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2019年5月13日 (月)

在朝被爆者問題を考える―その3 対厚労省交渉

在朝被爆者支援全国連絡会議(原水禁、平和フォーラムなどで構成)は、帰国後その実情を踏まえて政府への要望書提出を検討しましたが、当時2回目の米朝首脳会が予定されており、期待を持ちながらその成功を見守ることとし、昨年中の政府要望を先送りにしました。しかし、今年2月の米朝首脳会談で大きな成果が得られなかったため、4月22日に厚生労働大臣に対し次の4項目を柱とする要望書を提出するとともに、担当者(厚労省原子爆弾被爆者援護対策室)からの意見を質しました。

①、在朝被爆者について、何ら対策が取られてこなかった現状について、率直にお詫び・反省し、朝鮮人被爆者の支援について、基本的な方策を明らかにすること。

②、在朝被爆者支援のため、現状を早急に把握し、被爆者援護法に保障されている権利を実現するための方策を確立すること。

③、在朝被爆者が被爆者健康手帳を取得することが困難な状況にあることを認識し、放射線等による被害と高齢化のため、健康状態が深刻化している現状に鑑み、人道上の立場から、緊急の対策を講じること。被爆2世、3世への対策も講じること。

④、以上のような対策を実現するため、共和国と公式、非公式の協議を直ちに開始すること。

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 事前に届けていたこの要望に対する政府の回答は、予想されたことでしたが全く誠意のないものでした。もちろん、担当者レベルで回答できるような中身でないことは充分承知はしていましたが。その最たるものが、「在朝被爆者に対する支援について」として手渡されたペーパーの1番目に書かれていた「在朝被爆者の実情」です。そこに書かれていたのは、「2001年の被爆者実態」でした。あまりのひどさにただ唖然とするばかりでした。確かにこの年、政府は在朝被爆者調査のため、最初の「外務省・厚生労働省合同調査団」を共和国に派遣しています。しかし、その後政府として調査のための訪朝をしていないといっても、18年前の実態しか把握していないというのですからあきれてしまいます。2番目以降に記載された支援策(例えば健康管理手当が海外からも請求できるようになったなど)も、一般的な在外被爆者対策の変遷を羅列しているだけだったのです。

政府は、2001年の調査の際、被爆者協会と面談しているのですから、当然被爆者協会の存在は承知しています。にもかかわらず、その後一度もコンタクトをとっていないということになります。私がその場で強く指摘したのは「少なくとも被爆者援護法適用が在外被爆者に拡大された時には、そのことをその都度被爆者協会を通じて周知するのが当然だったはず。なぜ朝鮮被爆者協会には、連絡しなかったのですか」ということです。政府は、常々「国交がないからといって差別することはない」と公言していますが、何の連絡すら取らなかったということは、結局「在朝被爆者には、被爆者援護法は適用しない」という政府の姿勢を示しているといわざるを得ません。安倍政権の対共和国政策が、こうした政府の姿勢を作り上げる結果になっているのです。その間にも、在朝被爆者は、何の支援も補償も得られないまま命が奪われていくことになっているということです。この交渉の中で、すぐにも朝鮮被爆者協会に直接周知することを強く求めました。仮に周知したからといって、すぐに前進するとは考えられませんが、そんな小さなことからでもスタートするしかないと思います。

そして、もし少しでも、在朝被爆者のことを考えるのであれば、朝鮮被爆者協会が、一貫して求めている「人道的立場に立った医療支援」を急ぐことです。私たち、「いまの日朝関係の中で、在朝被爆者に対して具体的に何ができるのかを検討する」よう求めて、この交渉を終わりました。とにかく、どんな小さなことでも具体的なことを実践することこそが、「国交がないからといって差別しない」ということを示すことになるはずです。

いのちとうとし

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