「憲法審査会」の役割とは
日本国憲法は、73年前の今日11月3日に公布され、翌年の5月3日から施行されました。憲法記念日は、5月3日ですが、日本国憲法にとっては今日も忘れてはならない日です。
昨日のブログで、「憲法のつどい ひろしま2019アピール」を掲載しましたので、読んでいただいたと思います。実は私は、当日このアピールを見て、気になる箇所がありました。みなさんはどうでしょうか。
ちょっと長くなりますが、その部分を引用します。
「この臨時国会では、改憲の扉をあけさせるために、『憲法について議論を』と言って憲法審査会の開催をくわだてています。憲法審査会は、憲法を一般的に議論する場ではなく、『憲法改正原案、国民投票法案等を審議する』場です。安倍政権は国民投票法案の審議を口実にして、多数の力で改憲案審議へと推し進めることを狙っています。」
安倍政権の改憲の狙いについては、アピールにあるとおりですが、私が気にしたのは太字で示した部分の「憲法審査会は、憲法を一般的に議論する場ではなく」という表現です。憲法調査会の役割と何かです。
衆議院憲法調査会のホームページを開くと、「憲法調査会の目的」として次のように掲載しています。「憲法審査会は、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査する機関です」と。
そうなのです、憲法調査会は、「改憲を論議する」ためだけにあるのではありません。もちろん「憲法改正原案を発議すること」も重要ですが、その前にやるべきことは「広範かつ総合的に調査」することです。
2015年6月4日の衆議院憲法調査会を思い出してほしいと思います。ちょうど同時期に衆院平和安全法制特別委員会では、憲法違反の集団的自衛権を認めた「戦争法」が審議されていました。そこで衆議院憲法調査会は、3人の憲法学者を参考人として招き、「集団的自衛権と憲法」について、その見解を聞きました。
与党が推薦した参考人を含め3人の憲法学者が「集団的自衛権は、憲法違反だ」と述べました。しかし、安倍政権は、この重要な憲法学者の見解、しかも憲法審査会で発言したにもかかわらずこれを無視し、強引な国会運営でこの憲法違反の戦争法を強行成立させました。そして安倍与党は、その後の憲法審査会を開会しなかったのです。
実は、この6月4日の憲法審査会こそ、まさに憲法審査会に課せられた本来の役割「基本法制について広範かつ総合的な調査」を行ったのです。その内容が自分たちの意にそぐわないから無視する人たちに「憲法審査会」を論評する資格は全くありません。
安倍首相がいう「憲法審査会での論議を」というのは、ただ自分が求める改憲論議を進めることだけを目的に主張しているから問題なのです。
むしろ、いま憲法審査会がやるべきことは、改憲論議の前に、例えば、安倍首相の憲法99条の「憲法尊重擁護義務」違反である「自衛隊の高級幹部会同や観閲式で自衛隊明記の改憲を繰り返えし発言」していることや「戦争法の違憲性」について、広範かつ総合的に調査することです。それは、憲法審査会にしかできない仕事です。
私もかつて憲法審査会の前身である「憲法調査会」の委員として2年10カ月活動した経験があります。もちろん、憲法審査会と憲法調査会では、基本的性格を異にしますが、憲法審査会が今行うべきことは、矛盾が拡大している「日本国憲法の政治の現状によってもたらされた大きなかい離」について「その実態と原因」を徹底的に調査することです。私は憲法調査会でずっとそのことを主張して続けてきました。しかし、私が体験した憲法審査会もそうですが、ややもすると「憲法改正」のみが目的であるように理解されている面があります。
もちろん、国会の民主的ルールを無視し、憲法を軽視する安倍政権の下で、憲法審査会を開会することは、安倍改憲へ道を開く危険極まりないものであることは言うまでもないことですが、この機会に「憲法審査会」とはどんな役割を持っているのか考えてみることもまた必要なことではないでしょうか。
いのちとうとし
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