参議院選挙を振り返って ――ブレないことと実現可能性と――
我が国の核廃絶運動が歴史的な厳しさに直面していることを論じてきましたが、その続きは次回に回して、今回は参議院選挙からの教訓をまとめておきましょう。
今回の選挙の特徴を最もはっきり表しているのは、れいわ新選組 (以下、「れいわ」と略します) とNHKから国民を守る党 (以下、「N国」と略します) の躍進でしょう。もっとも選挙後、「れいわ」には秋波を送る野党が続出しているように見えるのに対して、「N国」の国会議員に対する入党の勧誘が否定的に報道されているという違いがあります。それぞれ大切なことではありますが、ここで取り上げたいのは、この二つの政党が何故、多くの人にアピールしたのかという点です。
2年前の衆議院選挙のときにも同じような感想を抱いたのですが、有権者そして国民の多くは、政治の問題点がどこにあるのかをかなり正確に理解しているのです。2017年の選挙では希望の党が生れてからの混乱の中で、立憲民主党が立ち上る意味を多くの人が理解し支持しました。それは、政治とは政治家の野心のためにあるのではなく、国民・市民・生活者のためにあること、そして政治家はこのような人たちのために「全体の奉仕者」として働かなくてはならないという簡単ではありますが、大切な考え方です。しかも、そのような政治を実現するためには、憲法を基本にした民主主義政治が必要不可欠であることも、多くの人が重視した点でした。だから立憲民主党は伸びたのです。
さて今回は、立憲民主党に代って、「れいわ」と「N国」が目立ちました。立憲民主が勢いを失っている理由については、稿を改めたいと思いますが、今回は躍進した二党の主張が多くの人の共感を呼んだ点を強調したいと思います。
《「れいわ」の主張》
「れいわ」の主張は、徹底した「弱者」の救済です。そんな言い方では弱過ぎるかもしれません。「弱者」の人権が守られて初めて、「政治」が機能していることになるという考え方が基本です。それも、イデオロギーとして、あるいはスローガンとして掲げれば良いというレベルではなく、一人一人の人間の「生活」に直結した場で、眼に見える結果が生じるという条件付きです。
「消費税廃止」「安い家賃の住宅」「最低賃金の1500円補償」「障がい者への「合理的配慮」を徹底、障がい者福祉と介護保険の統合路線は見直し」「沖縄・辺野古基地建設は中止。普天間即時の運用停止。」等、こうした考え方を忠実に反映しています。
《「N国」の主張》
さて、「N国」の主張は、NHKを見たくない人にはその権利が保障されること、そしてNHKが、国家主義的な偏向番組を作らないようにすることくらいなのかなと単純に思っていたのですが、もう少し複雑でした。党のホームページの説明です。
NHKからの3つの被害
①経済的被害者【受信料支払い者 約50%】
支払い者【不払い者の分まで支払わされている】
現在50%しか払っていないので月額2,220円、全員が支払えば月額 1,110円に【年間26,640円が13,320円になる】
②精神的被害者【受信料不払い者 約50%】
24時間体制でやって来るNHK集金人【反社会勢力関係者も多数在籍】 からの脅迫行為や裁判の被告になってしまうかも?という不安による精神的被害
③情報的被害者
★公共放送なのに国営放送のような放送をされている。
★反日的な報道をされている。
★福島第1原発の放射能漏れの真実を約2ヶ月間報道しなかった。
★NHK受信料制度の紹介番組を制作していない。
★野球賭博や八百長をしている大相撲を年間30億円の放送権料を支払って 中継している。
まず約800【21,000人】ある全国の市議会や東京都区議会の条例で、 NHK集金人の個別訪問を禁止する条例を制定する。
NHKだけ視聴できないテレビを希望する家庭には、NHKの電波を供給し ない条例を制定する。【NHKスクランブル放送の実施】
★この条例を制定する事により、安心してNHK受信料を不払い出来る。安 心で安全な街づくりを目指します。
「れいわ」の政策に共感し支持したいと考える人が多いことは御理解頂けたとして、「N国」の主張にも耳を傾けたくなるいくつかのポイントがあります。これら両党の主張にアピール力があるのは、現在のわが国の政治・経済・社会が上手く機能していないことの結果として、このような問題が生じているという因果関係も多くの人が理解してからなのだと思います。
しかしながら、それだけでは今回のような「躍進」にまではつながらなかったのではないかと思います。多くの人が漠然とではあっても、現在の政治の問題点だと考えていたような事柄を指摘し、何とかしなくてはという気持を持ったとして、次に目を向けるのは、ではどうすればその問題を解決できるのか、という「解決策」です。
《解決策》
簡単に説明すると、「れいわ」の場合は「消費税の廃止」です。消費税がなかった時代を覚えている人も多くいるでしょうし、消費税率を上げることが可能なら、それを下げたりゼロにしたりすることも当然できる訳ですから、「実現可能性」という点からも合格点を取っている政策だというのが大切なのです。
しかし、それ以上に大切だったのが、特定枠で立候補していた二人です。ふなごやすひこさんと木村英子さんは、重度の障がいのある候補者ですが、社会的弱者自身が国会で自分たちの権利だけではなく、その立場から他の人たちの人権についても発言することの重要性は、言葉ではなく事実として多くの人に伝わりました。
「N国」の場合も、具体策として掲げられているのが、「スクランブル放送」です。有料チャンネルと同じように、お金を払った人だけがNHKを見られるようになるのですから、実現可能性だけではなく、三種類の被害を受けずに済むというメリットがすぐに分る点も多くの人にアピールした理由なのではないでしょうか。
そして、「れいわ」も「N国」も、一貫して何年もこの主張を繰り返してきています。姿勢が全くブレていないのです。これも説得力が増すための大きな力になりました。
最後に、「れいわ」も「N国」も、代表の顔が見え、SNSでも街頭でも、パッションを持って語り続けている姿が、多くの人たちに「この党で行こう」という気持を起させたのではないかと思います。
[2019/8/1 イライザ]
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