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2020年4月20日 (月)

新型コロナウイルス危機・その9 ――感染者の年齢別分布とWHOのデータ――

 

新型コロナウイルス危機・その9

――感染者の年齢別分布とWHOのデータ――

 

これまでの考察の中で何度も言及してきた事ではありますが、改めて、資料として整理しておいた方が、後世への報告としては親切だと思いますので、三つほど整理しておきましょう。鍵は「若者」です。

一つ目は、3月初めに注目されていた「クラスター」です。クラスターを中心に集団感染が起きているから、クラスターを広げるな、という論調でした。そのクラスターの例として良く引き合いに出されていたのが、①北海道の雪まつり、②北見の展示会③東京の屋形船④市川や名古屋のジム⑤新潟の卓球クラブ⑥大阪のライブ・ハウス⑦東京、神奈川、和歌山の病院です。その時点では、これ以上クラスターが大きくなったり、広がったりしなければ感染はそれなりに収まるだろうという予測が出てきても不思議ではありませんでした。では、そのプロセスで、10代の子どもたちはどのような役割を果せたのでしょうか。

まず、これらのクラスターでは、直接10代の子どもが感染した例は報告されていませんでした。そもそも10代の子どもたちがこのような施設の中心的な利用者ではありませんし、ほとんど利用していないとまで言っても良いかもしれません。また、その他の利用者プロフィールを考えても、軽症の10代の若者が感染していたことが出発点になって、これらのクラスターでの集団感染が起きたと結論付けることはできません。

つまり、クラスターに注目する限り、「(10代の)若年層は重症化する割合が非常に低く、感染拡大の状況が見えないため、結果として多くの中高年層に感染が及んでいると考えられます」という結論を導くのには無理があるのではないでしょうか。

次に、国立感染症研究所が、2月29日に公表した2月24日時点の数値を見てみましょう。感染者の年齢別分布は次のようになっています。

年齢の中央値は66.5歳(範囲15-89)、その分布は10代2例(2%)、20代7例(6%)、30代8例(7%)、40代9例(8%)、50代20例(18%)、60代13例(12%)、70代33例(29%)、80代20例(18%)であり、60代以上で約6割を占めています。

Photo_20200416173001

「10代の軽症の若者が、感染源になって、高齢者がウイルス罹患している」 (これを命題Aと呼びます) という結論がまずあって、その上でこのグラフを見せられた場合、「そうなのか」という感想にはなるでしょう。論理的には矛盾しないからです。しかし、このグラフだけから、命題Aが正しいと主張することは、十分条件と必要条件を無視している論理になってしまいます。本当に10代の若者が感染源になっているのかどうかは、データを調べなくては分りません。

それに応えてくれる調査が存在します。WHOが、今年、2020年の2月16日から24日までの期間に調査し公表した、「COVID-19についての中国とWHOのJoint Missionによる調査報告書」がそれです。その11ページには、「Children」という項目があり、子どもの感染についての次のような報告が載っています。(私の訳)

18歳以下の個人についてのデータによると、この年齢群が、罹病者の中に占める割合は相対的に低い。(全体の2.4%)。武漢で、インフルエンザのような症状を示す人についてのデータ中、2019年の11月、12月、そして2020年の最初の2週間には、陽性を示す子どもはいなかった。手元にあるデータを元にすると、(その中には血清学的なデータはないが)、子どもの感染がどの程度広がっているのか、感染のプロセスで子どもがどのような役割を果すのか、子どもが感染し易いのかどうか、臨床的に症状が軽いのかどうか、についての結論を得ることはできない。Joint Missionが感染した子どもの存在を知るに至ったのは、主に、大人のいる家庭を追跡するプロセスであった。注意すべきなのは、Joint Missionがインタビューした人たちの中で、子どもから大人への感染があったという事例を経験した人はいなかったことである。

何万人もの人が感染している武漢で、日本も含めての世界の専門家が医学的・科学的な観点から調査した結果では、子どもから大人への感染例は知られていないし、子どもが感染した場合に症状が軽いという結論も得られていないのです。

となると、「一両日中に北海道などのデータの分析から明らかになってきたこと」として報告されている、子どもが罹ると症状は軽い、子どもから大人に大量にうつっている等の結論は、WHOの調査からは分らなかった国際的に注目すべき疫学的知見だということになります。当然、WHOに報告し、権威ある学会誌にも寄稿して世界で共有されるべき事柄です。しかし、それほどの画期的な「発見」について、3月中頃の時点では、WHOは何の反応も示していませんし、評価をしているようにも見えないのですが、何故なのでしょうか。

もう一点付け加えておくと、COVID-19については、日本小児科学会でも分り易いまとめを「Q&A」という形にして、2月28日に更新、3月3日に一部修正を行っています。その内容は、中国におけるデータを元にしており、WHOの結論とほぼ同じです。当然、子どもたちから大人にCOVID-19ウイルスが感染している、それが問題だという認識は示されていないのです。

WHOのウエブ・ページは英語ですが、この合同報告については、要旨を分り易くまとめた日本語のサイトがいくつかあります。二つ紹介しておきます。

https://comemo.nikkei.com/n/nf9f8eb998427

https://www.newton-consulting.co.jp/bcmnavi/column/who_point_of_corona.html

WHOのテドロス事務局長に対する批判は後を絶ちません。批判通りに今のWHOが真実を歪めた報告を出している可能性が全くないとは断言できませんが、国際機関が日本も含む多国籍の専門家を擁して調査した結果ですので、科学的な手続きについては一定のレベルは保障されていたと考えるのが常識だと思います。

