「黒い雨」判決の意味するもの
例年の「8・6」と様変わりして、オンラインを使っての集まりが多かったのですが、「友有り 遠方より来たる 亦 楽しからずや」で、大いに語りあって、とても有意義な時間を過ごすことができました。
今の大きな関心事は7月29日に広島地裁が下した「黒い雨」訴訟について、被告である広島県・市が控訴するかどうかということです。8月8日の中国新聞は一面に「控訴検討」と書いていました。
控訴期限は12日、判決が示した拡大された「黒い雨」地域に住んでいる被爆者の人だけの問題なら、「人道上の…」などの理由を言って、「控訴しない」との「政治判断」を、支持率が低下している安倍晋三首相の「英断」によって行われるかも知れませんが、今日(8月9日)の時点では、結論が出ていません。
この裁判の結論は、単に原告の方だけでなく原発問題などにも大きな影響を与えます。
その影響とは、被曝線量基準、内部被曝の問題に関することです。具体的には福島原発事故で避難地域になっている自治体に対し、国が強引に進められている「帰還を進める」政策に大きく影響してくるからです。結果、賠償問題にも波及します。
裁判の中で争われた主な主張の部分を、新聞記事により再現してみたいと思います。(被告については、実質的には国ですが、訴訟に忠実に広島県・市としました)
被告(広島県・市):「100㍉シーベルトを下回る放射線に被曝した場合に健康被害が発症するかどうか定かでない」
原告(「黒い雨地域」住民):「残留放射線による内部被曝は、実効線量(シーベルト)によって人体に影響があるかを評価できない」
被告(広島県・市):「黒い雨に必ず放射性微粒子が含まれているという科学的根拠を欠く」「(内部被曝の影響については)論ずるまでもない」
中国新聞 2020年7月30日より転載
また、この判決は長崎の被爆者によって第3陣の裁判として起こされている「長崎被爆体験者訴訟」にも、良い影響を与えるものと期待しています。この訴訟は南北に長く東西に短い(南北12キロ、東西7キロ)という、長崎市の線引きの主に東西の外側に住んでいた人について、被爆者として認めるようにと求めている裁判です。
広島地裁の全面・完全勝訴判決について、8月3日、長崎被爆体験者訴訟原告団は「国が線引きした援護区域の妥当性を否定し、救済の道を開いた」と評価した上で、国や広島、長崎両県などに対し、手帳交付の要件となる援護区域の抜本的な見直しなどを求めた要望書を、関係する行政機関に送付しました。
訴訟の原告団長である岩永千代子さんは「希望を持って広島の人たちと手をつなぎ、私たちは被爆者だと訴えたい」と話したと、地元新聞は報じていました。
広島市長の発する平和宣言では、日本政府に対して「黒い雨降雨地域を拡大」をいいます。しかし裁判の場では被告となり、「現在の区域の指定範囲が不合理とはいえない」と主張します。原爆被爆者援護法による、「法定受託事務」として仕事を代行しているのだからという主張は、まさに「ねじれ」としかいえません。広島市としての自主性が感じられません。
現に東京都は被爆二世への医療保証を、都独自の施策としてやっているからです。要は本気で「被爆者の立場に立つか」の問題だと思うのですが。
木原省治
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