見返り

2024年8月25日 (日)

#目に見える #見返り ――#同級生の投票行動から考える・第12回――

#目に見える #見返り

――#同級生の投票行動から考える・第12回――

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#労働者 #不満解決

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東京都知事選挙を出発点にして、選挙や労働組合における「当事者意識」について考えてきました。大上段からの議論をすれば、選挙に行ったり労働組合に入ることは、自らの権利を回復しそれを守ることになります。それが、抽象的な意味での「見返り」です。

でもそれだけで人を動かすことは難しい、と言うまでもないのですが、基本的に人間が即得勘定を元に行動する動物だと考えると、見返り、それも「目に見える」形の見返りが必要です。

組合に焦点を合わせて議論すると、組合員になると給料が良くなるとか、組合員になると出世ができるという「見返り」があれば、それは組合員を増やすうえでのプラスになります。でも、ちょっと考えるとこれは本末転倒で、そもそもの組合の目的とはそのような結果をもたらすことです。とは言え、仮にこのような因果関係が示せれば、組合員獲得のためには役だちます。

組合のメリットを考える上で、給料が上がるというプラス面とは逆の場合を考えましょう。働くことについて、従業員の側に不満がある場合です。パワハラや残業時間の強制等が頭に浮びますが、それを個人で問題提起するのは勇気も必要ですし、逆にいじめにあう場合も考えられます。それを組合が代弁するという重要な役割を担っているのですが、当然どんな組合もこのような機能は重点的に果たしてきています。勿論、会社側も力を入れてはいるでしょうが、それでも残業の多さが何人もの命を奪うほどの結果を招いているのですから、改善の余地はあります。

そのような働く側の不満を会社側に伝える、つまり代弁して改善するという役割は組合の本質的な使命ですが、より幅広く、選挙に候補者を支援して、政治の場で組合員の代弁をして貰うという活動も可能です。国政選挙だと、候補者との距離があるかもしれませんが、自治体レベルの選挙なら、自分たちの属する組合の誰かを候補者として出すことも可能ですので、これも大切な活動です。そして誰かを当選させたという満足感・達成感も貴重です。

組合本来の目的とは離れて、組合に入ると、良い人ばかりで(ということは実際にはないかもしれませんが)、楽しいとか、組合のイベントがどれも魅力がある、あるいは組合に入ると素晴らしいコンサートとか芝居が見られるといった「付加価値」が存在することで、組合員を増やすことも可能です。今でも続いて活動しているようですが、かつては「労音」が有名でした。

我が国の労働組合のほとんどは、企業別に組織されいますので、経営者の役割と組合の役割との間の境界線が分り難いのですが、その理由の一つは、「家制度」です。天皇制が先か家制度が先なのかはさておいて、かつての日本企業はそしておそらく今で多くの企業は、家制度をモデルに組織されています。そして多くの組合も家制度から抜け出せないままに時を刻んできたきらい委があります。

そこから離れる一つの可能性として、職能別の組合の役割を考えてみましょう。この場合、組合と経営者との間の関係は、組合員でないと仕事ができないという「クローズドショップ」という関係になると思われます。そんな場合、例えば配管工は配管工の組合員ですし、彼/彼女の給料や仕事をする上での条件等は、組合が複数の企業と交渉して決めますので、組合員であることのメリットはかなり明確に分ります。

職能別の組合になると、家制度を模して組織を作ることからそれなりの距離を取ることができるようになるはずですから、組合員としての自覚も違ったものになるはずです。実現できるかどうかは、別問題ですが、思考実験としてこんなアプローチを考えてみても良いのではないでしょうか。

そして、職能別組合であれば当然のことなのですが、組合の持つ「技術力」を手段として生かすことが、「当事者意識」を高めるために役立ちます。本ブログで比較した、石丸候補支持者と蓮舫候補支持者の使った典型的広報手段の違いがその典型です。

純粋で人の心に届く手段で時間を掛けての説得は、人間的な感動とともに新たな仲間を作ります。逆説的になりますが、新たなSNSという技術を介在させると、頭を通す暇もないように短時間での発信が、とんでもない速さで仲間を増やして、結局は力になってしまうという現象も現れています。そして、純粋で心を込めてのメッセージを発したい人たちがこのような技術を使うことも可能です。

