子どもの権利条約」30年
10月17日,文部科学省が2018年度の「問題行動・不登校調査」を公表しました。いじめの認知件数は約54万件で前年度から31.3%増え,いじめが確認された学校は全体の80%に上りました。心身に深刻な被害が生じるなどの「重大事態」も602件と過去最多となっています。
広島県内のいじめ認知件数は,前年度より70%近く増え,7,435件(小学校5,127件,中学校1,875件,高校410件,特別支援学校23件)で,過去最多を更新しました。発覚のきっかけは,被害児童・生徒や保護者からの訴えを含む「情報提供」が4,208件(56.6%),教職員による発見は43.4%で全国平均66.2%を大幅に下回っています。なぜ,教職員による発見の方が少なくなっているのかをしっかり分析していく必要があります。
自殺した小・中・高校生は332人(小学生5人,中学生100人,高校生227人)に上り,3年連続で増加しています。国内の自殺者数が9年連続で減少する中,子どもの自殺は増加傾向にあります。不登校も,小中学生約16万人(前年度より約2万人増),高校生約5万人(前年度より約3千人増)と増加傾向にあります。
これらの背景の一つには学校に広がる「管理強化」による閉塞感があると指摘されています。子どもを全体主義で管理するために,校則や規律を細かく決め,それに黙って従う子どもを「良」とするなど,ゼロトレランスの考え方に基づく指導が蔓延るようになりました。例えば,「黙働流汗清掃」「給食の黙食」「細かな挨拶のルール」等々,軍隊に似た光景が珍しくなくなりました。また,小学校道徳では,とりわけ低学年を中心にマナー講座のような内容を教え込むようになっています。これだけでも,息苦しさを感じますし,自殺も不登校も学校に通うことが苦しいと感じている子どもたちのSOSに他なりません。
今年は,国連で「子どもの権利条約」が採択されて30年になります。日本がこの条約を批准したのは,世界で158番目であったことからも分かるように,当初から積極的ではありませんでしたし,この条約の理念が日本社会に根付いているかと言えば,そんな状況にはありません。
今年の2月,国連「子どもの権利委員会」は,日本政府に対して,「過度な競争的システムを含むストレスの多い学校環境から子どもを解放するための措置を強化すること」「朝鮮学校への授業料無償化制度の適用を促進するために基準を見直すこと」などを勧告しました。また,子どもへの虐待などの暴力が高い頻度で報告されていることに懸念を示し,対策強化を求めています。日本は,「委員会による審査」という仕組みも含めて条約を批准しており,その審査の結果を誠実に受けとめ,対応していく必要があるはずです。
私たちおとなは,子どもを「権利行使の主体」として,「子どもの最善の利益を一番に考える」という条約の理念をしっかり胸に刻まなければなりません。特に,新自由主義と国家主義に飲み込まれている学校教育の姿を,そうした視点で問い直していくことが,教職員の責務であることを確認し合いたいと思います。
(西迫 利孝)
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