「広島平和記念都市建設法」制定70周年
今年は、広島の復興に大きな役割を果たした「広島平和記念都市建設法」が制定されて70周年です。その70周年を記念するシンポジウムが、昨日原爆資料館メモリアルホールで開催されました。毎週土曜日に開催されてきた 「ヒロシマの再考察・外国人被爆者(非軍人)」の第4回講座が同時刻で開催されており、どちらに行こうかと迷ったのですが、講座を欠席しこのシンポジウムに参加しました。
シンポジウムの内容を紹介すべきですが、最初にこの法律が制定されるまでの経緯を簡単に触れてみたいと思います。
一発の原子爆弾の投下によって一瞬のうちに廃墟と化した広島市をどう復興させるのか、様々な人たちが知恵を絞りたどり着いたのが「広島平和記念都市建設法」という法律でした。当時全国に110余りの戦災都市がり、国には広島市のみを特別な財政援助を与える余地が全くありませんでしたが、要望活動を繰り返す中で考え出されたのが、憲法第95条を活用した「特別法」の制定でした。広島市と長崎市が、初めて国会に特別の援助を請願したのは、1946年(昭和21年)8月29日でした。当時は、具体的な反応はなかったと記録に残っているようです。その後も請願書の提出などの働きかけがあったようですが壁は厚く、それを乗り越える方法として考え出されたのが、特別立法という手法でした。この方法を提案したのは、当時の参議院議事部長の寺光忠さんでした。最終的には、議員立法として提案され、1949年5月に衆議院、参議院とも委員会の審議を省略し、討論なしで満場一致で議決されました。急転直下の成立だったと記録されています。そして、憲法95条の条文「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することはできない。」に基づいて、7月7日に全国で初めての住民投票が実施されました。その結果は、圧倒的多数の賛成を得ることができ、被爆4周年の8月6日に公布されました。
法案作り中では、広島市に「平和都市」という名称を使うことについての論議があったようです。1986年に広島市が主催し、当時の関係者による「広島平和記念都市建設法の制定の当時を振り返って」という座談会が開催されたのですが、その中で先に紹介した寺光忠さんが、長崎市との関係について次のように発言されています。「私が断った(いのちとうとし注:長崎市も平和という名称を付けることを希望していた)一番大きな理由は、世界にただ一つの国際平和の象徴都市をつくろうという法の大精神がですね、長崎が加わることによって壊れる、それじゃだめだと。広島だけがただ一つの平和都市だとしなければ、法の精神が成り立たないということで、長崎の執拗な申し入れは断ったのです。・・・長崎は、国際平和都市法ということで、これでいいと決定したわけですよ」。これを読むと、広島市につけられた「平和都市」という名称の重みと責任が改めて感じさせられます。
法律の制定経緯について長くなりましたが、最後に、シンポジウムで印象に残ったことにも少し触れておきます。基調講演を行われた篠田英朗東京外国大学大学院教授は、その後のパネルディスカッションの中で次のように話されました。「ある意味で復興という意味では、この法の目的を達成していると言えます。それとともに広島が歩んできた実績がすごいと思います。・物理的には美しい街が作られたこと。 ・平和の概念が驚くほど浸透していること。世界平和ということが広島では当たり前のことになっている。 ・最大の特徴は、証言文化です。世界に平和博物館がたくさんあるが、証言ということがほとんどない中で、体験を積極的に語りテーマ性があるということはすごいこと」。そして「平和都市とは、平和について考える人が出会う場」だと締めくくられました。
広島が本当にそうなっているのかと自問自答しながら、これからの私の運動でどんなことが必要になっているのかをもう一度考えさせてくれたシンポジウムでした。
いのちとうとし
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