とは言え、そこにAIのような、多くの人には理解の範疇には入らない技術が登場するとまた絵柄が変ってきます。ではどうすれば良いのか、このシリーズだけを続けられませんが、結論の部分に移れればと思います。

 

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[2024/8/24  人間イライザ]

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2024年8月23日 (金)

#ユニオンショップ は #建前 ――#同級生の投票行動から考える・第10回――

#ユニオンショップ #建前

――#同級生の投票行動から考える・第10回――

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#本来は #社員全員が #組合員

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東京都知事選挙を出発点にしての、選挙についての論考ですが、「当事者意識」を持つことと広げることに焦点を合わせています。具体的に考える手段として、労働組合員の数が減り、組織率も下がっていることを取り上げています。念のため、厚労省のサイトから、組合員数の推移等のグラフを引用しておきます。

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減少の理由について、かなり乱暴なのですが、組合員になると時間とお金を費やさなくてはならないのに、賃上げ等の「果実」は非組合員でも貰うことができる、と短絡的にまとめました。

同時に頭をかすめたのは、昔習った「ユニオン・ショップ」という言葉と、アメリカでは、例えば舞台での仕事をしようとしても、組合に入っていないと仕事ができないという体験談を昔聞いたこと、そして本ブログ読者のMさんからの指摘でした。

ある程度の知識をお持ちの方には、素人談議になるかもしれませんが、以下、ネットで調べた結果です。分り易かった「弁護士による企業法律相談」によると、

ユニオンショップ協定とは、会社が労働者を雇用する場合、採用された労働者は必ず労働組合に加入しなければならず、もし、組合に加入しなかったり、組合を脱退又は除名された者については、会社はその労働者を解雇しなければならない、とする労使協約のことを言います。

ユニオンショップ協定は大企業の企業内労働組合によく見られます。ただ、協定の内容が「原則として解雇する」、「但し、会社がその者を特に必要と認める場合は解雇しないことができる」と規定され、その拘束力が弱められていることが多いのが現状です(尻抜けユニオン)。

しかし、このような内容の労使間の労働協約の一種であるユニオンショップ協定がどのくらいの企業で締結されているのかという数字がなかなか見付かりません。ようやく見付けたのが、Hupro Magazineですが、このサイトでは、2016年以降、厚労省のサイトでは「ユニオンショップ」という言葉が消えてしまったそうです。とは言え、2013年の数字では、66%ということですので、それなりの企業がユニオンショップ制を採用していることになります。

組合のある企業に入ると、組合員にならなくてはいけないのなら、組合員数がどんどん減って行くという傾向はおかしいことになります。でも現実がそうなのですから、その理由を探したくなります。お決まりの建前と本音が頭に浮びます。

結論だけを簡略に述べると、日本政府は労働組合制度や労働組合についての法律や条約を忠実に遵守する気持ちがないということです。極端に言ってしまうと、憲法にその規定があるので労働組合は認めざるを得ないけれど、そこに規定されている労働者の権利を労働者一人一人の立場から擁護するという意識がないに等しい、と言っても良いように思います。特に労働時間については、8時間労働制を規定しているILO1号条約等の条約を批准していないのですから、それだけで「先進国面」を続けている資格さえないのです。

政府が事ある毎に労働者の権利を蔑ろにしていれば、労働組合が衰退するのは目に見えています。そんな劣悪な環境の中で、労働組合活動を続けている皆さんには敬意を表する以上のことをすぐ実行できないのが歯痒い限りです。でも、「目に見える見返り」を俎上に載せる前にこの点に気付くことができ、「当事者意識」をより広く解釈すべきことになりました。

続いての議論にお付合い下さい。

 

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[2024/8/23  人間イライザ]

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2024年8月20日 (火)

#当事者意識は #なぜ広がらないのか ――#同級生の投票行動から考える・第9回――

#当事者意識は #なぜ広がらないのか

――#同級生の投票行動から考える・第9回――

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#労働組合 #権利意識 #目に見える見返り

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東京都知事選挙を出発点にして、選挙についての論考を続けています。

寄り道をしましたが、本筋に戻って、817日の本コラムでは、無党派層の人たちが選挙で投票に行く気持になるのは、何らかの意味で「当事者意識」が生まれたときだ、という結論にたどり着きました。

