核廃絶運動は歴史的厳しさに直面している (6) ――憲法の復権と民主主義の再生が必要――
今回そして次回は、このシリーズの最後として、結論を簡単にまとめて述べておきましょう。述べることは簡単にできますが、それを実現するためには、固い決意と忍耐強い努力が必要なことは言うまでもありません。
前回までは、日本政府の究極的な目標は「日本自前の核兵器を保有する」であり、日本政府が、核兵器禁止条約の署名と批准を頑なに拒否しているのはそのせいだと考えると、辻褄が合うことを確認しました。そして、それに対抗する核廃絶運動は、国内の政治を変えるという目標を実現する運動というよりは、国際的な場に参加する活動が主であり、日本政治のいわば「本丸」にも相当する様々な課題についての統一した勢力を創るだけの実績やエネルギーがあるのかについても厳しい環境にあることも見てきました。
しかしながら、核兵器廃絶への可能性が核兵器禁止条約という形で見えて来た今、日本政府が先導役を果すために一大方針転換をしなくてはなりません。それを可能にするのは私たち主権者ですから、何をなすべきなのかについて、再度確認をしておきましょう。
まず、日本の政治の主役は主権者ですが、その最終責任も当然、主権者が負うことになります。政府がとんでもない施策を展開しその結果として私たちが犠牲を払わなくてはならないとすると、一義的な責任は当然、政府にあるのですが、そんな政府を作ってしまった責任は主権者にあるのです。政治に関心を持ち、政府の批判をし続けてきた私たちに取って見逃し易い点なのですが、その政府がどのような施策を展開するのかを決める力は主権者にあるのですから。
それは、憲法にも明確に示されています。12条です。その前段を引用しておきます。
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。
日米の政府が揃って主張している路線を続けると、やがてどこかで核兵器が使われ、その結果として人類は滅亡するかもしれません。それは、究極の人権侵害ですが、そうならないように、私たち自身の人権を守る、つまり「保持」する義務を私たちは負っています。そのための努力は「不断」にしなくてはなりません。断えることがないとは言っても、寝ている間には努力はできませんので、これを言い換えると、「寝る間も惜しんで」ということなのです。
このブログをお読みの皆さんは、文字通り寝る間も惜しんで頑張っていらっしゃる方が多いと思いますが、世の中には、それほどの覚悟で政治的な問題に関わっている人は少ないのではないかと思います。その状態を少しは改善しなくては、日本政府に核廃絶の先頭を切るように説得することはできません。
政治は数という側面もありますので、もっと多くの市民に覚悟を新たにして貰わなくてはなりませんが、その覚悟の必要性を分って貰うことが、第一歩です。そのために、次の三つの事実は効果があるように思います。
- 国が作り、管理している年金制度による年金の支給額では、高齢者が生活できない。それとは別に2000万円もの貯金が必要だということを、政府の試算が明らかにした。現状では、そのツケは高齢者が払うことになっているが、それは全くのお門違いで、その責任は政府に取らせなくてはならない。
- 戦争とその犠牲について、政府の一貫した考え方は、戦争を起すのは政府だが、戦争の結果生じる犠牲は、国民が甘んじて受け入れ、耐え忍ばなくてはならないということだ。この考え方は「受忍論」と呼ばれ、被爆者援護法を作る上での基本的考え方として示されている。
- 福島の原発事故について、東電幹部に対する訴訟で明らかになったのは、国も、東電も、その他、原発についての施策を推進し、原発で金儲けをしてきた人たちの誰も、事故についての責任は負わなくて良いという無責任政治の本質だ。
このような形で、最終責任を負わされる私たちが現状を変えるためには、今は関心がない人でも、チョッピリ関心を持って政治に関わらなくてはならないのですが、そのためにはもっと多くの人に参加が必要であることを伝え説得して行く必要があります。そして覚悟を決めて政治参加をして貰わなくてはなりません。
そのために何をすべきなのかについても論じたいと思いますが、次回には、その点から始めて、日本政府説得の出発点としての被爆体験の理解、そして核兵器使用による「核の冬」や「核飢饉」等の世界的影響についての情報発信の重要性に言及します。
さらに、それを元にしての政治活動として、地方自治体の力を生かすいくつかの提案、さらにはインターネット利用による情報の共有についての問題提起をしたいと思います。
[2019/9/21 イライザ]
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