核廃絶運動は歴史的厳しさに直面している ――憲法の復権と民主主義の再生が必要――
核兵器禁止条約採択以降の世界と日本の状況、特に日本国内の状況をどう考えれば良いのかがテーマです。それについては、「新・ヒロシマの心を世界に」の中で、木原さんが、報告と感想を書いてくれていますが、私なりに補足をしておきたいと思います。
https://kokoro2016.cocolog-nifty.com/shinkokoro/2019/06/post-7317cc.html
① 第一に、現在の核廃絶運動を一言で表現すると、タイトルに書いたように、「歴史的厳しさ」に直面していると思います。そう「断定」するのにはいくつかの理由があります。それをこのスライドで示しておきましょう。
(ア)ヒロシマ・ナガサキ以降、核廃絶の方向に向っての大きな出来事をいくつかピックアップすると、1963年の部分核停条約、1963年に採択され1970年に発効、そして1995年に無期限延長された核不拡散条約、1996年の国際司法裁判所 (ICJ) による勧告的意見の採択、そして2017年の核兵器禁止条約の採択くらいになるでしょうか。
(イ)さて、こうした条約をまとめたりICJに働き掛けたり、という作業があって初めてこのような結果になる訳ですが、日本政府はどのように関与してきたのでしょうか。「唯一の被爆国」最近は「唯一の戦争被爆国」と世界に向けて発信して来てはいるのですが、その使命を果すべく各国の先頭に立って核廃絶のために汗を流し、難しい利害関係を調整し、その結果としてこのような成果を挙げる上での立役者だったのでしょうか。そう評価する専門家も市民もいないでしょう。「核兵器は国際法違反だ」という趣旨の条約のみならず、意見であれ、会議であれ、何でも妨害してきたのが日本政府、つまり外務省なのですから。
(ウ)このような日本政府の姿勢が続いてきた理由があるはずです。それは何でしょうか。一つとして、日本政府にとっては、核廃絶のための努力の結果が、どのような状態を生み出したとしても、「他所事」として、あまり関与しなくても良かったからなのかもしれません。ただし、後で述べるように、日本政府にとって核兵器禁止条約はそれとは一線を画さなくてはならない「重大事件」です。
(エ)「他所事」で済ますことが出来たのは、まず部分核停では、制約を受けるのは核保有国だけなのですから、日本は関係ありません。核不拡散条約も、有名無実な条約だとも考えられますので、日本政府の本音から判断すると、余り心配しないで良い条約なのです。それは、この条約が本当に効力を発揮するためには、核保有国と非核保有国それぞれに課されている義務をそれぞれが真摯に受け止め、果さなくてはならないからです。
(オ)それを理解するためには、核不拡散条約の三つの柱を知る必要があります。
①米、英、ロ、仏、中の5つの核保有国以外の国が核兵器を持つことを禁止する(不拡散)。
②すべての国に核エネルギーの平和利用の権利を認める(平和利用の権利)。
③すべての国は核兵器全廃のための条約を誠実に交渉しなければならない(誠実な交渉義務)。
(カ)しかし、第三番目の誠実な交渉義務を核保有国が果していないのですから、非核保有国が、不拡散の義務を果さなくても良いという理屈は成り立ちますし、インドやパキスタン、イスラエルそして北朝鮮の例が示しているように、核を持ちたいのならこの条約から脱退すれば良いだけですので、不拡散の義務は存在しないと解釈しても問題はないのです。
(キ)この中で、二番目にある「核の平和利用」さえ使えれば、日本政府としては文句がないという考えだったとしてもおかしくはありません。
国際的な大きな出来事が、日本政府にとっては「他所事」である理由を説明してきましたが、核兵器禁止条約については、日本政府は今までとは違った対応をしなくてはならないことを知っています。この点について、そしてそれでは日本政府はどういう態度をこれからとるのかについては、次回に。
[2019/6/21 イライザ]
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