新型コロナウイルスと差別とメディアと
TBSに「サンデーモーニング」という番組があります。2月23日の番組の特集コーナーで『風を読む~~感染症と差別~』という特集をしていました。内容は、今、猛威を振るうコロナウイルス肺炎に感染した人を、差別する現実が世界で広がっている状況があること。日本でも以前は、ハンセン病やエイズ感染者への差別があったという事と、また時代は繰り返されるのかという内容でした。ウクライナやヨーロッパでは、コロナウイルス感染者や中国人に対して、誹謗中傷が後を絶たないと言います。日本も例外ではなく、20日に京都で、「中国人お断り」の張り紙を電柱に張るなどして、犯人が逮捕されました。このような、状況下、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は「我々が直面する最大の敵はウイルスではない。最大の敵は、我々を対立させる差別だ」と声明を発しました。この声明が、大きく取り上げられることもなく、メディアでは連日コロナウイルスに誰が感染した、感染が止まらない、死者が何人になったという事ばかりが報道されるだけで、あたかも感染した人が「罪人」のように報道されているように思います。
しかし、それが一番重要なことなのでしょうか。多くの人が知りたい情報はそうではないと思います。
私が思うのに、一連の報道もふくめ、何か別の意図がある様にしか思えないのです。
それは、世界中に広がる貧困や格差、その国々の右傾化をメディアが「煽る」ことで、わざと混乱を引き起こそうとしているのではないかということです。今は誰が感染したか、責任の所在は、などいう事よりも、感染した人が、または感染した疑いがある人を、どう受け入れ、安心して治療や相談ができるか、しっかりと国民に周知し、混乱を抑える方が先決ではないかと思うのです。
14世紀、ヨーロッパでペストが流行した際には、 スペインやフランスなどで「ユダヤ人が井戸に毒を入れたからだ」との人種差別によるデマが飛び交い、ついにはユダヤ人虐殺という惨劇を招きました。
日本でも、明治時代、ハンセン病患者の隔離政策が実施されて以来、患者だけでなく、その家族までが、「差別と偏見」の対象とされ、厳しい視線に曝されました。さらに、エイズに対する偏見から、HIVに感染していることを理由に患者だけでなく、その家族までが「差別と偏見」の対象とされ、仕事を解雇されたり、医療機関での診療を拒否されたりするなど、深刻な人権侵害も起きています。
不明確な情報が一人歩きをし、ネットなどで一気に拡散され、一方的に流され、人々を通じてさらに拡散されていきます。メディアとしての責任は問われず、もはや、最初の情報とは全く違う報道が始まってしまうことが、この日本ではたびたび繰り返されてきたのではないでしょうか。
私たちは、「差別」の現実をあまりにも軽視し、それを見て見ぬふりをして、「差別」が生きることを阻害している事を認識すらしていない事があります。私たち一人一人が常に「自分が差別する側に加担をしてはいないか」という問いかけをし、意識しなければ、差別している側にいつのまにか加担をしていることになりはしないでしょうか。何もしないことは加担している事と一緒同じではないでしょか。
少なくとも、私自身は、なにげないしぐさや会話での言葉から、自分が差別する側に立っていたのではと、はっとしたり後悔したりすることがあります。だからこそ、学習を深め、差別に対する認識を持ち続けていきたいと思います。
この世界で「おかしい」という言葉が言えなくなったとき、戦前のような世界へと逆戻りしてしまうのではないかと思います。小さな声にも耳を傾け、真摯にそれに向かい合う事も必要な事だと、私たちは改めて認識する必要があるのではないでしょうか。
グリズリー
<追記>今日も新しい原稿が届きましたので、一昨日の「広島市のにぎわいづくりと平和大通り」のつづきは、明日に延期します。(いのちとうとし)
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