裁判官を忌避します―安保法制違憲訴訟
昨日(4月17日)、安保法制の違憲判決を求める「安保法制違憲訴訟」の第9回口頭弁論が、広島地裁304号法廷で行われました。
今回、裁判官の一人が交代するということで、裁判の更新手続きが行われ、原告弁護団は、これまでの準備書面による主張を要約し、意見陳述を展開しました。最初に和田森弁護士からは「なぜ提訴したのか」という基本的な主張を、続いて石口弁護士は、憲法の前文なども引用しての「平和的生存権」の侵害について主張、さらに山田弁護団長は、「三権分立による裁判所としての違憲立法審査権の行使」の重要性を主張するとともに、「訴えの利益論や原告適格のみで裁判を進行させるべきでない」ことを強調するなどそれぞれの立場から意見陳述が行われました。さらに前回の公判以降提出した「憲法改正決定憲論」など三つの準備書面についての意見陳述。特に、和田森弁護士は、被告(国)が、本件訴訟の最大の争点である「安安保法制の集団的自衛権と同行使、および関連する箇所について、認否を回避している」ことについて、「通常の訴訟追行の態度としてはあり得ない」ことを主張し、認否を明らかにすることを求めるとともに、裁判所に対しても「請求原因事実に関わる争点に関わる認否をさせないまま判決を下すことは通常考えられない」とし、「被告に認否を明らかにするよう釈明権を行使すべきだ」と求めるとともに「その結果に基づいて争点整理を進めるべきだ」と主張しました。
しかし、小西裁判長は、これらの原告主張を無視して「権利侵害の立証をすべきだ」「とにかく次回までに立証すべきだ」と繰り返すのみです。しかし、群馬地裁では、原告団の同様の主張が認められ、「被告に認否を明らかにする」ことを求め、「その結果で、争点整理を行う」ことが認められています。
原告の主張を全く無視する小西裁判長の訴訟指揮に対し、山田弁護団長は「そもそも違憲判断を前提としなければならない裁判のはず。このままの裁判官体制では、公正な審理を続けることはできない」と「裁判官忌避」を言い渡し、昨日の公判は終了しました。
今後は、原告弁護団が、忌避の理由を提出し、それに基づいて裁判所が別の裁判官によって妥当かどうかを判断することになります。全国の安保法制違憲訴訟では、広島以外にも東京地裁など二か所で「裁判官忌避」が行われていますが、残念ながらいずれも却下されています。
「裁判官忌避」の結論がどのようになるかわかりませんが、この裁判で起きている問題は、日本の裁判制度の深刻な状況を提起しているように思います。原告が強く主張しているように、日本国憲法は、三権分立の制度の下、第八一条で「違憲立法審査権」を与え「憲法の番人」としての役割を求めるだけでなく、第七六条で裁判官は、「憲法及び法律にのみ拘束される」とし「裁判官の独立」を認め、第七八条では「裁判官の身分の保証」を明記し、その実行を求めています。しかし、現実の行政裁判では、「訴える資格(具体的な不利益を被っている)があるのか」という「原告適格」がまず問われ、ほとんどの裁判が、結果として具体的な違法性の判断を回避し、国会の立法行為が追認しています。事実上憲法が要請している「違憲立法審査権」という重要な役割を放棄しているのが現実です。安保法制の場合、もし具体的不利益が発生した時ではもう遅いということです。
私もかき船裁判の経験から、いかに行政訴訟のハードルが高いかを実感しています。これでは、主権者である国民のための、国民が求めている裁判制度とはとても言えません。
いのちとうとし
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コメント
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お疲れ様でした。
私も忌避申立は何回もやっていますが,認められた試しがありません。
ほとんど無意味な条文に成り下がっているのが実務の現状ですね。
投稿: ふぃーゆパパ | 2019年4月18日 (木) 15時56分
ふぃーゆパパさま
コメントありがとうございます。そうですか。忌避申立、何度も経験されているのですね。私も、裁判の傍聴には何度も行っています(今回は、原告の一人として)が、忌避は初めての経験でした。別の裁判官が判断するといっても、裁判官仲間ですから、残念ながら結論は見えている気がします。
この問題だけでなく、現在の裁判制度というか裁判所の姿勢には、いくつも問題がありますね。しかし、それでも裁判に訴えるしかない問題も多くありますので。
投稿: いのちとうとし | 2019年4月18日 (木) 17時37分