広島平和記念資料館 本館展示リニューアル内覧会に参加して(その1)
広島平和記念資料館(通称:原爆資料館)本館の展示リニューアルに計画の段階で関わった者として、完成内覧会に参加しました。
5月3日からのフラワーフェスティバルの準備が付近で進められる中、原爆資料館本館は耐震工事の仮囲いに囲まれて、遠慮がちに佇んでいるように見えました。
資料館東館の入り口で警備員に案内状を示して、エスカレーターで3階の「導入展示」ゾーンに向かいました。東館は本館に先駆けて2年前にリニューアルオープンしており、今回、本館がリニューアルオープンすることで、原爆資料館の常設展示全体が完全版として完成することになります。導入展示の見せ場は広島の被爆前と被爆直後の様子を示す大型のパノラマ模型。家々が立ち並んだ街が原爆で壊滅した様子が模型の上に繰り返し映し出されますが、ここはリニューアル以降何度か見ているので今日は立ち止まらずに通り抜けて、本館への入り口へ。係の方に再度、案内状を示して本館への渡り廊下に通してもらいました。
最初に目に入るのは頬に包帯を当てた少女の写真。渡り廊下正面、突き当たり部分で来館者を見つめています。
その写真を通り過ぎたところに直後のキノコ雲や人々の惨状を示す写真があり、さらに進むと、少し広がったところ、以前、被爆後の広島のパノラマ模型があった部分にたどり着きます。ここでは、原爆の途方もない破壊力を示すひび割れた壁や折れ曲がり破断された鉄骨などの大型の被爆資料を背景にして中央部分に大きな展示ケースがしつらえられ、中には被爆した子どもたちが身にまとっていたいくつもの衣類が並べられています。
さらに進んでいくと、放射線の被害や救護所の惨状、さらには「生きる」と題して体と心に傷を抱えながらも生きていく人々を取り上げたコーナーが続きます。
と記してはきたものの、新しい展示の具体的なこと、印象はきっと新聞やテレビで報道されることでしょう。ですから、ここでは私なりの感想をいくつか記します。
- 人を強く意識させる展示になっている。今回の展示のリニューアルでは傷ついた人々、亡くなった人々の遺品がより多く展示され、それにまつわるストーリーも添えられて、原爆による都市の物理的な破壊はもちろんのこと、そこに暮らす人々が被害を受けたということがより強く訴えられているように感じました。
- 広島の原爆被害については「ただ一発の原爆により、広島の街は壊滅し、居合わせた人35万人のうち、年末までに約14万人が亡くなった」と説明されます。私は被爆者と交わり、体験記を読む中で、35万人あるいは14万人を数字としてではなく一人一人の存在の積み重ねとしてみるようになっていきました。さらには亡くなった方々それぞれには悲しみに暮れる遺族がいたことにも思いが巡っていきます。以前の資料館の展示でも、学徒の遺品に向き合うと、亡くなった将来ある子の無念や子を失った親の悲嘆に思いが巡り、さらには我が子がこのような目に遭ったらと重ね合わせて考えるといたたまれなくもなったものでした。
- 展示資料の入れ替え
資料館には多くの被爆資料があります。かつて展示されていた資料はそれにまつわるストーリーとあわせて写真集などで紹介され、有名になっていました。しかし、特に衣類の場合、展示ケースの中に入れて保護してはいますが、長く展示しているとどうしても劣化してきます。これらの資料を収蔵庫に収めて休ませる必要があると思っていました。今回のリニューアルで3人の中学生の遺品などいくつかを除き、殆どの遺品・被爆資料が入れ替えられていました。資料館の担当者の話では展示資料は時々入れ替えるということなので、被爆資料は時々収蔵庫で休みながら今後とも長く被爆の惨状を伝えてくれることでしょう。少しほっとしています。
ところで、本館への渡り廊下の突き当たりに展示された少女の写真についてですが、何かを訴えかけているようにも見えます。「広島に引き起こされた実際をどうぞご覧ください」とでも言っているのでしょうか。本館の展示を見終わった後、東館の展示に戻る渡り廊下に入る手前に少女のその後についての説明がありました。後障害で亡くなったというのです。その説明を読んで私はもう50年くらい前、当時の資料館の展示の最後の部分で上映されていた映画のワンシーンを思い浮かべました。生き長らえながらも後に原爆の影響で命を落とす姉弟が映し出され、宇野重吉のナレーションが「私たちはもうすぐ死んでいきます」というようにかぶせられていたと記憶します。映画の中の姉弟は自分たちの余命が長くはないことをまだまったく知らないとはいえ表情はどこか虚ろです。今回のリニューアルで使われた少女は痛みをこらえているように、あるいは羞み微笑んでいるようにすら見えますが、同じようにいずれ命を落とすという運命が待ち受けているのです。そのように原爆は人の命をもてあそぶものであることを訴えかけているのかも知れません。
2019年4月23日記(こういちろう)
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