2020の課題を考える
2020年を迎えました。
広島に住む者にとっては、なんといっても原爆投下から75年という大きな節目の年となります。そしてNPT(核拡散防止条約)が発効して50年、国連では4月から5月に掛けてこの条約の再検討会議が開催されることになっています。
5年ごとに開催される再検討会議ですが、5年前と大きく異なる日本の原発をめぐる状況は、日本の核燃料サイクルのカナメである高速増殖炉「もんじゅ」が廃炉となり、プルトニウムを所有することの根拠が無くなったことでしょう。
また1970年3月14日、大阪で開催された大阪万博開会式に関西電力美浜原発1号機から原発の電気が送られてきて、会場の電光掲示板には「本日、関西電力の美浜発電所から原子力の電気が万博会場に試送電されました」と「誇らしげ」に掲示されました。あれから50年という年でもあります。
そして17年7月に核兵器禁止条約が採択されて、最初のNPT再検討会議になります。核兵器禁止条約は、50か国が批准すれば90日後に発効するものです。12月31日現在、34か国が批准という状況になっています。34番目の批准国はアンティグア・バーブーダというカリブ海に浮かぶ小国で、地図でも見えない国でした。「弱肉強食」の核拡散防止条約に対し、「共存共栄」の核兵器禁止条約、どう折り合うかも注目です。
一方、被爆者手帳を持っている被爆者の数は、19年春の時点で15万人を切ったと報じられました。逆に原爆慰霊碑の死没者名簿に記されている被爆者は31万9千人を超えました。死没者名簿には「氏名不詳者多数」とだけ記された一冊の名簿もあります。時の流れとともに生存被爆者数が減り、死没者名簿に載せられる数が増えるのは当然な現象でしょう。11月24日に、ローマ教皇フランシスコが広島市にやって来て、素晴らしいメッセージを発しました。しかしヒロシマで活動している私にとっては、とても大きなプレッシャーと思われました。同じことを多くの人が感じていたようですが、「広島・長崎の体験が原点にある日本の平和運動」と思えば、そのプレッシャーはみんなで共有して欲しいものです。
視点を日本の特に中国地方の原子力発電をめぐる状況に目を向ければ、島根原発2号機が再稼働の前提となる「適合性審査合格」が予想されます。BWR(沸騰水型)原発で、東北電力の女川が先になるとは予想していませんでした。すでに審査合格はしているが再稼働が見通せない柏崎刈羽より、女川の方が見込みが大きいと思ったのでしょうか。原子力規制委員会も「次は島根だ!」という考えのようです。
審査に合格はしても、即それが実際の再稼働には『ならない』と思いますが、『ならない』ようにさせるのは、私たちの活動にかかると思います。それを事実で示すのは鳥取県境港市などで予定されている住民投票条例制定運動で、いかに多くの「条例制定賛成数」を出すかでしょう。
島根県と岡山・広島両県との間で締結している、県間防災協定の実効性の無さを明らかにすることも重要です。広島県内の自治体で避難所運営マニュアルを作成している数は、5市町です。広島県内で島根原発からの避難者を受け入れる自治体は22ですが、この数がすぐに増えるようには思えません。
そして東京五輪が終われば、次の「第6次エネルギー基本計画」の議論が開始されるでしょう。これまでのように原発比率20~22パーセントが継続されれば、中国電力にとっては上関から「引くに引けない状況」となると思います。
上関は建設計画が公になって38年となります。これまで国内で一番長く原発建設をさせないための運動が行われたのは、中部電力の芦浜計画の37年でした。こんなに長い間反対運動を続けなければならない状態にさせたのは、まさに大犯罪であり、特に自治体の責任は問われなければならないと思います。
地球温暖化防止会議(COP25)で日本の不作為が世界中から指摘されましたが、「温室効果ガスを出さないために原発を」という宣伝が、業界や政府から強く展開されることが予想されます。
そして4月からは発送電の分離も本格的にスタートします。余りに課題の多い2020です。
木原省治
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