持明院にある市女の慰霊碑―フィールドワーク余話
真言宗のお寺持明院は、太田川左岸川土手の道路を高陽方面に北上し、安芸大橋の手前を下ってすぐのところにあります。
以前にも触れたことがありますが、今年の原水禁大会の企画の一つに、広島のフィールドワークがあります。その一カ所に、平和大橋西詰の平和大通りにある「広島市立高女原爆慰霊碑」を選びました。その事前学習のため、広島舟入・市女同窓会が2015年に発刊した「証 被爆70周年慰霊の記」(以下「証」と略)を読んでいると、広島市立高等女学校(以下「市女」と略)の慰霊碑がもう一つあることを知りました。気になっていましたので、訪ねることにしました。
「証」には、被爆から一周忌にあたる1946年8月6日に、旧中島地区の材木町にあった西福院に木碑の市女の「供養塔」が建立され、その「供養塔」前で学校主催の慰霊祭が行われたと書かれています。西福院は、「原爆当日、生徒たちが建物疎開で朝礼を行った」場所とされています。そして翌年から毎年8月6日には、慰霊祭が行われます。1950年には、西福院が都市計画で百メートル道路の一部となったため、すぐ近くの木挽町にあった持明院に移され、学校主催の追悼会が行われました。その年、「市女遺族会」が結成され、次年までに「供養塔」の建設と7回忌を盛大に行うことが決まります。
旧中島地区の地図(「証 被爆70周年慰霊の記」より)
一方で1948年には、学校内に「慰霊碑」(最初は「平和塔」の名称)が建立され、それ以降、学校主催の「慰霊祭」は、この碑の前で行われることになったようです。この碑は、1957年に現在地の平和大橋西詰に移転され、毎年8月6日に「慰霊祭」が行われています。1981年からは、舟入市女同窓会主催の慰霊祭となりました。
一方で遺族会によって、1951年に持明院に移された木碑の「供養塔」に代わる石造りの「市女原爆追悼碑」が建立され、8月6日に遺族会主催による除幕敷地7回忌法要が行われました。私が先日訪れた碑は、この1951年に建立された追悼碑です。この碑には「市女原爆追悼碑」と刻まれています。「証」によれば、「学校内にある平和塔と同じものにした」とあります。確かに同じ形をしています。
ところが、1967年になるとこの持明院も「平和都市区画整理」により「境内の5割が減少する」ということで、移転を余儀なくされ、現在の東区戸坂千足に移されました。それに伴い境内にあった「市女原爆追悼碑」も一緒に移設されたのです。「証」に、この碑について記載されているのはここまでですが、50回忌までは、「市女遺族会」によって、ここでの追悼式も行われていました。
経過が長くなりましたが、これからが持明院訪問記です。
持明院にたどり着き、門を入るとすぐの左側に「市女原爆追悼碑」があります。
まず黙とうです。この碑の右前に、1977年、33回忌に建立された「説明碑」があります。
「証」には、裏面に宮川造六学校長の歌が刻まれていると記されていますので、裏側を見ようと回り込みます。しかし「碑」と後ろの塀の間がわずかなためうらに、残念ながらきちんと見ることはできません。何とかスマホで映したのが下の写真です。
「教え子を水槽に入れ自らは 覆いとなりて逝きし師あり
萬歳の声をいまはに倒れゆきし 清き乙女の赤き血の色
ゆきゆきてかえらぬ人の面影を しのびて夜半の木枯らしを聞く」
この歌に詠まれた「教え子を水槽に入れ自らは覆いとなり」という情景は、他校の子どもをさがし来られた桑本トキコさんが、「市民が描いた原爆の絵」の一枚に描いておられます。
下図の上側です。「八月八日材木町・・・市女の生徒皆目玉が飛び出して頬骨の上にかかって居た。教え子を水槽に入れ其の上に覆となって死んで居られる。一女の女先生。思わず合掌。」
宮川校長は、当日生徒たちを建物疎開現場に引率した後、生徒と判れ、尾長町の県学務課へ行くため、電車で広島駅まで行き、徒歩で移動中に被爆されましたが、原爆死を免れられました。それだけに余計に亡くなった生徒たちへの思いは強いものがあったことが想像できます。
平和大橋西詰に建っている「市女慰霊碑」の裏面には、同じ宮川校長の次の句が刻まれています。
「友垣にまもられながらやすらかに ねむれみたまよこのくさ山に」
一回で終わる予定でしたが、少し長くなりましたので、続きは29日以降に報告します。
いのちとうとし
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