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2020年7月26日 (日)

「広島陸軍被服支廠」保存のための二つのイベント

24日、25日の二日続きで、「広島陸軍被服支廠」の保存をめざす二つの団体のイベントが開催されました。「保存運動」への関心の高さを感じます。

24日は、旧被服支廠の保全を願う懇談会が主催する「講演会」が、午後1時半から広島原爆資料館地下メモリアルホールで開催されました。

講演会のメインは、戦争遺跡保存全国ネットワーク共同代表で、高知県文化財団埋蔵文化財センターに勤めておられた出原恵三さんによる「広島被服支廠倉庫を世界遺産に―戦争遺跡の保存と活用」と題した講演でした。

出原さんは、最初に「戦争の記憶は、『ひと』から『もの』へと移っている」と、「戦争の記憶」は、体験者が高齢化する中で、人が伝えることがどんどん難しくなってきているので、「残された構造物・遺構・跡地」が果たす役割が非常に大きくなっていること、そのためにも保存が急務だということが強調されました。以下は、出原さんの話と私の感想を織り交ぜた報告です。

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戦争遺跡は、全国で約5万件あるといわれていますが、2019年8月現在、史跡など文化財に指定されているのは、296件。実は、戦争遺跡が文化財に指定されるようになったのは、原爆ドームが世界遺産登録されたからです。原爆ドームの世界遺産登録で一番の障害となったのは、当時の文化財指定基準でした。それまでの文化財指定基準は、「建物などの場合100年ぐらい経過していること」となっていたため、被爆後50年しかたっていない原爆ドームは、対象外とされていました。世界遺産に登録するためには、国内法で保護されていることが絶対の条件でしたから、この壁を超えることが必須の要件だったのです。この文化財指定基準を変えさせる大きな力となったのが、165万名の署名だったことを、思い起こしました。新しい指定基準には「戦跡その他政治に関する遺跡」が追加されたことによって、世界遺産登録への道を切り開いたのです。

この原爆ドーム世界遺産登録を契機に戦争遺跡保存の運動が、飛躍的に発展することになったのです。

出原さんはその例として、「沖縄戦をどのように伝えるか」から始まった沖縄の「戦争保存運動の歴史」を紹介し、さらに自らがかかわった高知県の戦争遺跡の保存と活用の運動が紹介されました。高知県では、戦争遺跡の調査を県や自治体が積極に行っているそうです。

出原さんは、戦争遺跡を残す意義を「本物を通して事実を明らかにする」ことができ、「歴史と空間をつないで追体験できること」とし、さらに「残っていれば、当時の状況を身近に考えることができる」と強調されました。そして残された遺跡を通して「75年前にここで何が起こっていたのか。私たちは、遺跡の前に立ち、歴史と空間を共有しながら戦争の悲惨さや愚かさを学び、語り継いでいかなければなりません。」と訴えられました。

そして最後に「戦争遺跡保存の立場からすれば、広島陸軍被服支廠4棟全てを国史跡に指定し、原爆ドームについで世界遺産に追加指定すべき性格のものだということです。これは広島県にしかできない平和事業です。遺跡が保存・整備されれば第二の生命が宿ります。」と保存運動が果たすべき役割を強調し、講演は終わりました。

この講演を受け中西巌代表から「戦争遺跡の大事さを改めて認識しました。少しずつ前進はしているが、つまるところ財源の問題、4棟保存、厳しいけれどこれからが正念場。みなさんの協力を得て、まずは文化財、その先には世界遺産への道をめざして取り組みを進めたい」と決意のこもった閉会のあいさつがあり、講演会は終了しました。

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講演会が終わり資料館の1階に上がると、入り口には入館の順番を待つ長い列が続いていました。現在入館者は、事前に整理券を受け取り、30分ごとに150人に制限されていますので、旅行者が増えると、こうした風景が日常の姿になるかもしれません。

翌25日は、アーキウォーク広島が主催する「旧陸軍被服支廠の見学会」が、午前9時から午後1時まで開催されていましたので、内側に入れるということで、昼過ぎに行ってきました。この日の見学者は、100人ほどだったようです。幸い雨も降らず、見学者は、おもいおもいにカメラを構え、ゆっくりと見学することができました。

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左側が国所有に4号棟、右奥が県所有の3号棟

 アーキウォーク広島が主催する見学会は、8月は8日と22日(いずれも土曜日)の午前9時から12時まで開催されます。参加費無料の自由参加です。現地に足を運ぶことで、そのスケールの大きさを実感することができますので、参加をお勧めします。

いのちとうとし

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