黄禍論

2024年3月22日 (金)

#日露戦争後 の #対日評価 ―― #称賛 と #差別 と、#両極端に分かれます――

#日露戦争後 #対日評価

―― #称賛 #差別 と、#両極端に分かれます――

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加藤陽子著『それでも日本人は「戦争」を選んだ』

#お勧めします

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前回は、日露戦争に勝利した日本ではどのような教育をしているのか、という疑問に対する答として、「教育勅語」を外国語に翻訳して海外に知らせたということを取り上げました。でもその他の理由もありました。

その一つは不平等条約の改正です。簡単な説明は、ブリタニカ国際百科事典の解説を御覧下さい。

1854年の日米和親条約以来、治外法権や最恵国待遇等の点で不平等な国際条約に縛られていた明治政府の悲願の一つが条約改正でした。それは、1911年に実現したのですが、そのための対策の一つが、日本国内の法的整備であり、さらに日本が欧米諸国と肩を並べられる文明度を持つ国家であることを示すことでした。

憲法の制定、刑法や民法、商法等の整備は前者の一部でしたし、鹿鳴館外交や鹿鳴館時代と呼ばれる努力は後者の典型でした。教育勅語の内容を海外に伝えることは、その両者の意味を持っていたと思われます。

条約改正に、日露戦争の勝利が役立ったのは勿論です。それは、日本の前向きのイメージが世界に広まったからなのですが、トルコの革命にはもっと直接的な影響を与えています。加藤陽子著の『それでも日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社、2014年)から引用します。[加藤さんは菅内閣の時に学術会議の委員に任命拒否されたくらい立派な方です。]

1905年、白色人種でキリスト教徒の国であるロシア帝国に、黄色人種で非キリスト教徒の、遅れてきた帝国である日本が、ぎりぎりの勝利でしたが、とにかく勝利した。このことが、半植民地状態あるいは植民地の立場たにあった東アジアの国々だけでなく、近代国家への歩みを始めたトルコにも強い影響を及ぼしました。トルコの革命家、ケマル・アタチュルクに影響を与えたのは事実です。

近代的憲法を持った国 (日本).は、憲法のない国(ロシア)よりも強い、識会を開設している国(日本)は、議会のない国(ロシア)よりも強い。このような教訓が、世界に伝わったと考えられます。ケマル・アタチュルクは1905年に陸軍学校を卒業して、参謀大尉になった後、「祖国自由団」を組織して政治運動に入っていき、最終的には、23年にトルコに共和制をしき、初代大統領になった人物です。

残念ながら、白人国家ではそんなに素直な受け止め方ではなかったようです。今でも人種問題が深刻なアメリカでの状況を、これも加藤さんの説明で理解しておきましょう。

1891年から1906年の間に数千人の日本人移民がカリフォルニアに渡っていました。カリフォルニアでは、日本人移民に対して、低賃金で働き、アメリカ社会の一体性を混乱させる者と決めつけ、06年には日本人学童の公立学校への入学拒否、07年には日本人移民を排所する条項(ハワイ、メキシュ、カナダなど米国本土以外を経由した日本人移民を排斥する条項)を含む連邦移民法も可決されてしまいます。ロシアを打ち負かした好戦的な国家というイメージが、急速にアメリカ社会のなかでふくらんでいったことがわかるでしょう。

このことを加藤さんは「ウォー・スケア」と表現しています。「日本人が海を越えて襲ってくるのではないか、戦争が始まるのではないか、との根拠のない怖れ」のことです。アメリカでは、今でも日本人と中国人が同一視されることが多くありますが、1906年のサンフランシスコ地震の後のアメリカでは、丁度、関東大震災後に、日本で朝鮮人や中国人を虐殺したのと同じことが起っています。

その背景には、「ふだん虐げられている朝鮮人が日本人を襲ってくるかもしれない」という「根拠のない流言」があった、と加藤さんは診断していますが、根拠がないのは、結論部分で、前半が事実だったからこそ、そんな流言が生まれたことを忘れるべきではない、という警告です。

このような状況を前に、国際的な場で活動していた日本のリーダーたちが、一方では、肯定的に評価される日本像をより輝かしいものにすること、できれば欧米諸国より優れた国家であることを示したいという願望が元になり、他方では、差別の対象になる日本人や日本文化の本質的な良さを広めて、誤った日本像を修正したい、と考えたとしても不思議ではありません。

そのために動員されたものの一つが教育勅語だと考えられますが、実際に当事者の誰かがそう考え実行したという証言を探しています。現時点では、日本政府ならびに外務省がそう考えて教育勅語を世界的に拡散する努力をしたということは、一つの「仮説」として、考え、それに基づいた考察を展開します。

