「朝鮮学校無償化裁判」傍聴記
この一週間、裁判の傍聴記事が続いていますが、今日は一昨日開かれた広島高裁「朝鮮学園高校無償化裁判」の控訴審第8回の口頭弁論の傍聴記です。涙が自然とあふれる公判でした。
今回の公判も前回第7回公判(9月10日)に引き続き、この裁判にとって山場ともいえる原告本人と証人尋問が行われました。最初に証言台に立ったのは、元朝鮮学校高校生で、卒業後は、朝鮮大学を経て現在朝鮮学校の教師を務める原告番号13番(証言による不利益を生じさせないため本名ではなく原告に付された番号を使用)の原告本人。
自分自身の生い立ちを語りながら、朝鮮高校で学ぶことによった得たこと、仲間たちへの思い、現在朝鮮学校の教師として子どもたちに伝えていることなどを控訴人側弁護士による主尋問に対し、はっきりと答えていたことが強く印象に残りました。報告会での「朝鮮学校に通ったからと言って、ある意味精神的苦痛はなかった。自分たちのルーツを学び、仲間がいたから。それが朝鮮学校というところ」との発言にその思いが現れています。
続いて証言台に立ったのは保護者の朴さん。朴さんは、弁護士からの主尋問に対し、時には声を詰まらせながら、無償化から除外されていることの不当性を訴えました。特に、自分自身が「小学2年生までは日本人学校に通っていたが、何時も朝鮮人とわかった時の差別を危惧しながら、学校生活を送ってきた」ことを述べながら「朝鮮学校に通うようになって、そんな差別の不安を感じることなく、そして自分自身のアイデンティティーを取り戻しすことができた」ことなどをはっきりと証言しました。自分自身の体験からも子どもたちも何度も日本社会の中で、差別的言辞やいじめにあったことが話されました。
そんな差別を体験しながらも、「子どもたちの希望を聞き届け、山口の徳山で生活していた家族が、やはり子どもたちを朝鮮学校に通わせたいとの思いから、広島に転居してきた」ことなどが語られました。さらにこの裁判の争点の一つとなっている朝鮮総連については「知人が誰もいない広島の地に転居した時、朝鮮総連の人たちが、仲間を紹介し、集いに誘い、輪の中に加わらせてくれ、不安をなくしてくれました。朝鮮総連は、同胞たちの支えであり、拠り所です」と在日の同胞にとってどんなに大切な存在かが語られました。また国連人権委員会に訴えに行ったことも証言。
最後の裁判官に向かって「もしあなたが外国に住み、子どもが学んでいる時、差別された時のことを想像してください。差別されることが、どんなことが想像してください。そして、公平な裁判を望みます。」と強く訴えました。
朴さんの証言は、私の心にも強く響き、自然と涙がにじんできました。何度も裁判の傍聴をしてきましたが、こんなことは初めての経験です。私だけではありません。証言が進む度に傍聴席のすすり泣きの声も広がっていきました。
原告、保護者の見事な証言に対し、国側の反対尋問は全くありませんでした。
裁判長は、その他にも申請していた参考人の尋問は、すべて却下の判断を示し、原告団が強く求めていた朝鮮学園の見学も却下となりました。「百聞は一見に如かず」という言葉がありますが、裁判官には朝鮮学園を実際に見学し、子どもたちの姿を見て、判決文を書いてほしかったと強く思いますので、非常に残念です。
今回の尋問での証言は、改めて私たち日本人一人ひとりが重い課題を突き付けられることになりました。次回の公判は、3月16日の午後2時からで、結審になると思います。
いのちとうとし
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