このような国際的に認知されていた知見に反する言葉に守られてまで、何故安倍総理は「安倍宣言」を出したかったのでしょうか。次にその動機について考えてみたいと思います。

 [2020/4/20 イライザ]

 

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コメント

リーマン級のことが起きれば消費増税しないという安倍政権でしたが、リーマンを超える事態になっても消費税だけは守るようですね。

「減税派」様

コメント有り難う御座いました。

その時その時の自分の都合こそ真実だと信じている人たちの集団ですから、それもあり、なのでしょう。筋の通った政治のために、次の選挙を活用したいですね。


北海道の鈴木知事が「緊急事態宣言」を出したのは2月28日でしたが、あの段階で日本の状況を確認できるデータへのアクセスは非常に困難でした。自治体のサイトでも、アリバイ的に出してはあるものの、まるで隠しているような公開の仕方で、データの内容もクラスター班が集めていた詳細な情報の大雑把で僅かな部分しか公開されていない、極めて不十分なものでした。

一方で、海外で地域によっては、日本からでも、感染者の発生に関する情報はもちろん、感染者がいつどこを通ったかという詳細な位置情報から、ウイルスの構造(型)による伝播経路や、病床の状態、マスクがどこで入手できるかということまで、最新の詳細な情報に簡単にアクセスできました。

クラスター班で理論免疫学の西浦博教授は4月10日の取材に「厚労省がなんでもいうことを聞く学者に、都合のいいものを作らせて出していた。」と言っており、官僚や政治家との意見調整に時間もかかっていたようで、彼らの苦労も想像はできますが、各国からプレプリントで情報が公開されている中、日本だけが根回しに時間がとられ、一周も二周も遅れた情報が開示されているということでは、変化に対して即応することが重要な感染症対策はとてもできそうにありません。

日本は、まだ楽観的なシナリオも書ける状況ですが、万が一、悲観的なシナリオになった時は絶望的です。

 

「工場長」様

コメント有り難う御座いました。

国からの発信が好い加減なのは今に始まったことではないのですが、この状況での実情をまとめて頂き、有難う御座います。私も、海外のサイトを頼りにしていましたし、今でもそうなのですが、1918年のスペイン風邪からの教訓も生きていますね。感染の仕方についてのモデルにも、その知見が取り入れられているような気がします。

この点については、「安倍宣言」の検証が一段落した段階で、エネルギーを充電して勉強してみたいと思っています。

官僚が出す情報は、「モリカケ」事件を思い出して頂ければ分るように、自分たちの都合で、捏造・改竄は当り前ですし、悪い意味での「依らしむべし、知らしむべからず」が基本方針のようです。でも、3月2日の「見解」では、「専門家」の一部もその風潮に感染してしまっているようで残念ずす。

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リーマン級のことが起きれば消費増税しないという安倍政権でしたが、リーマンを超える事態になっても消費税だけは守るようですね。

「減税派」様

コメント有り難う御座いました。

その時その時の自分の都合こそ真実だと信じている人たちの集団ですから、それもあり、なのでしょう。筋の通った政治のために、次の選挙を活用したいですね。

北海道の鈴木知事が「緊急事態宣言」を出したのは2月28日でしたが、あの段階で日本の状況を確認できるデータへのアクセスは非常に困難でした。自治体のサイトでも、アリバイ的に出してはあるものの、まるで隠しているような公開の仕方で、データの内容もクラスター班が集めていた詳細な情報の大雑把で僅かな部分しか公開されていない、極めて不十分なものでした。

一方で、海外で地域によっては、日本からでも、感染者の発生に関する情報はもちろん、感染者がいつどこを通ったかという詳細な位置情報から、ウイルスの構造(型)による伝播経路や、病床の状態、マスクがどこで入手できるかということまで、最新の詳細な情報に簡単にアクセスできました。

クラスター班で理論免疫学の西浦博教授は4月10日の取材に「厚労省がなんでもいうことを聞く学者に、都合のいいものを作らせて出していた。」と言っており、官僚や政治家との意見調整に時間もかかっていたようで、彼らの苦労も想像はできますが、各国からプレプリントで情報が公開されている中、日本だけが根回しに時間がとられ、一周も二周も遅れた情報が開示されているということでは、変化に対して即応することが重要な感染症対策はとてもできそうにありません。

日本は、まだ楽観的なシナリオも書ける状況ですが、万が一、悲観的なシナリオになった時は絶望的です。

「工場長」様

コメント有り難う御座いました。

国からの発信が好い加減なのは今に始まったことではないのですが、この状況での実情をまとめて頂き、有難う御座います。私も、海外のサイトを頼りにしていましたし、今でもそうなのですが、1918年のスペイン風邪からの教訓も生きていますね。感染の仕方についてのモデルにも、その知見が取り入れられているような気がします。

この点については、「安倍宣言」の検証が一段落した段階で、エネルギーを充電して勉強してみたいと思っています。

官僚が出す情報は、「モリカケ」事件を思い出して頂ければ分るように、自分たちの都合で、捏造・改竄は当り前ですし、悪い意味での「依らしむべし、知らしむべからず」が基本方針のようです。でも、3月2日の「見解」では、「専門家」の一部もその風潮に感染してしまっているようで残念ずす。

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