核廃絶運動は歴史的厳しさに直面している (2) ――憲法の復権と民主主義の再生が必要――
――憲法の復権と民主主義の再生が必要――
前回復習したように、日本国政府は、これまで、リーダーとして核兵器廃絶のための運動を引っ張って来たのではなく、「他所事」としてしか関与して来なかったと考えて良さそうです。前回の結論部分を繰り返しておくと、核実験禁止条約や核不拡散条約を「まとめたりICJに働き掛けたり、という作業があって初めてこのような結果になる訳ですが、日本政府はどのように関与してきたのでしょうか。「唯一の被爆国」最近は「唯一の戦争被爆国」と世界に向けて発信して来てはいるのですが、その使命を果すべく各国の先頭に立って核廃絶のために汗を流し、難しい利害関係を調整し、その結果としてこのような成果を挙げる上での立役者だったのでしょうか。そう評価する専門家も市民もいないでしょう。「核兵器は国際法違反だ」という趣旨の条約のみならず、意見であれ、会議であれ、何でも妨害してきたのが日本政府、つまり外務省なのですから。」としか言いようがありません。
今回は改めて、核兵器は「国際法違反」であることを世界に認めさせるための動きを妨害してきた日本政府の姿を、被爆者との関連も含めてみておきましょう。
《被爆者を無視する外務省》
1988年、国連の軍縮特別総会に広島からも代表団が参加した時のことです。もう広島に腰を据えて活動していた私も一員として参加しました。慣例として、私たちは、被爆者とともに国連の日本政府代表部に表敬訪問に行きました。対応した外務省の職員は怒りを露わにして、「あなた方がアメリカに来るのは大きな迷惑だ。しかもアメリカが嫌がる被爆者を連れてくるなど以ての外だ」と言い放ったのです。
2013年、国連での会議
1996年には、国際司法裁判所が「核兵器の使用ならびに威嚇は、一般的には国際法違反である」という趣旨の勧告的意見を出しました。その前の年1995年には、その審議のために、多くの国々や国際的NGOがハーグまで出掛けて陳述を行いました。広島・長崎両市長も陳述を行いましたが、もちろん、核兵器は国際法違反であるという主張でした。しかし、外務省は最後まで、両市長に「国際法違反ではない」と言わせようと圧力を掛けました。私は国会議員、しかも外務委員としてこの外務省の考え方が間違っていることを指摘し続け、両市長が誠実に被爆者の代弁ができるよう、援護射撃をしていました。
それと軌を一にして、外務省の高官がとんでもない発言をしていました。「核兵器が国際法違反だなどと言う奴はバカだ」という内容でした。「被爆者はバカだ」と言っているのと同じことです。これは早速外務委員会で取り上げましたが、誰の発言かは特定できないまま、妥協案が出てきました。外務省の事務次官はじめ若手の職員が広島を訪れて被爆者と膝を交えて交流する機会を設けること、そしてこのような機会に被爆体験や被爆者のメッセージについてより深く理解して貰うという合意です。それが今も続いていれば、外務官僚の考え方にも少しは変化が生じたのではないかと思います。
以上を要約すると、外務省、つまり日本政府が被爆者を無視していること、それと関連してアメリカへの忖度が顕著であること、政府の基本的スタンスとして、「核兵器は国際法違反ではない」という主張を国際的に流布していることの三つは確認できました。
しかし、私たちが知りたいのは、日本政府が、なぜこのような姿勢を貫き通して来たのかという理由です。もっと大きな目標といったものがあって、それを実現するためには、上記のようなスタンスが必要になるという形での説明が欲しいのです。「もっと大きな目標」とは何を指すのか、もう少し日本政府の核政策を吟味してみましょう。それは次回に。
[2019/6/21 イライザ]
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