その「当事者意識」を三つに分類しました。

  1. 損得勘定、つまりお金の問題
  2. 好き嫌い
  3. 現状を打破したい

このコラムの基本姿勢は、私たちの好むと好まざるとにかかわらず、選挙における投票行動を観察して、それをまとめることで教訓を得ることでした。ただし、これまでは「好むと好まざるにかかわらず」を強調した積りです。その結果が、具体的形を伴った「当事者意識」を持つことが投票を促すという考え方です。

これからは、それを前提に、具体的に例示した三つの当事者意識の良し悪しという判断は別にして、それを広げるにはどうすれば良いのかを考えてみましょう。

「好き嫌い」の中には、候補者の所属政党(直前に離党した場合も含めて)についての評価等も含まれますが、候補自身に対する好き嫌いとなると、それが大切な要素ではあっても理由は様々ですし、対応の仕方が難しいこともありますので、何れ考えることにして先送りしておきましょう。

さらに817日のブログの検証での「当事者意識」は何を指しているのか、もう少し丁寧に考えてみましょう。政治を良くすることが、自らの損得だと考えられる人は当事者意識を持っていると考えて良いでしょう。

この場合、「政治を良くする」という自覚があるのですから、つまり「現状打破」という目的を意識して持っている人たちだと考えらます。その前提として、「現状」についての認識がかなり明確にある人たちだということになります。この人たちを仮に「認識派」と呼んでおきましょう

対照的に、投票することが自分の損得と関わっているとは意識していない人たちについて考えてみましょう。これらの人たちは、「非認識派」です。

中でも、強いイメージかあったり、魅力的であったりする候補が出てくることで、その人に一票を託したいと考える人たちの場合、仮に言葉にできない、あるいは行動にまではつながらない何らかの不満やモヤモヤしたものがあって、それが、具体的な候補の出現によって顕在化したと考えられると思うのですが、如何でしょうか。政見放送を聞いたり、街頭演説を聞いて投票に行こうと決めた人たちについても同じことが言えそうです。

ちょっと乱暴ですが、「認識派」と「非認識派」の違いとして、自らの権利を自覚しそれを守ろうとしているかどうかとまとめたいと思います。

「非認識派」とは、自らの権利についての自覚がない場合と、自覚があってもそれを守れるとは考えていない、あるいは守ることが難しいと通常は諦めている、または仕方なく守れないと自らを説得してしまっているような人たちだと定義して良いのではないかと思います。

もう少し具体的に議論するために、「認識派」の重要な組織である労働組合の問題として考えてみましょう。その他にも「認識派」の実例はありますが、ここでは思考実験のために一つだけに話を限定します。

つまり、当事者意識を広げるという課題を労働組合を広げる、あるいは組合員を増やすという限定したケースとして考えようという提案です。

もう私の言いたいことは伝わってしまったかもしれませんが、現実として、残念なことに労働組合の組織率も組合員数も減少傾向にあります。その原因を探ることが、選挙で勝つための戦略につながることもお分り頂けたと思います。

労働組合の現状について、私は関心を持ちつつも直接関わった経験はありませんので、何方か内側からの知見や専門家としての知識で、私の考え方を訂正して頂けると有り難いと思っています。その上で、私見を述べさせて頂ければ、労働組合に参加したいと考える人が少ないのは、参加した場合の見返りについて、多くの人はメリットがないと考えているからではないかと思います。

組合に入れば、組合費という出費が必要です。さらに、組合活動のためには時間も必要になります。時間とお金をかけて組合に入った結果として、直接感じることのできる具体的な「見返り」は何なのでしょうか。

ここは訂正が必要なら、コメントをお願いしたいのですが、賃上げの交渉は組合が行いますが、その結果として、給料が上ったとしてましょう。でも、その場合、組合に入っていない人の給料も上がる訳ですから、組合の努力があって初めて給料が上がったとしても、「だから組合に入ろう」というインセンティブにはなり難いのではないでしょうか。

この場合、「因」の一部にはなっていなくても、「果」は貰えると多くの人は考えるのですから、組合の衰退につながります。

さてどうすれば良いのか、次回に続きます。

 

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[2024/8/20  人間イライザ]

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