アーサー・ビナードさんの紙芝居「ちっちゃいこえ」
アーサー・ビナードが、丸木位里・俊夫妻作の「原爆の図」をもとに7年がかりで制作し、5月に完成したといわれる紙芝居「ちっちゃいこえ」をこの一月の間に2度見る(というか聞くというか)機会がありました。
最初の出会いは、広島市中央図書館の企画展「ヒロシマの記憶を伝える ~町と人々の暮らし~」の関連イベントとして7月21日に開催された「ヒロシマの記憶を伝えること」の会場でした。もう1回は、8月6日にHANWAが主催した⌈8.6ヒロシマ国際対話集会 反核の夕2019」の特別公演として演じられた時です。幸いなことにいずれも、アーサー・ビナードさんの語りによる公演でしたので、「たかが紙芝居、されど紙芝居」、ググッと引き込まれる思いで見ました。
7月21日の会場では、「写真お断り」といわれていましたが、8月6日にはその断りがなかったものですから、つい映してしまいました。公演のためには、写さないほうが良かったのですが。アーサーさん、すみません。
この紙芝居「ちっちゃいこえ」については、「なぜ丸木夫妻の原爆の図なのか」など制作に至る過程や思いについて、アーサーさんがいろいろの場所や紙面を通じて語っておられますので、ぜひそれらを読んでほしいと思いますが、特に印象深いことを少し引用させてもらいます。「原爆というのは核分裂の連鎖反応が起こされ、ピカァァァと破壊力が放たれるけど、それで終わるわけではない。放射線を浴び、放射性物質を吸い込んだり飲み込んだりした生命体は、そのダメージを一生背負い続けなくてはいけない。そこを紙芝居で伝えないと『原爆の図』を踏まえて語る資格はない。そう考えるようになったのです。」そして森滝春子さんとの対談では、丸木俊さんが作成した絵本「ひろしまのピカ」について触れながら「絵本は、広島の人びとがどういう体験をしたかを描いているけれど、ウラン鉱山から始まり黒い雨、残留放射能、死の灰、原子炉、劣化ウラン弾まで延々と続く核被害を描いていないでしょ。核被害の本質を子どもたちに手渡しているわけではない。でも、その本質を『原爆の図』は抱えもっている。」アーサーさんは、核被害の本質をこの紙芝居で表そうとしたのです。
私も何度か、「原爆の図」は見ているのですが、あの絵がこんな形で「紙芝居」になるとは想像もできませんでした。
最後に紙芝居を見たのは何時だったかなと思いだそうとしましたが、思い出すことができません。それほど長い間紙芝居を見る機会はありませんでしたが、アーサー・ビナードさんの語りによるこの紙芝居を見て、紙芝居の新たな力を感ずることができました。そして何より、電気を使わずに演ずることができるのは魅力ですね。語り手のそれなりの技量が必要でしょうが。紙芝居といえば、どうしても子どもたちのものと考えがちですが、この紙芝居は大人にこそ見て欲しいと思います。
いのちとうとし
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