として
▶広域的運営推進機関の在り方
▶新電力会社の保護対策
▶発送電分離の今後(法的分離から所有権分離への移行、各種市場の公平、公正性の確保)
- 原発40年運転の厳守。
- 原発事故時の避難問題と30㌔自治体と電力会社との安全協定締結の義務 化。
- 原子力規制委員会の権限および独立性の強化。
- 石炭火力発電の廃止に向けた工程の提示。
【私たちの取り組むこと】
何よりも私たちの側からの、「私たちの、エネルギー基本計画」を策定することが重要ではなかろうかと思います。コンパクトで分かりやすい物を作ることを提案したいと思います。この取りまとめは、原子力資料情報室、原水禁、原子力市民委員会でリードを取ってもらいたいのです。この「私たちの、エネルギー基本計画」を国が定めようとしている「第6次エネルギー基本計画」と対峙させて議論をすることを提案したいと思います。
また、2012年の民主党政権のときの「革新的エネルギー・環境戦略」議論で行われた、全国各地での討論会を開催することも提案したいのです。
政治(国会)が原子力を止める。機会あるごとに脱原発派の議員を増やすこと(統合される予定の立憲民主、国民)での「原発ゼロを目指す」の綱領案を言葉だけにしないこと)。その為には、地元選出の議員に要請する行動が必要だろう。もちろん自治体議員への働きかけも重要です。
その他、・エネルギー基本計画の問題点、重要性 課題などについての、大小様ざまな形での学習会・街宣行動などを集中的に開催する。・コロナ禍での島根原発避難計画の問題点を指摘し追究する。・新聞投書などを活用することです。
18年に決定された第5次エネルギー基本計画の審議の中では、経済団体や原発立地自治体などから原発新増設の強い圧力が、この分科会に掛けられたといわれています。しかし新増設を入れられなかったのは、「原発はいらない」という世論の大きさでした。「新増設には触れない」だけでは、40年近くも上関原発を建てさせないために戦っている、地元の人たちをはじめ多くの人たちは救われません。
様ざまな取り組みが、脱原発社会へ向かう一歩だという確信を持つことが重要でしょう。勝負に勝つために一番大切なこと、それは「勝つんだ」という気持ちを持ち続けることだと私は思うのです。それが最大の武器ではないでしょうか。
木原省治
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