[注記: この中で取り上げた、『それでも日本人は「戦争」を選んだ』はお勧めです。まだの方は一読をお勧めします。]

2024年も言葉を大切にして、知的にも情緒的にも誠実さが輝く年にすべく頑張りましょう。

[2024/3/22 人間イライザ]

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2024年3月21日 (木)

#御真影 は #海外公館に飾られていた ―― #教育勅語も各国語に訳された――

#御真影 #海外公館に飾られていた

―― #教育勅語も各国語に訳された――

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1911年に刊行された、G・G・ルパートの著書"The Yellow Peril"(『黄禍』) 写真は(Public Domain)

#黄禍論も広まった

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教育勅語の意味をできるだけ客観的な視野から検証してきましたが、一つには、「御真影」と一体の関係として捉えないと、全体像は描けないことが分りました。

そして、その「御真影」に出会った意外な場所とは海外の日本大使館や領事館等の公館でした。外からのお客さんを迎える応接室のような部屋がいくつもあるのでしょうが、例えばボストン日本人会の幹部があいさつに訪れたときに通されるのは、普通の応接室でしょう。その正面に天皇と皇后お二人の写真が恭しく飾られていたのです。

ことによると「麗々しく」の方が相応しいのかもしれませんが、1970年代ですから、普通の家庭に「御真影」が飾られることはまずない時代です。海外の公館の応接室で、「これが日本の大使館・領事館?」と思うほどの違和感と言ったら良いのか、非日常感と言ったら良いのかに襲われてしまったのです。

そしてそのときだけではなく、それから何度も海外の公館を訪れる機会があり、その度に「御真影」に接することになりました。別の部屋には皇太子と皇太子妃の写真が飾れたりしていましたので、海外公館は、皇室漬けになっているとさえ感じたこともありました。

それは、外国とのお付き合いが天皇の職務の中でも重要であることから、宮内庁の幹部職には外務省出身者が多いこととも関連があります。

となると、外務省と教育勅語の関係も無視できません。明治政府が外務省を通して、あるいは外務省や関係者が働き掛けて、積極的に教育勅語を海外にPRしたことにも注目する必要があるのです。

金子堅太郎による教育勅語の政府訳作成提案がその始まりです。金子は日露戦争後の日露関係修復のために、仲裁の労をアメリカに取って貰うという大役を果たしたのですが、当時の様子を、『教育勅語』 (解説・大原康雄、ライフ社 1996年) から引用します。

教育勅語の評価については、海外におけるそれにも目を向ける必要があるだろう。

日露戦争の開戦直前に元老伊藤博文の命を受けて、あらかじめ戦争終結の幹施を工作するために米国へ派遣されていた金子堅太郎(福岡県出身の政治家。当時の米国大統領T・ルーズベルトとハーベード大学で同窓)という人物がいる。金子によれば、大方の予想に反して日本軍が連戦連勝するのを見て驚いた米国人に、「日本の勝利は国民の教育が必ず然らしめるところであろう。日本の教育はどうなっているか、伺いたいと質問された。そこで人金子は、軍人勅論を挙げるとともに、まず一般教育において教育効語がその根底をなしていることを指摘し、求めに応じて前もって翻訳しておいた教育勅語の英訳を披露したところ、多くの米国人から共感と称賛の声が寄せられたという。

日露の和平が成って帰国した金子は、政府によって正式に勅話を翻訳する必要があることを時の牧野伸顕文相に提言、まず菊地大麓(理学者。東大総長・文相などを歴任)・新渡部稲造(思想家・農学者。国際派知識人として活躍、国際連盟事務局次長をつとめる)らによって訳された英訳本が明治四十年(一九〇七)に公にされ、次いで漢訳が成り、さらに同四十二年に至って仏訳・独訳が完成し、在外公館を通して世界各国に配布された。

明治四十一年にロンドンで開催された国際道徳会議においては、その要請に応じて菊池が教育勅語について講演し、好評を博した。こうした事例はほかにもあり、欧米の識者の問での教育勅語の評価は存外に高かったのである。

海外に教育勅語を広めようとする努力のあったことは事実ですし、教育勅語を評価する人たちのいたことも事実です。同時に、その結果がどうだったのかについても冷静に判断する必要があります。

その際、同時進行的に起きていた「黄禍論」にも目を向けなくてはなりません。例えば、アメリカでは1906年のサフランシスコ地震の後に対日感情が悪化し、1907年には移民の制限が行われた後、1913年にはカリフォルニア州で日本人に対する3年以上の土地の貸与が禁止されるなど、「黄禍論」が台頭し具体化されていた事実と教育勅語の海外PRとは関係があるのでしょうか。

 

2024年も言葉を大切にして、知的にも情緒的にも誠実さが輝く年にすべく頑張りましょう。

[2024/3/21 人間イライザ]

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