切明千枝子「ヒロシマを生き抜いて」
昨日の碑めぐりガイドで紹介した自治労大阪交通労働組合のみなさんは、その前日(12日)、切明千枝子さんの被爆体験を聞きました。切明さんの証言は、当初1時間余りの予定だったようですが、2時間近くに及んだそうです。
切明千枝子さんには、原水禁も2015年の「被爆70周年原水爆禁止世界大会広島大会」の開会総会での「被爆者の訴え」を行っていただいたことがありますが、短時間の訴えながら、参加者が深い感銘を受けたことを思い出します。
その切明さんの被爆体験集「切明千枝子『ヒロシマを生き抜いて』」を最近入手しました。この体験集は、足立修一弁護士が代表を務める「ノーモア・ヒバクシャ継承センター広島」が、数回にわたる聞き取りをまとめて昨年(2019年)12月に発刊したものです。
表紙の絵は、切明さんが描いた「ドクダミ」です。絵解きがあります。「のちに母は『ドクダミが一番効いたのよ。』と話していましたから、私は今でも自分の庭にはびこるドクダミを抜く気にはなれないのです。」
切明さんの被爆体験を聞いたことのある方は記憶されていると思いますが、切明さんのお話は「被爆体験」にとどまらず、被爆前の体験(この本では、「第1章 私の十五年戦争」)に力が込められています。
数年前ですが、私の出身小学校・出雲市立高松小学校の修学旅行生に、切明さんが被爆体験を語られることを知り、会場で子どもたちと一緒にお話を聞かせていただいたことがあります。学校の都合で体験を聞く会場への到着が大幅に遅れ、切明さんのお話は「前段の戦争体験」のところで時間切れになってしまったことがあります。その時、切明さんにとって、戦争前の体験を語ることがどんなに大切なことかを痛感させられました。
この本の最後に切明さんの伝言が載っています。「『平和』はじっと待っていても来てくれません。力を尽くして、引き寄せ、つかみ取り、みんなで懸命に守らないと、逃げてしまいます。」(2019年11月20日)
編集後記には「『15年戦争』ともいえる軍国教育の真っただ中で成長し、15歳の時に原子爆弾の被害者となりました。」「日々被爆体験の証言を続け、若い世代に『あの戦争を絶対に繰り返してはいけない』と訴えています。」と書かれています。
切明さんのお話しの特徴は、「被爆体験」は勿論ですが、まさに原爆投下につながる「戦争」への道、とりわけ軍都としての廣島の歩みをきちんと語られることです。そして90才を超えた切明さん(1929年生れ)の記憶力の良さにも驚かされますが。
この本は、第1章につづき「第2章 私の被爆体験」「第3章 敗戦」「第4章 青春群像」の4章から成り立っていますが、そのいずれも切明さんの熱い思いがあふれています。そして戦後の歩みを語る「第4章」も特徴的と言えます。
各章の後には、証言の中に出てくる「言葉」や「人名」の「解説」が付けられており、理解しやすくなっています。
ところで、この体験集の発刊に大きな役割を果たしたのが「盈進中学高等学校ヒューマンライツ部」の若い人たちです。1年半にわたって集団作業が続いたようです。若い担い手が加わることによって、より一層「何を継承するのか」が鮮明となったように思います。
この「盈進中学高等学校ヒューマンライツ部」のみなさんが、坪井直さんや森滝春子さんの話をまとめる作業などを通じて、反核運動に熱心に取り組んでいることは知っていたのですが、先日思いがけない場所(「ハンセン病問題に関するシンポジウム」)で、まさに「ヒューマンライツ」の取り組みを進めていることを知ることになりました。詳細は、別の機会に譲りますが、それは「ハンセン病問題にまなぶ」活動です。
発行元である「ノーモア・ヒバクシャ継承センター広島」では、初版の残部が少なくなり、再版を予定しているようです。ぜひ、一人でも多くの人に読んでいただきたいと思います。問い合わせ先は、h.conveyrelay.c@gmail.comです。
いのちとうとし
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