問われる日本の核政策
4月29日から2020年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた第3回準備委員会が、ニューヨークの国連本部で開催されています。核兵器禁止条約が採択されて初めてのNPT再検討会議が成功するかどうかが問われる極めて重要な準備委員会といえます。
この会議に先立つ4月23日、外務省と核兵器廃絶日本NGO連絡会(原水禁国民会議や日本被団協、ピースボートなどで構成)との意見交換会が開催され、私も核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)を代表し参加しました。意見交換会のすべてを報告できませんので、私の感想を少し報告します。
会議は、最初に核兵器廃絶日本NGO連絡会を代表して日本被団協の木戸季市事務局長と私が、13項目にわたる「日本の核軍縮・不拡散政策に対する質問と要請」を辻清人外務大臣政務官(自民党衆議院議員岸田派)に手渡してスタートしました。13項目の要望は、大きく括ると「核兵器禁止条約について」「核兵器国によるNPT第6条の履行について」「INF条約失効について」「核抑止の危険性と核抑止からの脱却」「朝鮮半島の非核化交渉について」「日本の余剰プルトニウムについて」「NPT準備会議に向けて」といずれも大きなテーマですから、わずか1時間で議論の深まりを期待することはとても無理だと思いながらの参加でした。
私がこだわったことは、核兵器禁止条約と核抑止政策の問題でした。辻政務官が、私たちの「質問と要請」に対する外務省の回答の中で「核なき世界という最終目標は共通しています。ただそこへのアプローチに違いがあります。」との考えを示しました。さらにその後のやり取りの中でも「最終目標は共通だ」ということを繰り返すものですから、私はどうにも我慢が出来ず、少し強めの口調で意見を述べました。「『最終目標は共通している。ただアプローチが違う』といわれたが、核抑止論を正当化する政府とたちとは根本的に考え方が違う。」と。その上で、「外務省のホームページでは、核兵器禁止条約に署名できない理由の一つとして北朝鮮の核保有を挙げているが、北朝鮮が核兵器を放棄したら署名するのですか。いったいどういう条件が整えば、日本政府は核兵器禁止条約の署名するのですか。国民にわかり易く説明してください。」と質しました。核抑止に固執しているのですから、私の質問に対する明快な答えはありません。圧倒的多くの国民が、「核兵器禁止条約の批准」を求めているのですから、もっと具体的にそこへの道を示すことが出来なければ、国民の理解を得ることはできません。
もう一つは、常套句のように「唯一の戦争被爆国」ということです。辻外務大臣政務官も「唯一の被爆国として、被爆体験を踏まえたうえで発言していきたい」と繰り返し発言していましたが、残念ながら「核抑止は、厳しい安全保障環境の中では、現実的なアプローチ」という考えに固執する限り、それは被爆者の思いを踏まえたことにはなりません。被爆者の声を幾度聞いたというのでしょうか。
外務省にもかつて、本気で被爆者の声に応えようとした時期がありあす。1994年から始まった「広島の被爆者団体と外務事務次官との懇談会・外交の窓in広島」です。この「外交の窓in広島」は、第1回の斎藤邦彦事務次官以来2007年の谷内正太郎事務次官まで5回にわたって開催されました。いずれも外務事務次官が、被爆者と直接話し合うことを目的に広島に足を運んでの懇談会です。原水禁の代表委員秋葉さんが、衆議院議員の時提唱し実現したことです。本気で「被爆体験を踏まえ」「唯一の戦争被爆国」として外交に臨むというのであれば、いま一度原点に立ち戻った行動こそ必要ではないでしょうか。
明後日もう一回このテーマで報告したいと思います。
いのちとうとし
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