奇妙な立看板
「奇妙な」と言ってももちろん形がということではありません。立看板に書かれている内容です。私がその看板に初めて気づいたのは、23日の午前11時ころ、買い物から帰る途中の広島市役所と中区役所の間の電車通りの交差点です。交差点の西側歩道に電車通りに向けてその看板はたっていました。タイトルは「静穏保持指定地域」と太い赤字で書かれ、さらに黒字で「『外国公館等周辺地域』につき、違法な拡声器使用は法令により罰せられます。令和元年11月23日から同26日まで」と書かれ、その下に「外務省」と記載されています。この看板を見た時は、「あーローマ教皇が広島に来られるからか」となんとなく納得した気持ちになったのですが、よくよく考えると疑問だらけの看板です。
帰宅し直ぐにネットで「どんな法律かな」と調べていました。
1988年(昭和63年)に施行された「国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律」に基づいて、この看板が掲示されたようです。その第4条に「外国公館等周辺地域の指定」言う項があり、その指定地域として「国会議事堂や外国公館など」とともに「外国要人の所在する場所及びその周辺の地域」を指定することができるようになっています。「ローマ教皇という外国人要人」のための指定だということが分かりました。さらに同法律では、第6条で「違反に対する措置は警察官が命ずることができる」となっています。
私の頭に浮かんだ第一の疑問「周辺地域とはどこを指しているのだろうか」ということです。看板には、指定された地域が全く明示されていません。ちょうど出かける用事がありましたので、その途中で広島中央署に行って訊ねてみました。対応していただいたのは警備課の方でした。「周辺地域となっていますが、地図で示されたものはありますか」と尋ねると、「地図はありませんね。警備は、県警ですから」という答えでしたので「もし何かあれば、担当するのは、中央署でしょ?」と問うと「ちょっと待ってください」と上の階に行ってしましました。15分ぐらい待たされて説明がありました。
地図は示されず、見せられたのは「官報」(令和元年11月20日:官報を普通の市民が目にすることはほとんどない)のコピーでした。そこには「外務省告示第222号」で「ローマ法王来日に際し」(筆者注:外務省は今回「教皇」としたはずなのになぜか「法王」のまま)とし全国で15カ所の地域が指定され、その15番目に「広島平和記念公園周辺地域」が「外務公館等周辺地域」と指定されています。そして「地域」として広島市中区の町名があげられ、その中に「大手町4丁目」もあります。指定された周辺地域は、これで一応理解はできましたが、大手町4丁目より平和公園に近い、例えば紙屋町1丁目(電車通りの東側)や旧日本銀行広島支店のある袋町などは、指定されていません。決してその地域を指定しろというわけではありませんが、非常に杜撰な地域指定のように思えます。
二つ目の疑問は、「11月23日から26日まで」となっている「期間」です。「官報」を読むと、全国15カ所いずれもが、同じ期間で指定されています。ローマ教皇が広島を訪問されたのは、24日の夕方の時間だけです。だのになぜ、広島に滞在していない期間中も指定するのでしょうか。同法では「運用上の注意など」として「法律の適用に当たつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」としているにもかかわらずです。規制は、「表現の自由」を侵害するものですから、必要最小限度にとどめるべきです。ましてやこの法律は「違反した者は、六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する」と罰則規定も設けているのですから。この理由は警察に尋ねることはできませんが、はっきりさせたいことです。
ところで、私が今回このことに関心を持つのは、広島市が「拡声機使用規制条例」の策定を検討しているからです。ひとたび、法律や条例で規制が始まれば、「規制強化」の方向へと一人歩きする危険性が大きいからです。その例を、この立看板にみることができるように思ったからです。広島市の「拡声機規制条例」問題については、日を改めて考えてみたいと思います。
この看板は、とっくに様をなしていないのもかかわらず、ローマ教皇が広島を離れられて2日もたつ26日にも掲示されていました。
いのちとうとし
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